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WFWの精霊召喚術師  作者: 栗花落
1章:初めてだらけの世界
17/18

16:FastEvent

ユニークPV5万人ですって!!

あ、ありがとうございます。

今後もよろしくお願いします……

【特殊イベントが開催されます。現時刻から、1時間後。ユーフェンスの街にいる全プレイヤーに対して参加権限が与えられます。詳しくは今後のアナウンスをお聞きください】


……唐突にイベントの開始が宣言された。


隣では、やっぱりな……と言ったような表情で喜んでいるクラッドさん達がいる。

「あの……やっぱり、わかってたんですか?」


思わず、気になり訊ねる。


「いやいや……こんな大規模なイベントに発展するとは思ってなかったよ?」

笑顔のまま、クラッドさんは答える。

「でも、何らかのクエストが発生するとは確信してたのよ」

シルヴィさんが重ねる様に答える。


フォルドさんは、ただ黙って頷いている。

そして、何回か頷いた後に口を開く。

「まぁ、嬢ちゃん……それはいいじゃねぇか。それよりも、イベントの情報でも大人しくまとうや」


……それもそうか。

何か、最後は流された……そんな気分を少しだけ感じるが。

これは、私の気のせいなんだろうと思い過ごすことにした。


……会話が途切れる。

少しだけ重たい空気が辺りを包む。

それに耐えきれず、しーちゃんへとヘルプを要請する。


「し、しーちゃん。イベント楽しみだねぇ」

声が少しうわずる。

気まずいという雰囲気が諸に出てしまう。


……ップフッ

しーちゃんは軽く、笑っている。

「いいよ、みーちゃんの頼みだもんね……」

必死に笑い声を抑えながら口にしているが、口元ははっきりと笑っていた。


「……もう、しーちゃんのいじわる……」

プクゥっと頬を膨らませると、ゴメン、ゴメンとしーちゃんは謝ってきた。


それをクラッドさんとフォルドさんは無言で見ていたが……

シルヴィさんだけはキラキラした目でこちらを見つめていた。


そんなやり取りをしている間に、10分が経過する。


【イベント開始まで、50分となりました。会場への移動を推奨します。なお、イベント会場はユーフェンスの中央広場となっております。】

次は30分前となりましたら、アナウンスいたします。


そう告知が鳴り、私たちは顔を見合わせる。


……直前までの気まずい雰囲気なんてなんのその……

顔を満面の笑みで埋め、しーちゃんに告げる。


「しーちゃん、行こう!」

「うん!! 」


一言だけ、やり取りをして、私たちは中央広場へと移動し始める。

「あ……ちょっと、待ちなさいって……」


その後ろを、ヤレヤレと言った様子でクラッドさん達も私たちに続くのだった。



噴水広場に着くと、そこにはまだ40分以上時間があるというのに、大勢の人が集まっていた。

その光景に私としーちゃんは息を飲む……


「す、すごいね……しーちゃん」

「うん……そうだね。みーちゃん」


周囲の熱気に少しだけ気圧される。


「おー、想像以上に集まってるなぁ!! 」

クラッドさんは声をあげる。


シルヴィさんたちもニコニコと微笑みながら周囲を見渡す。

「そうねぇ……ここまで、人が集まるなんて……CβTの時にもなかったわね」

ほぉ……と呟く。


フォルドさんだけは動じず周囲を見渡す。


「どうしようねぇ、しーちゃん」

「どうしようか、みーちゃん」


……時間はそろそろ30分前となる。


クラッドさんが一つ提案を唱える。

「なぁ、よかったらこのイベント中も俺たちとPTを組まないか……」


シルヴィさんが目を輝かせる

「クラッド!! あんたたまにはいい事を思いつくわね」


「馬鹿言え!俺はいつだっていい事しか言わん」


フォルドさんが、その様子を見て鼻で笑う。

「まぁ、全ては嬢ちゃん達次第だろ……みっともない」


「「なんだって?」」

――ぴったりと、二人の声が重なる。


「こう言う所の息はぴったりなんじゃがなぁ……」

フォルドさんが残念な人を見たように嘆息する。


その様子を見ていた私としーちゃんは、2人で顔を見合わせ笑い合っていた。


……時間が30分前となり新たな告知が流れる。


【イニティウムの森を目標とした、大規模な討伐作戦が30分後展開されます。目標はUnkown……只今、全力を尽くして調査しております……。情報が入り次第、また告知いたします。】


先ほどまでは、あくまでイベントだという事だけを告げていた告知が変化している。


そして次の、イベントの情報は未定だという。

……気長に待とう。

この間に、クラッドさん達とPTを組むかどうかも相談しないといけないしね……。


そう考えしーちゃんに相談する。

「クラッドさん達とPTは組んだままにする?それとも、2人で行ってみる……?」

……正直、先の戦闘から不安しか残っていない私はできれば、クラッドさんたちの助力を借りたいと考えていた。


それを、しーちゃんは見抜いていたのか。

ニヤッと笑いながら答える。

「そんなの……大勢の方が楽しいに決まってるじゃん!! クラッドさんにお願いしよ!」


……ありがとう。

声には出さないけど、伝わってると思いながらクラッドさんへと打診する。


「クラッドさん、先ほどの事ですがこちらこそよろしければ……PT組んだままイベントに行かせていただけませんか?」


リーダーは、クラッドさんにお任せしますので。


そう伝えると、クラッドさんはまぶしい位の笑顔で親指を立てながら答える。

「そう言うと思ってたよ!! 」

シルヴィ……羽目を外すなよ?

クラッドさんは目を輝かせるシルヴィさんへと声をかける。


シルヴィさんも「そ、それぐらいわかってるわよ!! 」

と、語気は弱いながら返事をしていた。


……いや、本当残念そうにこちらを見てるんだけど。

大丈夫なのかなぁ……?


思わず苦笑いをしてしまっていた。


そんな馬鹿なことをしている内にイベント15分前となり、新たな告知が流れる。


【後15分後に、本作戦を開始します……。目標は、イニティウムの最深部にいる大型戦闘レイドモンスターとなります。大型戦闘レイドモンスターのみ特別表示となっており、プレイヤーの皆さまからわかりやすい表示へとさせていただいております。また、特別イベントでございますので、今回のみレイド上限人数を撤廃させていただきます】


……大型戦闘(レイド?? ちょっと前に見た情報を思い出す。

確か大人数で挑むやつだよね……

っていう事は相当手ごわいのかな……?


流れる告知はさらに続いていく。


【また本イベントに限り、デスペナルティ時間の時間変更を行います。死亡後10分のデスペナルティとさせていただきます……この変更は大型戦闘レイドモンスターが倒され、本イベントが終わるまでの期間とさせていただきますので、ご了承をお願いします。】


デスペナルティ規則の時間変更……?

やっぱり、イベントに積極的に参加しやすくするためなのかな?

色々考えていく。


――隣にいたクラッドさんが急に声をあげる。

びっくりしてそちらを見ると、そこには目をギラギラと光らせたクラッドさんが居た。


「腕が鳴るなぁ……!! なぁ!? 』

若干、暑苦しいテンションとなったクラッドさんが、こちらへと言葉を投げかける。

シルヴィさんとフォルドさんはもう、慣れっこなのか

「そうだなぁ……」と抑揚のない声で返していた。


イベント10分前となる。


広場に集まっていた、プレイヤーらしき人たちが騒ぎ出す。

噴水広場の前に、随分身なりの整ったNPCが現れたからだ。


そのNPCは噴水の前に立つと周囲を見渡し、言葉を発する。

「諸君、集まってくれたことに礼を言う。今回の作戦の指揮を執る、ギュレイだ……この作戦を成功させた暁には……諸君ら全員に報奨金を渡そう!! だからどのどうか、死なずに帰ってきてほしい。諸君らの武運を祈る!! 」

必要最低限の情報だけを言い、ギュレイさんは噴水広場から遠ざかっていった。


それを補足するように、告知画面からアナウンスが流れる。


【これから、行われるイベントは討伐イベントですが、イベント中は様々な行動によって、イベント参加者に順位が生じます……これは、与ダメージや援護数、宝箱発見数様々な、分類がありますので……最前線にいない、初心者でも安心して参加できます。また……各項目ごとのTOP3に入った方は、MVP特典として、豪華な賞品が用意されていますので、ぜひ時間が許す限り腕を振るって参加ください。】


……そこまで告知が流れ終わると

【それでは準備はできたでしょうか?】

と言うテロップと、選択Yes/Noがステータス画面に表示される。


迷わずYesを押すと『もうしばしお待ちください』

とローディング画面が現れた。


……イベントかぁ……少しだけ胸がわくわくする。

「フェーリ、アイリス……よろしく頼むね」

そうお願いすると、2人はこくんと一度だけ頷き、私の肩に乗って準備を整える。


クラッドさん達はどうかな?と振り返り見てみれば、心配はいらないように準備を既に整えている、クラッドさん達が大きく深呼吸をしていた。


告知画面が1分前となり……カウントダウンを始める。


……60……59

ゆっくりと、息を吸い込み心を落ち着かせる。


カチ……カチ……

45……44……

世界から音が少しづつ消え、辺りの喧騒が嘘のように鎮まる。


33……32……

開幕ダッシュを成功させようと、今か今かとプレイヤーたちは開始時間を待ち続ける。


私は、ふとしーちゃんを見つめる。

しーちゃんも、強い眼差しで私を見つめていた。


「……クラッドさん、シルヴィさん……フォルドさん。よろしくお願いします」

3人に頭を下げると……

そろって3人は「任された!! 」と声をあげた。


その声が、空に消え切ったと同時に

カウントダウンの数字は0となり、告知アナウンスが鳴り響いた。


【只今より!! イニティウムの森における特別イベントを参加いたします!! 腕を振るってご参加してください!! 】


……その、アナウンスとともに、周囲を揺らすような、プレイヤーたちの叫び声が、噴水広場を埋め……

我先にと、森へと向かって走り出していく。


「俺たちも負けてられないな!! いくぞ!! 」

その声に小さくうなずき、私達も遅れないように、森へと向かって走り出した。


――こうして、私にとっての初イベントが、ゲーム内で始まった。








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