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震災と動乱篇 第4章 山陰大震災 2

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 地震により被災した地域に台風13号が直撃し、被災地域全域に大雨と暴風が襲った。


 だが、幸いな事に台風13号の勢力はかなり弱まり、九州地方のような被害はもたらさなかったように思われたが、地震により、なんとか倒壊しなかった建物が暴風や強風により、次々と倒壊し、唯一無事だった道路を塞いだ。


 これにより、避難民たちが避難所として開放された避難所に避難できず、立ち往生した。


 そのため、多くの被災者は大本営からの指示で設置された防空壕に避難する事にした。


 防空壕はアメリカを含む連合国との戦争に備えて、作られた防空壕であり、アメリカ陸軍航空軍戦略爆撃機が焼夷弾を含むNBC(核、生物、化学)兵器を使用した無差別爆撃を行った場合でも避難者の生命を守れるように掘られ、大蔵省が防空壕開発予算を作り、史実にある防空壕とは比べ物にならない充実した避難所にした。


 防空壕の出入口は外気を遮断する扉を設置し、防空壕内には民生用に転用した酸素供給装置と二酸化炭素除去装置が設置された。


 どちらの装置も大日本帝国海軍が建造する新型潜水艦が長期の潜航が可能なように開発された装置だ。


 糧食や医薬品等の備蓄もあり、防空壕に収容できる最大人員計算で一週間は防空壕内で生活が可能だ。


 大日本帝国政府はさまざまな政策で、失業した働き手を防空壕の開発や道路工事等の軍用と民用どちらも利用可能な工事に投入した。


 関東大震災の教訓もあり、大日本帝国では国、道府県、自治体を問わず、防災訓練に力を入れていたため、山陰地方の住民の混乱等による治安の悪化は深刻なものでは無い。


 山陰地方に駐屯する陸軍の師団、独立旅団も駐屯地機能を回復させるのと、動ける兵士たちを集めて混成援助隊を組織し、被災地域に現場指揮官の判断で出動した。


「いいか!ほとんどの住民が建物にいた!恐らく倒壊した家屋や柱等で下敷きになっている。撤去作業する時は細心の注意を払え!」


 混成援助隊に所属する歩兵科の曹長が、下士官や兵卒たちに注意する。


「「「はい!」」」


 大雨と強風の中で彼ら混成援助隊の将兵たちは屈する事無く、倒壊した木造住宅の瓦をどけ、重たい板を数人がかりで撤去作業を行った。


 だが、山陰地方の軍の施設も耐震震度を超える地震が直撃したため、ほとんどが壊滅し、指揮系統が混乱しているため、出動した混成援助隊の数は極めて少ない。


 山陰地方の一部の陸海軍の通信所では、通信機能の回復に全力を尽くした。


「隊長!通信回復しました!」


 通信科の下士官が叫んだ。


 この通信所は大日本帝国陸軍本土防衛総軍中部軍直轄の通信聯隊に所属している。


「よし、至急!中部軍司令部に緊急連絡!」


 通信科の中尉が指示を出す。


「おい!兵卒なら誰でもいい!放送局に伝令を送れ!」


「はっ!」


 下士官が挙手の敬礼をする。


 伝令の内容は、通信機能が回復した、とである。


 放送局が無事なら、そこから地震で被災した地域全域にラジオ放送と緊急放送で大本営とその他の地域に交信できる事が伝えられれば、関東大震災のようにデマが蔓延し、治安の悪化や余計な混乱を防止できる。


 非常事態だからこそ、軍民一体となって、対応に当たらなければ、悲惨な結果が生まれる。


 実は、この通信科の中尉は関東大震災を経験しており、あの混乱の中、病気がちの母親と幼い弟と共に乗り切った。





 台風が山陰地方に接近する前に近隣の海軍航空隊の飛行場に着陸した水神団航空隊がC-130Hが九州地方の台風被害で現地に派遣している警察、消防のレスキュー隊では対処できない場合に増援部隊として待機していた消防救助機動部隊と消防特別高度救助部隊等で編成した緊急消防援助隊の一部が装備や資材と共に空輸された。


 その後は救助車、人員輸送車、資材や重装備等を輸送する輸送車に乗り込み、被災地に急行した。


 道路が瓦礫やその他の現象で使用不能が予想されるため、C-130Hで空輸可能な重機と菊水総隊陸上自衛隊第1施設団に所属する1個中隊と出動した陸軍の工兵隊が持てる力を最大限に使い瓦礫等を撤去した。


 消防機動救助部隊機動救助隊が装備する救助車は荒地や瓦礫等で寸断された道路を走行する事も想定しているため、ある程度は彼らに頼らなくても前進できる。


 対応や出動も早かったため、緊急援助隊に所属する消防救助機動部隊の各部隊は本震発生から、2時間後に救助活動地域に到着した。


「要救助者の捜索、救助をすみやかに行え!」


 隊長の指示で機動救助隊の隊員たちは最新型の要救助者を捜索する機材を駆使して、捜索を開始する。


「ワン!ワン!ワン!」


 捜索を開始してから、消防機動救助部隊が保有する救助犬が吠える。


 その吠え方は要救助者が発見し、その人物が生存している事を知らせるものだった。


「ここだ!ここにいるぞ!」


 要救助者の正確の位置を把握する資材を使用していた隊員が叫ぶ。


 杉岡宗(すぎおかしゅう)消防副士長がボーカメを使用してさらに正確な場所を把握し、要救助者の置かれている状況がどのようなものか確認する。


「生存者を確認!かなり危険な状況だ。撤去作業は慎重に!」


 杉岡が要救助者の置かれている状況を細かく報告すると、分隊長は必要な装備を指示し、撤去作業を開始する。


「私の声が聞こえますか?聞こえたら返事をしてください」


 杉岡がボーカメを使って、生存者に呼びかける。


 ボーカメは単に生存者の確認とその状況を確認するだけでは無い。生存者に呼びかけ、その生存者と声の聞き取りも可能だ。


 これは倒壊した家屋等の下敷きになって、身動きができない生存者に希望を与える事ができる。


「聞こえます!」


 その時、生存者から返答が返った。


「生存者の意識レベルを確認!」


 杉岡はそう叫ぶと、さらに呼びかける。


「自分のお名前や学校等を言えますか?」


 杉岡が尋ねると生存者がはっきりした口調で答えた。


「自分はこの近くの中学校に通う米須(よねず)(きよし)です!」


「米須君!その家には他に誰かいる?」


 杉岡は意識レベルがある生存者に必ず聞かなくてはならない事を聞いた。


 ボーカメを使ってレスキュー隊員は生存者に呼びかけ、勇気や希望だけを与える訳では無い。


 倒壊した家屋等に生存者が1人だけなのか、他に何人いるのか、それも把握しなくてはならない。


 もし、他に聞く余裕があるのなら、他の要救助者の詳しい事を聞く事ができれば救助活動はさらにスムーズになり、その分、生還率が高くなる。


 杉岡が話しかけている間に他の隊員が撤去作業を行い。米須清という少年を発見し、確保する。


「生存者1名を確保!」


 機動救助隊の隊員が叫び、担架に乗せて、搬送する。


 機動救急救援隊の高規格救急車の元に運ぶと、救急隊員たちが救助された被災者の応急処置と診断を行い、受け入れ可能な医療施設等に搬送する。





 緊急消防援助隊、警察災害派遣隊即応部隊、陸海空自衛隊の統合災害派遣隊、大日本帝国陸軍中部軍指揮下で出動した緊急援助隊、海軍舞鶴鎮守府指揮下で出動した海軍援助隊、その他、各国家警察本部、各国家消防本部、各自治体警察部、各自治体消防部がそれぞれ災害派遣隊を組織し、出動させた。


 さらに各地方からも、支援物資や寄付金が寄せられた。


 横田基地の災害時広域救援本部では、大日本帝国各省から連絡要員が派遣され、ようやく大日本帝国と合同で災害救助、支援が行えるようになった。


 だが、問題がある。


 それは、こういう事態に対応した連携態勢等についての行動計画書がまだ作成されておらず、大日本帝国の各災害派遣隊はそれぞれが所属する組織の災害時における行動計画で災害救助と災害支援等を行う事になった。


 さらに追い打ちをかけるように台風13号が山陰地方を直撃したため、一時的に要救助者の捜索、救助を中止し、避難所や野外医療所の設置に人員を回さなくてはならなくなった。


 いくつかの病院、学校も巨大地震により、倒壊、半壊し、被災者の受け入れが困難になった。


 無事な避難所はどこも収容人員を超える被災者が避難し、各地で混乱が見られる。


 陽炎団が派遣した災害派遣隊即応部隊が担当する地域の避難所には、各機動隊から隊員を引き抜いて編成した緊急災害警備隊が初期の段階で展開し、避難所の混乱は最小限にとどめた。


 だが、もっと彼らの頭を悩める不測の事態が発生した。


「山陰地方での大災害により、陸軍の兵器処や警察に納入するために一時保管していた銃器庫も被害を受け、一部暴徒化した暴徒に大量の銃火器が奪われたそうです!」


 災害時広域救援本部で現地治安状況について報告していた憲兵司令部と内務省警保局から派遣された連絡憲兵将校と連絡幹部警察官がそれぞれ報告する。


「さらに一部の反政府団体がこの混乱を利用して被災者たちを扇動しています!」


 その報告を受けて、本庄は目を閉じた。


「・・・・・・」


 大日本帝国陸海軍の銃火器の一斉更新が仇になった。


 陸海軍では主力小銃等は、工廠で製造が開始された新自動小銃、新半自動小銃に総入れ替えが行われている。


 その際、これまで各部隊に配備されていた九九式手動装填式小銃、三八式手動装填式小銃等は輸出又は民間に売買する事になったが、受け入れ先が決まっていない小火器は使われなくなった倉庫又は保管が可能な建物に一時保管していた。


 警衛の兵士も配置しているが、それは申し訳程度だ。


「大日本帝国陸軍又は保安庁警察予備隊の展開は?」


 本庄が陸軍省から派遣されている連絡将校と内閣外局である保安庁の連絡員に聞いた。


「まだ、山陰地方での通信態勢が不十分なので、陸軍部隊に治安維持は困難です。それに治安維持法の改正で陸軍による治安維持は国会と陛下の承認が必要です」


 陸軍省の連絡将校が言った。


「警察予備隊は関東地区の治安と警備を行える第1管区隊が編成されているだけです。それに訓練期間も十分とは言えません。まだ、警察予備隊が治安維持を行う実戦部隊に使うのは危険です」


 保安庁の連絡員が言った。


「このままでは、大日本帝国の内政の不安が世界に知られる」


 そうつぶやいた本庄は治安維持の責任者として決断した。


「大日本帝国が役に立たないなら、国民保護を目的とした自衛隊の国民保護等派遣を要請する。至急、統合省に連絡!」


 本庄は決断し、火器を装備した自衛隊の出動を要請した。





 日本共和区統合省庁舎総合会議室では防衛局の法務事務官と保安局の法務事務官たちが陽炎団団長の本庄から自衛隊の国民保護等派遣要請を受けて、議論していた。


 本庄の権限上では、別に統合省に自衛隊の行動である国民保護等派遣レベルなら、彼1人の判断でもできるが、本庄がその権限を行使できるのは緊迫不正の事態である時である。


 それ以外の場合は統合省で判断される。


「この時代の日本に我々が介入して、初めてとなる大日本帝国内での武器を所持した自衛隊の行動か」


 防衛局と保安局の法務事務官たちをまとめる総務庁法務事務官がつぶやいた。


「山陰地方の状況を考えれば国民保護等派遣よりも治安出動の方が武器使用等に保護対象者の国民の生命等を守れるのではないか?」


 保安局の法務事務官が治安出動を提案する。


「いや、山陰地方での地震災害により、被災者たちも自己の安全のために銃器を所持している。治安出動してしまえば、出動自衛官は銃器を所持している大日本帝国国民が自己の安全のためなのか、革命が目的なのか、その場で判断しなくてはならない。もし、間違えれば無関係の国民を撃つ事になる。治安出動を命令するなら外交問題を覚悟しなくてはならない」


 防衛局の法務事務官が治安出動では無く、国民保護等派遣を主張する。


 国民保護等派遣とは、武力攻撃事態等に対して、武器を所持し、国民を保護し、避難民の避難誘導や救援、支援等を行う。


 このため、災害派遣出動の延長線上と考えられる場合もある。


 ただし、出動自衛官の権限は警察官職務遂行法を準用し、武器使用については正当防衛若しくは緊急避難の場合に限り認められる。


 治安出動は警察力を持ってしても、治安維持ができない場合に発令される自衛隊の行動であり、その権限は警察官職務遂行法を準用する。


しかし、治安維持が目的であり、革命勢力に対し、スムーズに出動自衛官は対応する事が可能で、国民の生命を守る点においては確かにこちらの方が武器使用や革命勢力からのテロ、ゲリラへの対処も可能だ。


「治安維持に関してはこの時代の警察と陽炎団で対処できないのか?国家地方警察本部には警備隊が編成されているだろう?」


 防衛局の法務事務官が聞くと保安局の法務事務官が答えた。


「警視庁や重要都市がある府県の警備隊なら、それなりの練度を確保しているが、それ以外の地方で編成されている警備隊は教育訓練が終了したばかりだ。対応は難しい。さらに陽炎団の各機動隊、機動予備隊は被災地域の災害警備、災害救助を目的とした第2次派遣隊を編成中だ。とても治安維持に投入できる余力は無い」


 保安局の法務事務官の回答に、防衛局の法務事務官たちが顔を見合わせる。


「それに陽炎団の機動隊は首都の治安維持が最優先だ。これ以上、投入したら、東京に潜んでいる革命勢力が蜂起した際に対処できない」


 別の保安局の法務事務官が告げた。


「どう考えても自衛隊による治安出動しか、この事態に対処できないか」


 防衛局の法務事務官の1人がつぶやいた。


「だが、それは地震災害地域で災害派遣出動命令を受けた自衛隊と治安出動命令を受けた自衛隊が同じ地方でそれぞれ異なる行動を行う事になる」


 防衛局の法務事務官が、難しそうな顔つきでつぶやいた。


 そこで防衛局と保安局は自衛隊の治安出動についての背広組たちによる行動計画等を作成し、それを統合省危機管理会議室に提出し、統合大臣、統合副大臣、統合省官房長官等と各局長官たちの最終的な決定に委ねた。


 震災と動乱篇 第4章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

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