インコとタマゴと俺。子曰く──
インコを捕まえて、スマホの無事を確認し終わったころにトカゲが帰ってきた。
よっちらよっちらと小さい足を動かして前進している。その様子は、生物番組のコモドオオトカゲのようだった。
やっぱりトカゲも変温動物で日光浴するんだろうか?
ずいぶんゆっくり動いているのは、日光浴が足らないのだろうか。
仮にもトカゲ──もしくは蛇、ツチノコなら、もうちょっときびきび動いて欲しいものである。
俺の足元には、服で包まれたインコがいる。
左右に揺れているのは、逃げようとしているのだろう。
こんな危険インコを逃がすわけなく──空気孔すらなくピッチリと包んでいるのだから、無駄な抵抗オツというやつだ。
え? 死ぬ?
いいえ、インコは幻獣なので死にませんよ。
トカゲと合流して、インコの拘束を解いてゆく。何かあったらトカゲが止める、という約束の下である。
正直いってトカゲが役に立つとは思えないけれど、一応トカゲの方が幻獣としての"位"が高いらしい。
本当だろうか?
まあ、とにかく、逃げるギリギリまで拘束を解いていって──しかし、出てきたのはインコではなかった。
白黒斑模様のざらざらとした表面。ころんと丸いフォルム。それは、間違いなく──
「タマゴ」
「タマゴだ……」
『タマゴだのう』
タマゴ、だった。
「えーっと。なんでタマゴなのか、分かる人?」
ヘレとメアが首を振る。
ナユタとヨクトは顔を付き合わせて、何か話をしているみたいだ。何か知ってるのかな?
『ペリドットフェザーは鳥の姿とはいえ、その本質は幻獣である。ゆえに、タマゴになど関わりないはずであるに。
なんと面妖な』
トカゲは役にたたないときた。
なんかさ、このトカゲが役に立ったところを見たことがないんだけど──あ。行方不明のなった俺の救助してくれたんだっけ?
失敗、失敗。
「パパ」
お、ヨクト達の話し合いが終わったようだ。
二人を代表してヨクトが声をかけてくる。
「何か思い付いたか?」
「な。オレたちは、タマゴで生まれたよな?」
「そうだね。タマゴだったね」
一つのどでかいタマゴと三つ普通のタマゴが割れて、子供達が現れた。これはタマゴから生まれたといっても良いと思う。
でも──その時の事を覚えているのだろうか?
生まれた時の事を?
「じゃぁ、ソレもそうなんじゃね。今から生まれるんじゃねーの?」
「……えぇ。生まれるって何が? インコが? 幻獣が?」
「さあ? しらねーけど」
困った──と、小さなタマゴを見る。
『なんじゃと?』
トカゲは尻尾を振り回した。
『生まれるとは何がじゃ? ペリドットフェザーはどうなったというのじゃ。……まさか……魔族とは、まことワシらに仇為すとでもいうのか』
ム。トカゲが調子の良いことを。
「あのな。先に手をだしてきたのはソッチだろ。俺は──俺達は、自分の身を守っただけ!
インコは"ケータイ"が欲しくて俺達を襲ってきた。それも俺のせいにするつもりなのか?
トカゲが止められなかっただけじゃん」
『しかし、の──』
むぅ──とトカゲが尾を曲げる。
「先に、けんかを、売ってきたのはそっち」
「そうよ。わたしたちを消そうとしたのはそちらじゃないの」
「勝つのはいいけど、負けるのはヤだって。ワガママ」
「にゃにゃにゃにゃ」
子供達もブーイングだ。
そうだよな。そもそもトカゲがインコを止められなかったのが悪いわけで。
俺達は被害者だし。それとも被害者は大人しく虐められておけ、とでも言うのだろうか。
『まてまて、そんなつもりは……。
そうじゃ。ワシらは──ペリドットフェザーはそなたを助けたではないか。人の世に飛ばされたのを、助けに参じたのだぞ。
その恩を仇でかえすような──』
「消す気、だった」
そういえば助けられたっけ、とほだされかけた心は、メアの一言で我にかえった。
そうだった、あの真っ暗闇に放置されたんだった。メアが助けに来てくれなかったら、と思うとゾッとする。
小さくなっちゃったのだって、多分闇の世界のせいだろうしな。
んで、だめ押しの殺人予告である。
「なんだっけ。幻獣の未来の為に、俺を殺す──だっけ」
『うぐぅ。そ、それは、ワシら幻獣の総意ではない。ワシらはそなたらとは良好な関係でありたいと望んでおるのじゃ。あれはペリドットフェザーの暴走である』
「そう。だから──セキニンをとることになった」
その一言は、なんとナユタが言ったセリフだった。
その話の内容もさることながら、ずいぶんと流暢にしゃべってるのな。一番ちっこいのに。そっちにびっくりだわ。
とはいえ、責任ねぇ。暴走の責任ってこと?
あれ、ナユタのヤツ、随分イロイロ知ってそうじゃん。もう、推理小説のラストくらいに、知ってること全部話してくれないかな。
「責任って?」
とりあえずネタを振ってみる。
『ペリドットフェザーはあれで五代目の幻獣……それほどに始祖に近いモノが他種族の始祖を襲った……あまつさえも、神器に手をかけたなど醜聞甚だしいこと。
わかっておる! わかっては、おるのじゃが……』
答えたのはトカゲでした。
解説はうれしいけど、お前じゃない感が半端ない。
つーか。分かってるなら、なんで理由のわからんゴネをしていたのだろうか。何、ゴネ勝ちを狙ったとか?
『そなたの罪悪感を煽れば、ペリドットフェザーが帰ってくるのではないかと思うて……』
本気でゴネでした。
インコにも良いところがあるので、殺人未遂はチャラにしてね。ケータイの窃盗なんて問題にならないよね。──ってか。
うーん。
でもなぁ……インコはともかく、トカゲには恩がないわけじゃない。
ここは、あれだ──
「まぁ、タマゴが割れてインコがでてきたら幻獣に返すからさ。そういうことでどうよ」
インコの身に何がおこったのかわからないしな。
俺が何したってどうにもならない。トカゲは俺が意識してやった事にしたいみたいだけど、そうじゃないし。
双方にとって"それなり"で終わらせたい。
別に無茶を言うつもりはないけど、無茶を言われるのは嫌だ。
自分がされて嫌なことは、他人にしちゃぁいけません。




