韓半島独立篇 前編 第3章 前途遼遠
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
斉州島と鎮海地方に朱蒙軍の拠点を確保し、韓半島に駐留する大日本帝国陸海軍部隊の撤退と、中国(満州)とソ連との国境防衛と国境警備の引継ぎ、韓国軍統合軍との協議が開始された。
協定により、韓半島を統治する朝鮮総督府及び朝鮮駐留軍は、満州及び中国地方に進軍、進駐した陸軍部隊や移住者たちの撤退等の事務処理があるため、韓半島独立後も存続する事になった。
斉州島海軍基地に、韓国文民機関である最高国務委員会が臨時の本委員会を設置し、韓半島国内にいる独立勢力との会談や、大日本帝国政府との交渉が行われた。
韓半島にいる独立勢力と言っても、その規模は小さく1940年代には、そのほとんどが国外に出ていた。
有名なのが、韓国光復軍であるが・・・
しかし、80年後の韓国政府及び軍部・・・特にこの時代に派遣された彼らは、彼らに韓半島を渡す気は無い。
光復軍の国民主義者たちは、アメリカの飼い犬になり、韓国戦争では朝鮮人民軍に緒戦で敗退し、守るべき韓国民を人民軍に引渡しただけでは無く、人民軍の攻勢を遅らせるために避難が完了していない橋や湾港施設を爆破した。
その間、国民主義者たちは、当時GHQ軍の統治下であった日本国に、祖国奪還の亡命政権を成立させる準備をしていた。
これに関しては、アメリカ軍から「国民を見捨てて逃げるとは、何事か!!」と一喝されて、止めたそうだが・・・
国民主義者には、彼らの言い分もあるだろうが・・・事実、それを釈明する機会は、存在した・・・彼らはそれをせず、韓国国民のための韓国を主張する国会議員たちは、彼らによって親日派という事実無根の濡れ気味を着せられて、失脚させられた。
その後、大統領や、その国会議員たちは弾劾裁判を違法な行いで回避し、警察や軍部を使って弾圧を行った。
だが、民衆派軍部のクーデターにより、その悪政は正された(軍事クーデターを嫌うアメリカが、阻止しなかった所を見ると、彼らの行いは客観的に見ても、目に余るものがあったと、推測できる)。
現代の韓国民にとっては、振り返りたくない黒歴史であろう・・・
光復軍(国民主義者及び共産主義者)には、まったく彼らは接触せず、その上級将校クラスの身上情報を韓半島にいる韓民族たちに流した(もちろん、証拠付で・・・)。
地下にいる独立勢力との交渉は、かなり苦労した。
まず、未来から来た韓国人等という話を鵜呑みにする訳が無いし、国外にいる光復軍等の祖国奪還を唱える勢力が、側近に控えている場合は、かなり慎重な対応を取らなくてはならなかった。
自分たちの存在が、連合国に明るみに出るのは避けなくてはならない。
独立勢力の中で、そのような他国との干渉をせず、自分たちだけで祖国を取り戻そうと考える一派には、積極的な接触を行った。
これらの情報は、韓国人であれば詳しい内容は把握している。
何といっても、自分たちの祖父母であるからだ。
国民主義を唱える勢力により、弾圧された者も多い・・・しかし、絶滅させる事等できる訳が無い。
彼らとの交渉は、スムーズにうまく行く事ができた・・・
何故、スムーズに行くかと言うと、朱蒙軍の将校、下士官、兵の中には自分の祖父母やその親戚等がいた者がいるからだ。
彼らが1940年代までに作成した独自の書籍、文章等を見せれば、半信半疑でも信じるだろう。
第1陣は予定通り、次の派遣勢力が来るまでの間に、できる限りの地盤作りを行う。
同時に、大日本帝国陸海軍に所属する韓半島出身の韓人将校や、下士官、兵卒も随時、斉州島に移動し、韓半島独立後に創設される軍事組織や準軍事組織の各準備軍への教育が行われていた。
創設されるのは、国内の治安維持から国境警備、対反乱作戦やテロ等から、国内の政経中枢や重要施設警備、要人警護を行う保安軍、国防及び海外派遣を目的とする陸軍、海軍(海軍だけは沿海警備機能)、空軍である。
斉州島海軍基地の一部敷地内は、臨時政府や臨時国会施設が設置されており、万が一にも韓国本国敵対武装勢力叉は敵対国家軍に奪われた場合、ただちに本国奪還や臨時政府中枢が機能するように設置されている。
飛行場も存在しており、2000メートル程度の滑走路を有する。
斉州島海軍航空隊基地は、[伯階]級航空母艦が運用する艦上軽戦闘攻撃機や艦載ヘリコプター等の施設である。
国務最高委員長の邦夏英は、独立勢力並びに韓半島での新国家建国、国防のための軍備、国内の安全保障のための軍備及び警察等の進捗状況を説明された。
「やはり・・・こうなったわね」
邦は、つぶやいた。
独立勢力と非独立勢力の存在だけでは無く、独立勢力は中国国民党や共産党から援助されている勢力も存在し、中国が宗主国であると考えている一派も、少なからず存在する。
伊藤博文や、歴代の日本帝国枢密院議員の中で、韓半島を独立させようとした動きがあったにも関わらず、思うように上手くいかなかったのも、彼ら日本人の責任では無く、一部の韓民族にも原因があった。
朝鮮史を見れば理解できるが、韓半島では自分たちだけの国家を建国した事は無い。
あくまでも、宗主国(中国の歴代の王朝)に統治される属国である。
歴史的に見れば、何度か自分たちだけで独立国を創ろうとしたが、結局、他の同胞からの賛同も得られず、それどころか、裏切られて宗主国軍に鎮圧された。
そのため、宗主国となった大日本帝国では、優秀な韓人を日本に迎え入れて、枢密院議員や衆議院議員・・・叉は重役の秘書にして、将来、自分たちが手を離しても問題無いような処置を行った。
それが抗日運動の原因の1つである。
韓人の固定階級に従った政策では無く、階級、序列、出身に関係なく優秀な者にその重役を任せた事である。
「日本人の無階級主義や、すべての人間は平等である、という考えのおかげで結局、苦労するのは私たち・・・」
邦は、ため息交じりにつぶやいた。
「確かにそうです。ですが、彼らは良くも悪くも人が良すぎるのです。言い換えれば交通事故や親が重い病気とか、偽って金を騙し取られる常連被害者ですからね・・・」
秘書の1人がつぶやく。
「でも、これだけの独立勢力を味方に引き込めたのなら、十分。後はどうにでもなる」
邦たち文民の目的は、朝鮮史が誕生してから自分たちの時代まで行われる事がなかった、新しい取り組みである。
その、最初の1ページが開かれる事を、ここにいる最高国務委員や高級士官の軍人たちは覚悟した。
「それで、保安軍や陸海空軍の状況は?」
「それは、こちらの資料に」
最高国務委員会国防委員会の委員が、指を指す。
「ふうん」
邦は、その資料に目を通す。
保安軍、陸軍が海軍、空軍よりも優先されて第1陣の教育訓練が行われている。
特に保安軍は、元日本帝国陸軍将兵出身者が多く配置された。
陸軍でも十分な定員では無いが、ある程度は軍経験者を入れている。
国名は大韓共和国である事は最初から決められており、計画段階では保安軍7万人、陸軍15万人、海軍1万人程度、空軍1万5000人、国家警察24万人を確保する事が最初の目標である。
そのため、共和国保安軍の第1期生である2000人の教育訓練が行われている。
韓国文民派遣勢力の最高国務委員長の邦は、外務委員長等の各委員長たちと、韓半島で独立活動を行う友好的な勢力と会談を行った。
独立勢力から、各代表たちが出席している。
「韓半島の独立については、大日本帝国から韓半島の統治権を引渡された我々の下で、共和制国家として独立させます。共和制であり、大統領制を採用しますが、異存はありませんね」
邦の言い分に、事前に聞かされていた各勢力の代表は、うなずく。
「大韓共和国が建国されるのにあたり、我々は、斉州島及び鎮海地方の領有権をいただきます。同時に大韓市国を建国し、未来から来た韓国人の国家として設立します」
邦の言葉に、彼らは驚かない。
もともと、自分たちが未来から現れた事は、知らされている。
最初は当然ながら誰も信用しなかったが、韓国人固有の文化や言語、さらに地元民でなければわからない消された歴史を説明すると、自分たちの主張が真実であると理解された。
「貴女がたの目的は理解しました。我々としても朝鮮史が誕生してから、中国の属国として生きる権利を与えられていました。幾度となく、武力による独立運動は行われましたが、結果は無残でした。貴女がたが持ち込んだ半島の未来と同族の運命を拝見させてもらいましたが、単純に言えば宗主国が中国から日本・・・そして、アメリカとソ連に変わっただけ・・・そして、その地理的位置を利用し、3つの大国の軍事圧力に圧迫され、その火種原にされました。誠に不愉快極まりない事です」
会談の席に座る、各独立勢力代表のリーダー的存在である人物がつぶやく。
後に、大韓共和国初代大統領に就任する伊一鉱である。
因みに彼の息子2人は、大日本帝国陸軍士官学校を卒業し、陸軍歩兵少佐と飛行大尉である。
現在では、陸軍歩兵少佐である長男は、将来創設される大韓共和国陸軍の上級将校として、将来の大韓共和国陸軍官僚として勤務するため、日本帝国陸軍大学校に入校している。
次男は、空軍の戦闘飛行隊長として、教育訓練を受けている。
2人共、韓国軍(大韓共和国軍)では日本軍での階級より、1階級昇進している。
「邦委員長。大韓共和国の建国に対し、独立を望まない同族も数多くいます。現在、民衆レベルでの噂程度で情報を与えていますが、不安の声も聞こえています。自分たちだけで国を維持できるのか、強大な大国を2つも国境付近に抱える情勢上、その不安も強いです。建国後、彼らが国外にいる抵抗軍に通じて、領土に侵攻される危険性があります」
独立勢力の中では、かなり慎重論を唱える代表が口を開く。
「確かに大韓共和国と中国、ソ連との国境線を護る保安軍国境警備部隊の現戦力では、国土に侵攻された場合、侵攻軍を撃退する陸軍の武器、兵器とそれらを運用する兵士たちの練度では困難なのは理解できる」
口を開いたのは、最高国務委員会国防委員長である。
実際、保安軍国境警備部隊や陸軍北方軍は、日本軍で教育を受けた将兵では無く、建国準備期間中叉は建国後に徴兵された者たちである。
少しでも知識があれば、まともに防衛できるかどうか、怪しいと思うのは当然である。
国土防衛計画では、保安軍は国内で反乱活動や不満分子等の摘発、過激的行動に移る前に平和的に解決するのに力を入れ、陸軍は首都圏防衛のみに専念にしている状況だ。
ほとんどの国土の防衛は、大韓市国国務最高委員会の軍が担当している。
日本国自衛隊と文民勢力の、本格的なタイムスリップの時間が迫っていた。
そのタイムスリップする勢力の中には、韓国の軍民勢力も含まれていた。
「そろそろ・・・だな」
黄海海上の[燕山君]の艦橋で、艦長の李は艦長席で腰掛け、腕時計を眺めていた。
「タイムスリップまで後、10分」
副長が、時間を確認する。
「しかし、日本国自衛隊だけでは無く、我が韓国軍の武器、兵器及びその予備や人員すべてをこの時代にタイムスリップさせるとは・・・とても、信じられない」
李が、つぶやく。
「艦長。軍や自衛隊だけでは無く、文民勢力も、です」
副長が、訂正を加える。
「それだけの規模を、一度にタイムスリップさせるのだ。質量やその他の影響は計り知れないだろう。何故、そんな事ができる」
李の言葉に、副長も同意する。
「確かに、そうです。もっとも、驚くのはそれを行う者の力は下級だと言う事です。まさに神の力ですね」
副長と会話していると、その時刻になった。
「艦長、副長。タイムスリップ時刻です」
下級士官が、報告する。
その瞬間、一瞬だけではあるが、海上が何やら光ったような気がした。
だが、それを頭が認識する前に、[燕山君]の水上レーダーに大艦隊が映った。
「艦長。水上レーダーに大艦隊を探知!敵味方識別信号を確認しました。探知した大艦隊は友軍です」
CICからの報告に、李はうなずいた。
「通信回線を開け」
李の指示で朱蒙軍海軍機動艦隊全艦とそれ以外の船舶に向かって、通信回線を開いた。
「こちらミサイル駆逐艦[燕山君]。朱蒙軍海軍機動艦隊及び他の船舶に告ぐ。この交信が聞こえているか?」
李が、友軍艦隊に交信を行うと、すぐに返答がきた。
「こちら朱蒙軍海軍機動艦隊第1艦隊旗艦の空母[伯階]。交信は良好。脱落艦船無し」
その交信が聞いた時、[燕山君]の艦橋内で下士官や兵たちが囁いた。
「税金吸取り艦は、どうやら無事にタイムスリップは出来たんだな・・・」
「疫病神の登場か・・・」
「大丈夫かな・・・?」
等と、色んな声が囁かれる。
「おほん!」
艦橋にいる先任下士官が、咳払いをする。
すると、全員が黙った。
「[階伯]の艦名は百済末期に、5万の唐と新羅の連合軍を、5000の兵を率いて迎え撃った将である階伯に由来する。10倍の敵軍を前に一歩も引かず、4度の戦いにおいて、4度勝利した。最期は、壮烈な戦死を遂げたが、その祖国を護ろうとする忠義に、敵軍の将であった、新羅の金庾信からも賞賛された名将だ。確かに[階伯]は、元の時代では、散々な言われようだが、私は、新たなる祖国の海軍の象徴的存在となると、信じている」
先任下士官の言葉に、反論する者はいなかったが、その表情は半信半疑である。
李は、僅かに苦笑した。
存在を疑問視されているのは、[階伯]だけではない。
李朝朝鮮史上最悪の暴君の名を持つ、死神艦[燕山君]もまた同じである。
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