3:エンカウント
遅くなりました。更新です。大きなメリットがある…と思わせておいてデメリットがでかい…とか
周囲のキャラをサポートするようなそんなクラスがとてつもなく好きです。
ちなみに精霊術はデメリットが大きいことからこのゲームの中ではどちらかというと不遇職らしいです。
詳しくは次回、次々回ぐらいに
7月8日19時;召喚術と精霊術の簡略説明文を追記+一部修正、加筆。
それから、草原を見渡して私達はモンスターを探す。
周囲が夜の為か、フィールドに出ているプレイヤーが少なく
ふと見上げた夜空には、草原を淡く照らす月と煌く星々がみえた。
おもわず「幻想的だねぇ……」と呟くとしーちゃんは
「現実世界じゃあまり見られない景色だからね……」と横で、同じく景色に見とれている様だった。
それから、やっぱりこのゲーム始めてよかったっと。そうしーちゃんは微笑んでいた。
♦
少し名残惜しい気持ちを抑え私たちは周りにモンスターがいないか捜索し始める。
それから、数分すると初めて草原にいるにしては少々歪だが……
ゲームの序盤では定番であるアイツの姿が現れる。
ソイツは――そうゲル状のアイツ≪スライム≫である。
思ったよりもグロテスクな見た目をしており思わず苦虫を潰したような顔になった
私にしーちゃんは大丈夫でしょう!と気合を笑っている。
「じゃぁ、まずは私から行ってみようかな!」
とステータス画面を開き……装備欄で剣を装備する――すると、今まで何もなかった右手に細く長い剣が出現した。
「なんかちょっと、思ってたのとは違うなぁ……」と剣を振りながらしーちゃんは呟いた。
……たぶんきっとしーちゃんは、刀を想像してたんだろうなぁと私は確信する。
何故なら、現実世界では、しーちゃんの家は古武術の道場で、居合と剣道を習っているからだ。
……しかも、どちらも結構な腕前。
「まぁ、いっか!! さてどんなものかな?」
瞬間――真剣な表情になったしーちゃんは右足を後方へと引き、体をやや右へとそらす。
同時に、剣を右腰より後ろへ回し剣先を落としてスライムを見据える。
五行の構えでいうと陽の構えという奴だ!
スライムがまったく動かないことから、こちらに気づいてない……もしくはこちらから攻撃しない限りは攻撃してこないタイプのモンスターであると判断したしーちゃんはニッ--と笑い駆け出す。
そして瞬きをするよりも早く剣を振り上げスライムを切り上げる。ダメ押し!! といった風に、そのまま返す刀でスライムを切り捨てた。
その流れるような一連の攻撃でスライムはその姿を散らし消滅する。
落ちているアイテムなどはなく、得られたのはウィンドウに表示されている……経験値だけだった。
「手ごたえがないなぁ」そういいながら戻ってきたしーちゃんは
まるで水を切ってるみたいだったよ……とテンションが下がっていた。
でもその様子を見て逆にワクワクしてきた私は「次は私だね!」と目を輝かせるのだった。
モンスターを探してまた周りを探索しながら歩いていると、前方にスライムが出現。
なにも装備せずに歩いていたため、自身の装備をステータス画面から装備する――出現したの細く長い木の棒である。
先ほど、しーちゃんの家の事を知っていたのは遊びに行った事があって知っていたわけではなく
そもそもその前から私も同じ道場で武術を習っていたからである。
まぁ、私は剣道ではなく――薙刀を習っていて、しかもそんなに強くないんだけども……
でも今は薙刀を学んでいる経験に感謝する――ゲームの中で取得した棒術は薙刀に近いものがあると思うから。
そう思いながら、中段の構えにて相手を視野に捉える。
先ほどのしーちゃんの戦闘を思い出しながら思案する。
(せっかく、装備したけど棒術は後に回して、魔法を使ってみようかなぁ)
こちらが動かない限り相手も動かない。
その情報をもとにスキル画面を開き、魔法スキルの情報をオープン
今使える魔法の情報を読み解く。
--水魔法Lv1
ウォーターボール:水球を作り出し相手に任意の速度でぶつけ、ダメージを与える。使い方は多岐にわたる。水魔法のLvに応じて出現する水量.速度上昇率が上がる。消費MP3
アクアスパイク:空中に存在する微粒子から水の棘を生成、敵を貫く。Lv上昇に応じ生成個数.回転率や細度の調整が可能。 消費MP5
-―支援術Lv1
アクセル:一定時間自身のSTR上昇効果。敵に与えるダメージが増える。レベル上昇に応じて持続時間.STR上昇率アップ。消費MP5
パラシオン:一定時間自身のINT上昇効果。敵に与えるダメージが増える。レベル上昇に応じて持続時間.INT上昇率アップ。消費MP5
-―召喚術Lv1
契約召喚獣:該当なし.使用不可
世界に存在するといわれる数多くの獣、種族etcと契約が可能。
初期Lv時には一体と契約が可能。任意で名前の決定ができる。
『召喚獣には、種族値がⅠ~Ⅴの間で設定されており、値が高ければ高いほど、召喚時の基礎ステータスが高い――なお、召喚術Lv1の際に召喚できる種族値の上限はⅣである』
召喚術にはデメリットが存在し、『召喚獣はPTメンバーの一人としてカウントされる』
このため……大規模戦闘や冒険時の際、召喚獣の数によってPTの空きが減少する。
また召喚獣はプレイヤーに近い存在でありLvアップと進化の概念があリ……Lvの上昇によってスキルの獲得や姿の変化が起こることもある。
-―精霊術Lv1
契約精霊:該当なし。使用不可
精霊と契約するための術--Lvが上がれば上がるほど数多くの精霊と契約し同時に召喚することが可能。
初期Lv時には1体の精霊との契約が可能だが、どの属性の精霊かはランダム。
※高位精霊になればなるほど、人の姿へと近づく――精霊には一体一体に自我があり、こちらの言葉を理解するが――会話をするためには、精霊言語の取得が必須
また、召喚中デメリットが存在する――どんなデメリットかは精霊のレベルやクラスによって変動。精霊自身にLvが存在しており、Lvの上昇によってデメリットの改善。新たなスキルの取得--スキルレベルの上昇効果がある。
契約した精霊によって使える精霊術は異なる――当然、消費MPにも変動がある。
魔法の威力は術者のINT値に依存。
んーっ……、召喚術は契約した子がいないと使えないってわかってたけど。
精霊術もまずは精霊と契約しないといけないのか……
じゃぁこれは後に回すとして――そうすると、選択肢はおのずと、支援術+水魔法の選択肢となる。
すーっと息を吸い。
ドキドキする気持ちを抑えながら静かに支援術の言葉を紡ぐ。
「さてっ、では!! パラシオン!!」
瞬間――体中を小さな電流が流れたかのようにビリッとした感覚が流れる。
その次には心なしか体が暖かく感じるような気がした。
「そして――アクアスパイク!」
自身上空の空へ敵を貫くための水の棘が生成される。
何個、作れるかなぁと試そうとするが数は増えることがなく
今は一個しか作れないということがわかる。
「貫いて、お願いね!!」
発声と共に水の棘がスライムを穿つために飛翔する。
パラシオンの効果も相まっているのか
パンッと乾いた音共にスライムを一撃で貫くその後には形が残らず。
一発で倒したことを知らせる。
そんな些細なことより……私自身が魔法を使った
ゲームの中とはいえその事実に興奮し、しーちゃんに駆け寄り抱き着く。
『しーちゃん!私魔法を使ったよ!夢じゃないんだよ!ゲームの中とはいえ!確かに使ったんだよ!』
ものすごい勢いで迫られたためか、ちょっと後ずさりをしながらしーちゃんは「そ、そうだね!やっぱこのゲームすごいね!」と私の頭をなでるのだった。
それから、もっと戦闘してみよう!と
モンスターを探すが、初めの街の近くにいるせいかあまりモンスターがわかず
探し回っているうちに疲れがたまっていった。
何度目かの戦闘の後に私のMPが底をついた為、しーちゃんに「そろそろ終わりにしよ……疲れっちゃった」と切り出すと
「そうだねぇ……」としーちゃんも頷いたため、その場を後にして街へと向かって私たちは歩き始めた。
♦
街に戻るころには現実世界よりも遥かに速く進むこの世界は、夜明けを迎えようとしていた。
東の空が明るんできた光景に2人声を揃えてこう答える。
「「きれいな景色だねぇ……」」
おおよそ現実世界の中では見られない――大自然が広がる景色の中での夜明けに感動し――
「「はぁー……」」っっと、息をこぼすのだった。
それから街に戻ると
昨日の『WFWへようこそ』という光の文字は消えており
代わりに『始まりの街――ユーフェンス』という文字が書かれており
街の外壁にNPCと思われる全身を西洋鎧で包んだ人が立っていた。
その人は、私としーちゃんを見て爽やかな笑顔で口を開く
「ようこそこの始まりの街ユーフェンスへ!! 長旅で疲れたでしょう!宿屋やギルドの情報はいりますか?」
この世界にきて初めてのしーちゃん以外の人との話に少しだけ胸をワクワクさせて答える。
「「宿屋の情報をぜひ教えてください」」
まったく意図していなかったが――見事にしーちゃんと声がハモっていた。
「お二人は仲がいいんですね!」とまた爽やかな笑顔を浮かべてから
「宿屋でしたらこの道をまっすぐ進み噴水のある広場にまず出てください。そこから右の路地へ進んでいくと私のオススメの≪赤猫の鈴≫という宿屋があります。ここはご飯がおいしいんですよ。お二人さんは可愛いですから!とっておきの情報です」そういって右手で頬をかく男性に「「ありがとうございます!!」」と感謝を述べ街の中へと足を進める。
……が、「あ、待ってください!!」と声をかけられたため振り返る。
「忘れてました。私、街の門番のバーニャといいます。わからないことがあったら何でもまた聞いてください!」と手を振っていた。
その姿に再度感謝をしながら、私としーちゃんは≪赤猫の鈴≫というたった今、バーニャさんから聞いた、宿屋の情報を胸に広場に向って歩き出すのだった。
後日設定資料集など作ります。(よてい)