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異世界流スローライフにスパイスを  作者: 神埼あやか
魔族と幻獣の二重唱
18/40

インコと戦う俺。猫キャンセルにはトラウマがいっぱい

 双方が無言になり、時間だけがたっていった。

 なんでかデジャブがあると思ったら、ヨクトだ。ヨクトを叱った時と同じ事をしているんだ。

 つまり──根比べ。


 じっとトカゲを見る。

 左右から子供達も一緒になってトカゲを見ている。


 トカゲを見る。

 顔を背けたままのトカゲは、視線を合わせようともしない。


 トカゲを見る。

 トカゲの視線がさ迷っている。トカゲは子供達にちらちらと目をやって、再びそっぽを向いた。

 ちっ。こっちは見ようともしない。


 トカゲを見る。

 よく観察しないと見えない綺麗に並んだ鱗が、さざ波のように光を反射した。

 なるほど。こうして見ると、トカゲよりも蛇に近いのかもしれない。自称するドラゴンにはほど遠いけれど。


 って、光を反射した?

 なんで?


 疑問に思ってトカゲの顔から視線をずらすと、そこには根性で立ち上がったインコの姿があった。小鳥が体を起こす度に、トカゲの体に光が走っている。

 トカゲを照らすものは、インコから発せられる光だった。


『わ、私達、幻獣の未来のため──あなたには、消えていただきます』

『や、やめぬか! ペリドットフェザーっ!』


 トカゲの絶叫とともに、インコが発光する。

 インコの光がトカゲの尾を押し上げる。まるで光に吹き飛ばされるように、トカゲの体が宙に舞った。


 何かにぶつかった音はしなかったので、そのまま吹き飛ばされたのかもしれない。


 インコから発せられる蛍光緑の光はどんどん強くなる。

 目の前が緑色に塗りつぶされて、何の形も見えなくなって──目の奥がチカチカして──緑色が弾けた。


 恐らくそこに立つのはインコ──いや、幻獣ペリドットフェザーなのだろう。


『これが、私の幻獣としての姿──』

「め、めが……」


 焦点を結ばない目を揉みながらセリフを返してやる。

 なんだろうか。目が疲れてたのかな。

 閉じた目の盛り上がった所を親指の第一関節でグリグリすると、なんか気持ちいい。


「オレンジがちかちかする……」

「ひきょーもの!」

「みんな。なんで、目をとじなかったの?」


 子供達の声がする。

 メアの言葉は俺にもダメージくるわ。いたいいたい。


 ようやく見えてきた視界に、ポーズを決めるインコの姿があった。



 なんにも変わってねぇ!





「にゃん!」

『ふ。甘いですね』


 "にゃん"の魔法で火を生み出してインコに投げつける。

 素早い小鳥らしく、するりと火をよけたインコから腹のたつセリフがなげられた。


 ちくしょう、あのインコ。丸焼きにしてやろうか。


 うぐぐ、と思うが相手は空の上である。鳥餅も、虫取網も持っていない俺達には手も足もでない。


 だが、決定打がないのは相手も同じようだった。

 インコは小鳥すぎるがゆえに、チクチクした攻撃を加えてくる──が、それだけだった。


 インコは軽く当てては逃げに走っている。素早さに優る場合はそうだよね、当て逃げがベストだよね。

 格闘ゲームでもそうでしたよ!


 こちらを狙ってくるインコを、上着で振り払い、捕まえようとする。するっと避けたインコはクチバシとカギ爪で傷を付けてくる。

 今のところは引っ掻き傷だけれど、そのうち大事になりそうで怖い。先端恐怖症になったらどうしてくれるのか。


『ふははははは』


 憎い。緑のインコが憎いっ!


「パパ」


 俺がイライラしていると、ナユタが近付いてくる。

 ナユタのすぐ側にはヨクトがいて、二人分の警戒をしていた。それに比べてナユタはずいぶんと余裕そうだ。

 きっちり上着着てるし。


「パパ、はい」


 ナユタが差し出してきたのは、俺のスマホだった。

 そういえば、子供達に預けたままだったことを思い出す。


 しかしですね、ナユタさん。

 今、スマホを渡されて、俺にどうしろっていうの?


 とりあえず礼を言って受け取るが──インコから目が離れたのが悪かった。


 風を切る音がしたかと思うと、ナユタに渡されたばかりのスマホが──


『ふははははは。

 手に入れましたよ。神のアイテム、ケータイを!』


 俺のスマホを脚で引っ掻けて、インコが笑っていた。


『かつて我が父は仰いました。"ケータイ"というアイテムこそが、創造の要だと。父はこの特別なアイテムにより、数多の幻獣を誕生せしめたのです』

「なっ……」


 何となくそんな気はしてたんだが、特別なのは俺じゃなくて携帯らしい。特にアプリだよな。


『つまり──このケータイを手に入れることができれば、幻獣の未来は明るいものになるのです!』


 インコが力説している。そうか──ヤツの狙いは初めから携帯だったんだな。

 ニヤリと笑った──多分。この状況で笑わないわけないし──インコが、ゆっくりと地面に降りる。


『我が父も恐れた技をくらいなさい──猫キャンセル!』

「インコ──っ!」


 インコのくせに"猫キャンセル"使ってんじゃねーよ!




 ちなみに。

 インコはスマホと格闘しているところを捕まえた。


 うん──その──なんだ、な。

 押しボタン式のガラケーじゃなくて、タッチパネル式のスマホだから。

 インコのカギ爪を認識しなかったわけだ。仕方ないね。


 むきになってスマホを触っているところを、ゆっくりと捕獲ですよ。

 さてこのバカ鳥をどうしようか。


 そういえば、インコがアホでラッキーと思っていたんだけど……ナユタ、まさか計算してないよな?

 おまえは素直な良い子だと、信じて良い、ん、だよ……な?


 ちょっと心配。

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