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異世界流スローライフにスパイスを  作者: 神埼あやか
魔族と幻獣の二重唱
17/40

若くなった俺。それでも百六十センチはある!はずだ

 違いました。

 子供達は育っていなかった。


 子供達のサイズが変わって見えたのは、俺が小さくなったからでした。

 正直、超ショック。


 百八十近くあった身長が、ひゃくろくじゅ──いや。ななじゅ──こほん。十センチ以上縮むって、相当じゃねぇ?


 これじゃぁ小学生──こほん。これじゃぁ、まるで中学生じゃないか。


 もー、ショックすぎて、ショックだ。


 ん? 見栄はるなって?

 なんのことだかサッパリサッパリ。


 高校生だった俺が百八十センチ越えのイケメンだった、可能性がなきにしもあらず。


「パパ、へんな顔になったな」

「若くなっちゃったんだよ」


 ぷぷっとヨクトが笑う。

 目線がちょっと下がっただけなのに、すっごく悔しく感じられる。


「すっごく、心配したんだから」

「ん。間に合ってよかったの」

「ああ、二人とも。心配かけてごめんな」


 ヘレとメアは良い子のコメントだ。やっぱり女の子は可愛いくて優しい。


「にゃふん」

「シロも、お迎えありがとね」


 口にくわえていた緑色の物体をポイ捨てし、逃げないように前足で玩びながらシロが機嫌の良い声を上げる。


 ん? 緑色……くわえて……あ。


「い、インコー! 生きてるかインコ!」


 目にも鮮やかなソレは、なんとかフェザー・インコさんではないだろうか。

 は! そういえば、お子さま達にシメられたとか、シロがかじったとか言っていたような。

 マジで生きてるのか、ソレ。


 俺の静止にシロがインコから足を放すが、ボロ切れのようなインコはピクリとも動かない。


 俺はじっとインコを見る。

 シロがインコを鋭い爪でつつこうとするのを何度か制止するが、インコは動かない。


 インコの胸はかすかに上下していた。

 インコは生きていた。


 よかったよかった。生きててよかった。

 野生動物の虐待、なぶり殺しとか勘弁な。


 カチカチとインコがクチバシを鳴らしている。

 長い沈黙の後、インコから小さな声がした。


『………………は、はんにんは……ヤス、です』


 余裕そうだった。





『すまなんだの』


 ペコリとトカゲに頭を下げられて、俺は慌てた。


 だってトカゲさんのせいじゃないし。

 トカゲさんは俺を探して、同僚──弟妹に声をかけてくれただけみたいだし。

 気にすることないのにな。


『ペリドットフェザーは物忘れがひどくてな。大切なことでも、三歩歩くと忘れてしまうのだ』


 わかります。鳥頭ということですね。


『話し方が丁寧だから、初対面の者には気付かれにくいのじゃが……このアホ鳥には、おまえさんが"幻獣"でないことがすっぽぬけておったらしい』

「いや。でも。こうして無事に帰ってこれたしさ」


 むーむーむーと、トカゲの後ろでインコが叫んでいる。

 トカゲが謝る必要はないとか。

 乱暴者の魔族──シロか──への抗議とか。



 幻獣の為に俺を殺すべきだ、とか。



 インコが口を開くたびに、周囲の温度が下がってゆく。

 冷気の発生元は子供達とシロだった。


 俺? 冷気の出し方なんて知りませんが、何か?


『このアホが』


 フォローを諦めたトカゲが言う。

 やっぱりトカゲも分かっていたんだな。インコの腹黒さと殺意に。


 それで、どんな言い訳をしてくれるのかな?


『犯人はヤス──この言葉を知っているか?』

「知っている」


 古いゲームのネタバレだよな。

 俺はやってないけど、掲示板でネタに使われているのを見たことがある。


 勿論のことだけど、子供達は首をふって「しらない」という。当然だ。


 ん──あれ。なんでトカゲとインコが知っているんだ?


『ワシらにこの言葉を教えたのは、幻獣の父。ワシらを造りたまいし父にして、地裏の支配者。

異世界より喚ばれし創造の担い手──そなたと同じモノじゃ』

『だからこそ、今殺さなくてはならないのです。

魔族などという新参者に、誇り高き我ら幻獣が──もぐっ』


 インコがトカゲの尻尾に潰された。


『鳥頭が失礼を言うた。謝罪する』

「いや……うん。いいよ」


 惜しかったな。トカゲの尻尾がもう少し遅ければ、インコはシロの口の中だったのに。

 目の前の獲物を奪われたシロは、それでも諦めきれずに潰れたインコにちょっかいをだしている。


『最初に喚ばれた者は"人族"を造った。獣人族は大地を駆け、森人族は深き森の奥に住まい、酒人族は荒れ地と地下を住みかとした』


 獣人族ってのがつまり人、かね。猫人、犬人っているんだろうか。

 森人族はファンタジーでお馴染みのエルフかな。

 酒人族ってのは──なんだ?


『次いで造られたのがワシら幻獣じゃ。地上に住みかがなかったワシらのために、父は裏の世界を造ったのだ』


 裏の世界──ねぇ。裏……裏……裏技、裏の世界……バグの世界。

 なるほど俺にとって、アレはバグった画面のようなものかもしれない。


 終わらない夏休みのゲームを思い出すと、地裏が暗闇で良かったと思う。

 バグっておかしくなった世界なんて、ゲームでみるだけで十分恐ろしい。


『ワシらの創造時を考えると、地表に住みかはない。

ゆえに、そなたらが地裏に進出してくるのではないか、と。ワシらが地裏を追われることになるのではないか、とペリドットフェザーは恐れたのじゃ』

「ふぅん」


 さて──トカゲは真実を語っているか、どうか。


 トカゲの説明は理解できなくもない。

 自分の居場所をとられるというのは、まぁ怖いだろうさ。


 けれど、なーんか誤魔化されている気がする。

 不都合な真実──ってやつが隠されてる気がするんだよ。


 俺はトカゲの一挙一動、瞬きと呼吸数までチェックするように観察する。

 俺と同じようにトカゲを囲む子供達も、口をへの字に曲げていた。

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