若くなった俺。それでも百六十センチはある!はずだ
違いました。
子供達は育っていなかった。
子供達のサイズが変わって見えたのは、俺が小さくなったからでした。
正直、超ショック。
百八十近くあった身長が、ひゃくろくじゅ──いや。ななじゅ──こほん。十センチ以上縮むって、相当じゃねぇ?
これじゃぁ小学生──こほん。これじゃぁ、まるで中学生じゃないか。
もー、ショックすぎて、ショックだ。
ん? 見栄はるなって?
なんのことだかサッパリサッパリ。
高校生だった俺が百八十センチ越えのイケメンだった、可能性がなきにしもあらず。
「パパ、へんな顔になったな」
「若くなっちゃったんだよ」
ぷぷっとヨクトが笑う。
目線がちょっと下がっただけなのに、すっごく悔しく感じられる。
「すっごく、心配したんだから」
「ん。間に合ってよかったの」
「ああ、二人とも。心配かけてごめんな」
ヘレとメアは良い子のコメントだ。やっぱり女の子は可愛いくて優しい。
「にゃふん」
「シロも、お迎えありがとね」
口にくわえていた緑色の物体をポイ捨てし、逃げないように前足で玩びながらシロが機嫌の良い声を上げる。
ん? 緑色……くわえて……あ。
「い、インコー! 生きてるかインコ!」
目にも鮮やかなソレは、なんとかフェザー・インコさんではないだろうか。
は! そういえば、お子さま達にシメられたとか、シロがかじったとか言っていたような。
マジで生きてるのか、ソレ。
俺の静止にシロがインコから足を放すが、ボロ切れのようなインコはピクリとも動かない。
俺はじっとインコを見る。
シロがインコを鋭い爪でつつこうとするのを何度か制止するが、インコは動かない。
インコの胸はかすかに上下していた。
インコは生きていた。
よかったよかった。生きててよかった。
野生動物の虐待、なぶり殺しとか勘弁な。
カチカチとインコがクチバシを鳴らしている。
長い沈黙の後、インコから小さな声がした。
『………………は、はんにんは……ヤス、です』
余裕そうだった。
『すまなんだの』
ペコリとトカゲに頭を下げられて、俺は慌てた。
だってトカゲさんのせいじゃないし。
トカゲさんは俺を探して、同僚──弟妹に声をかけてくれただけみたいだし。
気にすることないのにな。
『ペリドットフェザーは物忘れがひどくてな。大切なことでも、三歩歩くと忘れてしまうのだ』
わかります。鳥頭ということですね。
『話し方が丁寧だから、初対面の者には気付かれにくいのじゃが……このアホ鳥には、おまえさんが"幻獣"でないことがすっぽぬけておったらしい』
「いや。でも。こうして無事に帰ってこれたしさ」
むーむーむーと、トカゲの後ろでインコが叫んでいる。
トカゲが謝る必要はないとか。
乱暴者の魔族──シロか──への抗議とか。
幻獣の為に俺を殺すべきだ、とか。
インコが口を開くたびに、周囲の温度が下がってゆく。
冷気の発生元は子供達とシロだった。
俺? 冷気の出し方なんて知りませんが、何か?
『このアホが』
フォローを諦めたトカゲが言う。
やっぱりトカゲも分かっていたんだな。インコの腹黒さと殺意に。
それで、どんな言い訳をしてくれるのかな?
『犯人はヤス──この言葉を知っているか?』
「知っている」
古いゲームのネタバレだよな。
俺はやってないけど、掲示板でネタに使われているのを見たことがある。
勿論のことだけど、子供達は首をふって「しらない」という。当然だ。
ん──あれ。なんでトカゲとインコが知っているんだ?
『ワシらにこの言葉を教えたのは、幻獣の父。ワシらを造りたまいし父にして、地裏の支配者。
異世界より喚ばれし創造の担い手──そなたと同じモノじゃ』
『だからこそ、今殺さなくてはならないのです。
魔族などという新参者に、誇り高き我ら幻獣が──もぐっ』
インコがトカゲの尻尾に潰された。
『鳥頭が失礼を言うた。謝罪する』
「いや……うん。いいよ」
惜しかったな。トカゲの尻尾がもう少し遅ければ、インコはシロの口の中だったのに。
目の前の獲物を奪われたシロは、それでも諦めきれずに潰れたインコにちょっかいをだしている。
『最初に喚ばれた者は"人族"を造った。獣人族は大地を駆け、森人族は深き森の奥に住まい、酒人族は荒れ地と地下を住みかとした』
獣人族ってのがつまり人、かね。猫人、犬人っているんだろうか。
森人族はファンタジーでお馴染みのエルフかな。
酒人族ってのは──なんだ?
『次いで造られたのがワシら幻獣じゃ。地上に住みかがなかったワシらのために、父は裏の世界を造ったのだ』
裏の世界──ねぇ。裏……裏……裏技、裏の世界……バグの世界。
なるほど俺にとって、アレはバグった画面のようなものかもしれない。
終わらない夏休みのゲームを思い出すと、地裏が暗闇で良かったと思う。
バグっておかしくなった世界なんて、ゲームでみるだけで十分恐ろしい。
『ワシらの創造時を考えると、地表に住みかはない。
ゆえに、そなたらが地裏に進出してくるのではないか、と。ワシらが地裏を追われることになるのではないか、とペリドットフェザーは恐れたのじゃ』
「ふぅん」
さて──トカゲは真実を語っているか、どうか。
トカゲの説明は理解できなくもない。
自分の居場所をとられるというのは、まぁ怖いだろうさ。
けれど、なーんか誤魔化されている気がする。
不都合な真実──ってやつが隠されてる気がするんだよ。
俺はトカゲの一挙一動、瞬きと呼吸数までチェックするように観察する。
俺と同じようにトカゲを囲む子供達も、口をへの字に曲げていた。




