10:仮装備
大変遅くなりました。申し訳ございません。
※ユニークPV1万5千人突破ありがとうございます。
週間、月間、四半期にも小説が入っていたそうです……ありがとうございます。
……嵐のように2人が過ぎ去った後で、私は静かに、しーちゃんへと視線を向ける。
「……それで、一体どうゆう事のなのかなぁ?しーちゃん?」
あくまで冷静に、その顔には微笑みを浮かべて。――勿論、『目は一切笑っていない』のだが……
その様子を見て、少しだけしーちゃんはビクリと肩を震わせたが、私の機嫌をどうにかしようと取り繕いの言葉をかけてくる。
「いや、本当にみーちゃんの為と思って紹介したんだよ!? 絶対、看板になったら、みーちゃんがゲームの世界でもいつでも見れるなぁ……とか思ってないから!!」
――自爆である。しかもここまで自爆していると、いっそ清々しい。
(……はぁっ)
大きくため息をついてからしーちゃんに言う。
「こうゆう事なら事前に説明をお願いしたかったなぁ?」口調はやや冷ややかに。
ビクッっと肩を震わせた、余程私が、怖く見えたのか……しーちゃんは声を出すことができないようで、何度も首を『コクン、コクン』と頷かせていた。
その様子を見て、ふと顔の力を緩めながら「わかってくれればいいんだよー?何も隠してたから断るわけじゃないんだからぁ?」と、今度は心から笑うのだった。
♦
それから、いつも通りのしーちゃんに戻るまで、他愛のない話をするが……先ほどの私の目力や口調に驚いているのか、しばらく「……に……きら……れた」と、横にいる私にも聞こえないぐらいの声音で言葉を繰り返していた。――しーちゃんがそれから元に戻るまで、10分程度の時間を要した。
……やっといつものしーちゃんに戻った所で、話を続ける。
「それで、本当にそんな事で、あの二人を紹介してくれたの?」
まだ、ほかにもあるでしょ?そう、しーちゃんに尋ねる。
「……あとは、きっと召喚獣と精霊さんと契約してるだろうなぁと思って……ほら、見たいから会いたいーじゃさ、何となく迷惑かなぁと思って……空回りしちゃったけど。」
効果音が付いたらきっと『テヘペロ』といったような表情で、しーちゃんはこちらを見た。
……うん、これ目の前で見るとすごくイラッっとするね。
なんとか、顔には出さずに、「そ、そうなんだ」と返す。
「……じゃぁ、紹介しなくちゃね?」フェーリとアイリスに視線を向けて笑いかける。
それだけで、2人とも何をすればいいのか理解したようで、フェーリは私の肩に――アイリスは私の頭の上へと座った。
「この2人が、私と契約してくれた子。こっちの白狐がフェーリ、こっちの女の子がアイリスだよ」――紹介を終えると、アイリスは軽く一礼をし、フェーリは「キュッ」と優しく鳴いた。
その様子を見た、しーちゃんは眼を輝かせていた。
「この風景……いい!ねぇ、SSとっていい?」
……なにやら、ぶれない意思を感じた為、仕方なく「いいよ」という。
それから、しばらくしーちゃんは、「いいねっ!いいよ!その表情!!」とか言いながらSSを取り続けるのだった。
……まぁ、SSとった後はフェーリがモフモフされ続け、嫌になったフェーリが、しーちゃんをゲシゲシ前足で叩いていたのは、ここだけの話にしておこう。
♦
それから程なくして、満足したぁ……と、しーちゃんは「そうそう、それとね」と話を切り出す。
さっきの、もらった装備つけてみたら?と言われ、思い出す。
……んーっ、身に着けちゃったら何となく、断れなくなる気がするんだよなぁ。
と葛藤しながらも、一度は身に着けてみることにする。
アイテム欄を開き、ユリウスさんに渡されたワンピースを確認する。
≪淡青花のワンピース≫
『ノヴァ制作。
装備者の動きを阻害しにくいように、設計されているワンピース。
勿論、日常生活中でもしっかりと使える。ワンポイントとして、白の生地に青い花模様を取り入れている』
――装備効果
Def+10 Mdf+6
――追加効果
無し
今着ている、絹のワンピースは、Defが+3されるだけだから……私は眼を見開く。
え、Defだけでも3倍……!?
……初期装備と比べるとその効果に驚く。
その様子を見たしーちゃんは「驚いたでしょう?」とニヤニヤこちらに目を向けた。
その様子に少し、ムッとしながら武器と、手袋を確認する。
――装備効果
Dex+3
――追加効果
無し
≪無地のグローブ≫
『ノヴァ制作
余った生地をもとに作ったグローブ。Dexに若干のボーナスが付く』
≪試作型薙刀―一軸≫
『ユリウス制作
初めて、ユリウスが制作した薙刀。万全な形……とまではいかない物の
本来あるであろう薙刀に迫る物。』
――装備効果
Str+8 Dex+3
――追加効果
無し
うん……こっちもすごい。
装備してみると、それまで質素だった服が、一気に明るくなった。
それを見たしーちゃんは、「ふおぉぉぉぉぉ!」とまたテンションをあげ、SSを取っていた。
その様子をみたフェーリは、さっきもみくちゃにされた事を思い出したのか、私の後ろへとまわり、隠遁術を使い、隠れてしまった。
そこからまた10分程、しーちゃんのSSを取る手は止まらなかったのである……
……さて、じゃぁ装備をしたところで狩りに行ってみよう!!
つやつやした顔のしーちゃんが、元気よく声を上げる。
「……私もう疲れたんだけどぉ」とジトーと目をしーちゃんに向けるが……
今度は通じなかったようで、「せっかく装備したんだからぁ!」とPT申請が飛んでくる。
「少しだけだよ?」と仕方なく承諾してPTを組む。
「じゃぁ、フェーリ出ておいで……行くよ」と声を出すと、それまで隠れていたフェーリも、どこからともなく現れ、「キュゥ」と鳴く。対照的に、アイリスはあまり疲れてはいない為、フェーリの分まで頑張るぞっとでもいう風に、肩を回していた。
「で、どこで狩りをするの?スライム相手?」と尋ねると、まさか~とこっちを見て、「少し行くと木が生えてきて、その先に森があるでしょ?あの周辺まで行くよ?」と言われる。
「え……?あの、もしかしてスナールドッグが出てくる場所?」と再度訊ねると、正解~としーちゃんは言う。
加えて「よく知ってるね……あそこの適正Lvは6からだよー?」と言われる。
……森に入る前に帰ってきてよかった……というか、私1Lvで行ったんだけど。ほんと死ななくてよかった。
――その言葉を聞いて、街まで無事に戻ってこれた私は、安堵する。
「……ん?ところでしーちゃんのLvっていまいくつなの?」適正レベルを聞いてふと気になり訊ねる。
「8だよ。あの2人ともそうだけど、ログインできてた間は結構狩ってたからねぇ。」と言われた。
――道理で、森周辺の適正Lvを知っているわけだと納得する。
そして、もう一つ訊ねる。
「あのノヴァさんとユリウスさんと知り合ってるって事は当然……武器防具作ってもらってるよね?なんで今、初期装備なの?」
「それはね!ここで見せるとみーちゃんを置いてちゃった気分になっちゃうから。狩りになるときに着けてあげようと思ってね」……それに、びっくりさせたいし。
と最後は聞き取れなかったけど何かゴニョゴニョ言ってたけど……まぁいっか。
それから、しーちゃんは丁寧に、あそこの森はね小規模のダンジョンになっててね。
『イニティウムの森』って言うんだよ。そこを越えて、その先にある洞窟を通って、さらに先に行くと新しい街に行けるらしいよ?と、丁寧に説明してくれる。
……なんとなく重要そうだから覚えておこう。
しーちゃんに「ありがとう」と伝える。照れるようにしーちゃんは笑い、ごまかすように「じゃぁ、狩りの準備をしようか」と言う。
かといって、私は補給する物もないのでしーちゃんの準備に付き合う。
しーちゃんは、HPポーション小を何個か買っていた。
「やっぱり、HPポーションの消耗が激しくてねぇ」としーちゃんは言った。
……そうなんだぁ、と相槌を打ちながら、しーちゃんの準備を見ている私は少しだけ別の事を考える。
(――しーちゃんの武器ってどんな武器なんだろう……防具は?はやくみてみたいなぁ)
しーちゃんの新しい武器と防具が見れる。そう考えると、少しだけ狩りに対しての意欲が沸いてくるのだった。
……準備を終えた私たちは、『イニティウムの森』周辺まで歩く。
その間、何度かスライムが出現してはいたが、やはり攻撃しないと動かない(ノンアクティブ)ので、無視して歩みを進めてきた。
そうしてしばらく、歩いていると『イニティウムの森』周辺に着く。
数日前よりも、少し暗く感じるあたりの雰囲気に注意しながら、敵を探す。
そんな、私を見たしーちゃんは「ほらリラックス!肩の力抜いて……私もいるんだからね?」
と、私の肩を揉んで笑う。
――じゃぁ、まったり狩りでも始めますか!!
この時のしーちゃんは、すごく格好良く見えた。
遅れないように、フェーリとアイリスに合図を送って、しーちゃんに返事をする。
「うん、はじめよう!」「キュッ」
――こうして、2度目のしーちゃんとの狩りが始まった。
ミアは本気で怒らせると相当怖い。
その片鱗は……




