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異世界流スローライフにスパイスを  作者: 神埼あやか
魔族と幻獣の二重唱
19/40

インコとタマゴと俺。子曰く──

 インコを捕まえて、スマホの無事を確認し終わったころにトカゲが帰ってきた。

 よっちらよっちらと小さい足を動かして前進している。その様子は、生物番組のコモドオオトカゲのようだった。


 やっぱりトカゲも変温動物で日光浴するんだろうか?

 ずいぶんゆっくり動いているのは、日光浴が足らないのだろうか。

 仮にもトカゲ──もしくは蛇、ツチノコなら、もうちょっときびきび動いて欲しいものである。


 俺の足元には、服で包まれたインコがいる。

 左右に揺れているのは、逃げようとしているのだろう。

 こんな危険インコを逃がすわけなく──空気孔すらなくピッチリと包んでいるのだから、無駄な抵抗オツというやつだ。


 え? 死ぬ?

 いいえ、インコは幻獣なので死にませんよ。


 トカゲと合流して、インコの拘束を解いてゆく。何かあったらトカゲが止める、という約束の下である。

 正直いってトカゲが役に立つとは思えないけれど、一応トカゲの方が幻獣としての"位"が高いらしい。

 本当だろうか?


 まあ、とにかく、逃げるギリギリまで拘束を解いていって──しかし、出てきたのはインコではなかった。

 白黒斑模様のざらざらとした表面。ころんと丸いフォルム。それは、間違いなく──


「タマゴ」

「タマゴだ……」

『タマゴだのう』


 タマゴ、だった。


「えーっと。なんでタマゴなのか、分かる人?」


 ヘレとメアが首を振る。

 ナユタとヨクトは顔を付き合わせて、何か話をしているみたいだ。何か知ってるのかな?


『ペリドットフェザーは鳥の姿とはいえ、その本質は幻獣である。ゆえに、タマゴになど関わりないはずであるに。

 なんと面妖な』


 トカゲは役にたたないときた。

 なんかさ、このトカゲが役に立ったところを見たことがないんだけど──あ。行方不明のなった俺の救助してくれたんだっけ?

 失敗、失敗。


「パパ」


 お、ヨクト達の話し合いが終わったようだ。

 二人を代表してヨクトが声をかけてくる。


「何か思い付いたか?」

「な。オレたちは、タマゴで生まれたよな?」

「そうだね。タマゴだったね」


 一つのどでかいタマゴと三つ普通のタマゴが割れて、子供達が現れた。これはタマゴから生まれたといっても良いと思う。

 でも──その時の事を覚えているのだろうか?

 生まれた時の事を?


「じゃぁ、ソレもそうなんじゃね。今から生まれるんじゃねーの?」

「……えぇ。生まれるって何が? インコが? 幻獣が?」

「さあ? しらねーけど」


 困った──と、小さなタマゴを見る。


『なんじゃと?』


 トカゲは尻尾を振り回した。


『生まれるとは何がじゃ? ペリドットフェザーはどうなったというのじゃ。……まさか……魔族とは、まことワシらに仇為すとでもいうのか』


 ム。トカゲが調子の良いことを。


「あのな。先に手をだしてきたのはソッチだろ。俺は──俺達は、自分の身を守っただけ!

 インコは"ケータイ"が欲しくて俺達を襲ってきた。それも俺のせいにするつもりなのか?

 トカゲが止められなかっただけじゃん」

『しかし、の──』


 むぅ──とトカゲが尾を曲げる。


「先に、けんかを、売ってきたのはそっち」

「そうよ。わたしたちを消そうとしたのはそちらじゃないの」

「勝つのはいいけど、負けるのはヤだって。ワガママ」

「にゃにゃにゃにゃ」


 子供達もブーイングだ。

 そうだよな。そもそもトカゲがインコを止められなかったのが悪いわけで。

 俺達は被害者だし。それとも被害者は大人しく虐められておけ、とでも言うのだろうか。


『まてまて、そんなつもりは……。

 そうじゃ。ワシらは──ペリドットフェザーはそなたを助けたではないか。人の世に飛ばされたのを、助けに参じたのだぞ。

 その恩を仇でかえすような──』

「消す気、だった」


 そういえば助けられたっけ、とほだされかけた心は、メアの一言で我にかえった。

 そうだった、あの真っ暗闇に放置されたんだった。メアが助けに来てくれなかったら、と思うとゾッとする。


 小さくなっちゃったのだって、多分闇の世界のせいだろうしな。


 んで、だめ押しの殺人予告である。


「なんだっけ。幻獣の未来の為に、俺を殺す──だっけ」

『うぐぅ。そ、それは、ワシら幻獣の総意ではない。ワシらはそなたらとは良好な関係でありたいと望んでおるのじゃ。あれはペリドットフェザーの暴走である』

「そう。だから──セキニンをとることになった」


 その一言は、なんとナユタが言ったセリフだった。

 その話の内容もさることながら、ずいぶんと流暢にしゃべってるのな。一番ちっこいのに。そっちにびっくりだわ。


 とはいえ、責任ねぇ。暴走の責任ってこと?

 あれ、ナユタのヤツ、随分イロイロ知ってそうじゃん。もう、推理小説のラストくらいに、知ってること全部話してくれないかな。


「責任って?」


 とりあえずネタを振ってみる。


『ペリドットフェザーはあれで五代目の幻獣……それほどに始祖に近いモノが他種族の始祖を襲った……あまつさえも、神器に手をかけたなど醜聞甚だしいこと。

 わかっておる! わかっては、おるのじゃが……』


 答えたのはトカゲでした。

 解説はうれしいけど、お前じゃない感が半端ない。

 つーか。分かってるなら、なんで理由のわからんゴネをしていたのだろうか。何、ゴネ勝ちを狙ったとか?


『そなたの罪悪感を煽れば、ペリドットフェザーが帰ってくるのではないかと思うて……』


 本気でゴネでした。


 インコにも良いところがあるので、殺人未遂はチャラにしてね。ケータイの窃盗なんて問題にならないよね。──ってか。


 うーん。

 でもなぁ……インコはともかく、トカゲには恩がないわけじゃない。


 ここは、あれだ──


「まぁ、タマゴが割れてインコがでてきたら幻獣(そっち)に返すからさ。そういうことでどうよ」


 インコの身に何がおこったのかわからないしな。

 俺が何したってどうにもならない。トカゲは俺が意識してやった事にしたいみたいだけど、そうじゃないし。


 双方にとって"それなり"で終わらせたい。

 別に無茶を言うつもりはないけど、無茶を言われるのは嫌だ。

 自分がされて嫌なことは、他人にしちゃぁいけません。


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