11:イニティウムの森周辺戦
ユニークPV2万ありがとうございます。
それから、ジャンル別週間5位.月間16位となってました。
急に隔日投稿になってしまったりしてますが、今後もよろしくお願いします。
――始まってすぐに、しーちゃんは初心者用装備から、狩り用装備へと装備を変えた。
しーちゃんは、私を驚かせたい!そう言っていた理由が何となくわかる。
……それはどこから、どう見ても『所謂、剣道着と、袴だった。また、武器も前の細い剣ではなく、刀そのものであったから……』
「え?しーちゃんの装備って、袴だったの?それに……刀も!?」
事実、少し驚いた私は、しーちゃんに思わず尋ねてしまう。
しーちゃんは、「へへ、やっぱりこれが一番落ち着くからね!」と、答えるのだった。
その後、思い出したようにしーちゃんは言葉をつづけた。
「そういえば、狩る前に……私の、今のステータス値見せとくね?私の最初のステータスしか確認してないでしょ?」しーちゃんが、こんな感じだからね~と、ステータスを開示した。
【キャラ名:シオン】 【性別:女】 【種族:人間】
【職業:冒険者Lv8】
Hp 550/550
Mp 120/120
Str 22
Int 17
Def 19
Mdf 17
Dex 17
Agi 24
Luc 17
残りLp0/14
【習得スキル】
―戦闘スキル―
剣術Lv2 体術Lv2 支援術Lv1 風魔法Lv1
気配察知Lv1 気配遮断Lv1 足さばきLv1 速度強化Lv1
―生産スキル-
鑑定Lv1 採取Lv1
SP10/10
……次いで先ほどの装備情報を開示する。
『淡青の剣道衣』
ノヴァ制作
現実世界での、剣道や弓道といった武道で扱う、道着を作ったもの。
着心地はなめらかで、汗をかいても擦れないようにできており、動きやすいつくりとなっている。
――装備効果
Def+7 Mdf+4
――追加効果
無し
『淡青の袴』
ノヴァ制作
現実世界での、剣道や弓道といった武道で扱う、道着を作ったもの。
着心地はなめらかで、汗をかいても擦れないようにできており、動きやすいつくりとなっている。
――装備効果
Def+7 Mdf+4
――追加効果
無し
『白生地の腕当て』
ノヴァ制作
籠手をイメージしていたが、途中で扱いにくいと思ってノヴァが急遽、両手を自由に扱えるように、腕当て風に作ったもの。命中力に補正が見られる。
――装備効果
Dex+5
――追加効果
無し
『試打刀:落水』
ユリウス制作。
試打刀と入ってはいるものの、製作者は結構気に入っている刀。まだまだ、粗削りではあるが、その一太刀の切れ味はすさまじい。
――装備効果
Str+10 Dex+5
――追加効果
無し
♦
「これで、確認してもらえたかな?私、AgiとStrを優先に上げていく予定だから、よろしくね」
と、しーちゃんが微笑んだ。
速さと火力特化、攻撃こそ最大の防御。敵の攻撃は避ける――当たらないこと前提に考える。それが、私のスタイルだとしーちゃんは言った。
……しーちゃんは前衛。……私は、元々後衛タイプだから……と、後々の事を考えて、回復魔法を覚えることも視野に入れなきゃいけないかな……とこの時、私は考えていた。
――その確認が終わると、しーちゃんは再び周囲へと注意を移す。
そして……「みーちゃん、それじゃ本当に始めるからね」そう言って、しーちゃんは刀を左の腰へと納め、歩き始める。いつでも抜刀できるように右手を遊ばせず、腰の刀にかけている。
周囲に警戒しながら歩いていると、どうやら、しーちゃんがモンスターを見つけたようだ。。
「前方にスナールドッグだね……数は4体。いける?」
そのスナールドッグという言葉に、一瞬……前の戦闘を思い出し、表情がこわばる。
……けど、今回はしーちゃんがついているという事を思い出し、大きく息を吸い込み、深呼吸してから答える。「もちろん……いけるよ!」
その答えにしーちゃんは、「じゃぁ、私が切り込むから、援護をお願いね!」そう言い駆け出した。
前方のスナールドッグ一体に、居合の要領で、抜刀したしーちゃんは、目にも見えないような速さで一体のスナールドッグの首を切り落とす。
そのまま、剣術スキルを発動させたようだ。
「……ふっ、これで!! 二体目」
剣術:双閃撃
振るった、刀の剣の軌道は確かに1つのはずだったが、そこに遅れたようにもう一つの軌道が生まれ……スナールドッグを2回切り付ける。しかし、それだけでは削り切れなかったのか。
スナールドッグは怒り、遠吠えをしながら、しーちゃんへと、噛み付こうとする。
「させないよ……!アイリス。風魔法お願いね!」
コクンと頷き、噛み付くよりも早く、アイリスのエアスライスがスナールドッグへとヒット。
その体を消滅させた。
しーちゃんは、いやーあせった削り切れなかったわーと言いながら、頭を掻く。
「もう、油断しないでね?」と今度は私が笑いながら、しーちゃんへと声をかける。
……それから忘れないようにもう2体のスナールドッグに鑑定をかけてHPを表示させておく。
しーちゃんは「ありがと」とそう言って、刀を納刀。2撃目に移行する準備を始めた。
ん……そういえば忘れてたな。
しーちゃんに向って支援術を発動させる。
「アクセル……!これで、さっきよりも攻撃力あがるよね!」
そうしーちゃんに、問いかけると右手を挙げて「ありがとう」とサムズアップした。
……じゃぁ、私は2体いるうちのもう1対を足止めしようかな。
「フェーリ、お願いできる? できれば、また目を狙ってくれると嬉しいな」
そう言うだけでフェーリは「キュッ」と短く鳴き、気配を消して走り出す。
「それで、アイリスは上空、2体が見える位置で待機。どちらか倒し損ねてたら風魔法で迎撃をお願いね」
と、指示をする。アイリスも頷き、私としーちゃんが見える位置に待機する。
「じゃぁ、私も行こうかな!」
新しい武器、一軸を手に駆け出す。もう見えないフェーリを追いかけるように。
初撃はフェーリがスナールドッグの目を潰すために、爪術を使う。
「キュッ」大きな声で鳴きながら渾身の一閃を放つ……
――スナールドッグはフェーリに直前まで気づかなかったようで、声につられて顔を向けた所で目を潰される。さらに、フェーリはお土産!! とでもいうかのように尻尾を揺らし、狐火もスナールドッグの顔にぶつけた。
スナールドッグは、悲痛な声を上げながら顔を左右に激しく振っている。
「やっぱり……フェーリは頼りになるね。」
そう呟きながら私は駆ける。そして一軸の射程範囲に入った所で棒術を発動させる。
棒術:一凛花
渾身の力をやりに込めて、敵を一突きする。クリティカル発生率が高いスキル。
走ってきた勢いもこの一軸に乗せて、周囲の状況がわかって見えていないスナールドッグに一軸が突き刺さる。
それまで叫んでいた声をピタッと止め、スナールドッグは絶命。その体を地面へと倒し消滅した。
「ふぅ。レベルと装備もあるのかな……前よりも簡単に倒せたね」
そう、フェーリに笑いかけると、フェーリは私目掛けて飛び込んできて、肩の上へとのぼる。
『よくやったでしょ?褒めて褒めて~』とでもいうように、私の顔へと、フェーリ自身の顔を何度も擦りつけてきた。
「うん、ありがと。フェーリ頼りになるね」フェーリの頭をそっと撫でると、フェーリは気持ちよさそうに目を細め、尻尾を揺らした。
その時、丁度しーちゃんも戦闘を終えたようで「あーん、みーちゃんずるーい!私もフェーリ撫でたい―うー!」と言いながら、こちらへと駆けてくる。
フェーリは、『嫌~』とでもいうように、私の頭の上までのぼり、尻尾で器用にシッシとしていた。
その様子を見たしーちゃんは、「嫌われたぁ」と言いながら、並ならぬ悲しみを背負ったのだった。
それから、同様に危なげない戦いを4度程繰り広げていると、私のLvが4と上昇。フェーリとアイリスのLvも2へと上がった。
その辺で、辺りも暗くなってきたため……今日はそろそろ終わろうかとしーちゃんと相談し、切り上げることになった。
……そして、ユーフェンスの街へと続く街道に出ようとしたところで、フェーリが「ウゥッ」と、尻尾を逆立て、唸り始める。
これまで見たことのなかった姿に、しーちゃんへと注意喚起をし、周囲へと気配察知を行う。
すると、相変わらずあいまいではある物の、この先と後ろ、囲まれるように、数十体のモンスター反応が現れる。
「……嘘っ!? どうしようしーちゃん。囲まれてるかも……それも数十体のモンスターに。」
しーちゃんは、あちゃー派手にやりすぎたねぇ。そう言いつつ刀へと手をかける
――そして、言葉をつづける。
「まぁ、何とかなるでしょ。みーちゃん一応MPポーション飲んでおきなよ。さっきの戦闘で消費した分まだ回復してないでしょ?備えあれば……だよ?」
そういって、私の事を気遣ってくれる。
確かに、先ほどの戦闘では、風魔法と支援術を使ってMPを消費している。
まぁ、ほぼ回復してはいるんだけども……だから、念のためと戦闘に入る前に支援術のアクセルとパラシオンを2にそれぞれかけておく。それから、MPポーションを飲みMPの値を30/30と全回復させた。
「うん、こえで支援術はしばらく続くから平気だね。」
そうしーちゃんに笑いかけると、しーちゃんは「ありがと」と言った。
それから、周囲に警戒しながら歩き始める。
気配は変わらず、向こうも様子見をしているのか……すぐに姿は現さず、私達の動きにそって囲みながら歩いている様だった。
イニティウムの森周辺から、木々を抜け草原に移り変わる頃に、それまで感じていた気配が、より近くに感じるようになった。
……これは、そろそろ仕掛けてくるのかな。
そう考えた、私は迎撃するための用意を始める。
「アイリス、さっきと同じで上空から、敵の位置を見てくれるかな?MP消費は20までで、風魔法を軸に敵が私たちの後ろから襲ってくるようだったら迎撃を。MPを20まで消費したら、私に支援術を一つかけてくれる?そしたらMPポーションを飲むから。」
それを見たら、また20までMP消費していいよと、アイリスにお願いをする。
アイリスは「ワ……カッ……タッ……」と普段なら頷きだけで返すのに、今回に限っては精霊言語で話してくる。
それだけ、『理解したよ』と伝えたかったのだろうか。
「よろしくね」真剣にアイリスの目を見つめ、頭を撫でると、アイリスは嬉しそうに笑っていた。
「フェーリも今回は基本迎撃に回ってもらっていいかな?姿を隠しながら、敵が襲ってくるようだったら、ちょっかいだして?」ずっと頭の上に乗って気持ちよさそうにしている、フェーリを抱き上げ目を見つめお願いする。
フェーリは「キュッ」っといつものように鳴き、それから『リラックスだよ?』と言いたげに私の顔を舐める。
2人とも……頼もしいなぁ!! もう。
その頼もしさに、安心し、しーちゃんに私たちはまずは眼前のモンスターだね……と告げ武器を構える。
そして、眼前に3体のスナールドッグがこちらに牙を向け現れた。
その真ん中にいる、1体のスナールドッグは、こないだ見た異常なスナールドッグより……一回り体が大きく……牙も、爪も異様に伸びた、もはやスナールドッグと言えないような容姿をしていた。
「……ふぅ」しーちゃんは自身を落ち着かせるように息を吐いている。
私は、その様子に少しだけ狼狽えてしまう。だけど……ここで、焦っちゃだめだ!焦っちゃだめと――必死に頭を回しながら、少しづつクリアになっていく思考で『まずはどうしよう……』と考える。
しーちゃんと同じく、深呼吸しよう!と、何度も深呼吸をして、どうにか落ち着いた私は、いつもの様に≪鑑定≫を実行する。
『強靭なスナールドッグ』
異常なスナールドッグとは違う名称が表示された、スナールドッグが現れた。
次いで情報とHPゲージが開示される。
『何らかの影響で、突然変異したスナールドッグ。その牙と、前足の爪は……木々をも倒す程の威力を秘めている。』
その説明文に、私は少しだけ……絶句した後、しーちゃんに声をかける。
「しーちゃん!その真ん中のスナールドッグの攻撃は当たっちゃ駄目かも!」
その声は、しーちゃんに届いたのか否か……
それよりも早く、大きな遠吠えを上げた強靭なスナールドッグは獰猛な目をしーちゃんと、私へと向けるのだった。
12話まで来ました。一章の中での山場です。次回も戦闘描写です。
まだまだ、拙さ残りまくってますので、ご指摘いただけるとありがたいです。




