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異世界流スローライフにスパイスを  作者: 神埼あやか
魔族と幻獣の二重唱
13/40

スマホゲームと俺。カバは最強にして最悪の野生動物

「ぱぱ、なにしてるの?」


 いつもなら昼寝中のはずの時間。

 太陽が空高く登り、ぽかぽかと眠りを誘うような陽気の中でスマホを触っていると、ヘレが覗きこんできた。


「ヘレ。どうした、お昼寝はしないのか?」

「ぱぱったら。りっぱなレディを相手に、その言葉はひどいわ」


 プリプリとヘレが文句を言う。

 それにしても、一人前の淑女(レディ)とは。なかなか言うものである。

 あ。そういえば、ヘレは最初から"レディ"だと主張していたっけ。

 自分の名前がレディ・ヘレだと言い張ってたからなぁ。


 ふむ。あらためて見てみると、一人前のお嬢さんといえなくもない。

 背中まである黒い真っ直ぐな髪と、バサバサの睫毛。いままでふっくらとしていた頬は、ずいぶんとシャープになっている。なにを食べていたのかぽっこり出ていたお腹は引っ込み、全体的に脂肪が減ってすらりとしていた。

 出ているところはないけれど、充分にかわいいお子さまだった。


「かわいいお嬢さんは、レディと呼んだほうがいいのかな?」

「それはもういいの。だって、ぱぱのお嫁さんになるんだもの」


 そのジョークは忘れてないんだな。


「そんなことより。ぱぱは何をしてるの?」

「んー。ゲームかな」

「……ゲーム?」


 不思議そうな顔をしたヘレが俺の手元を覗きこむ。

 ちょうどズー狩り(パズルゲーム)をしていたので、ヘレに説明をしてみせた。


「上にいるのが(ターゲット)なんだ。下が味方。

 同じ絵を縦横に三つ以上並べると、敵に攻撃できるんだよ」


 言って緑色の銃のアイコンを揃える。

 緑の絵は消えると同時に、敵にダメージを与える。ごく一般的な落ちゲーだった。


 なれた手つきで画面を操作すると、敵として出てきていた(ポニー)が消える。残念ながらドロップはなかったようだ。次に出てきたゾウを見て、ヘレのテンションが上がった。


「ぞうさんだ!」

「そうだね。やってみるかい?」


 きゃー、と声をあげてスマホを触りだしたヘレを見て、他の子達が集まってきた。

 ヘレの背中側から、ゲーム画面をのぞきこんでいる。


「……なにやってんの?」

「ぞうさん。捕まえるのー」


 説明してなかったのに、よくわかったな。



「えーい。やー。……アレ?」

「ちゃんと動かせよ」


「とーッ」

「へたっぴー。動かすの、それじゃないだろ」


「あたーっく」

「あああ。それ、ちょー連鎖するのにー」



 なんだか、ヨクトさんが熟練者っぽいこと言ってますよ。連鎖とか、誰に教えてもらったんでしょうね。


「やった! やられちゃった」

「見てるほうがつかれるっての」


 結局負けてしまったヘレに、ヨクトが悪態をつく。が、疲れたのは、ナユタを抱っこしてるからだと思う。

 小学生が幼児を抱っこ……そりゃぁ疲れるだろ。


「むー。そんなこと言う、ヨクトはできるの?」

「ふふん。かしてみろよ」


 おお。プロの参戦ですか。しかし、ナユタを抱えたままじゃぁ上手くできないだろう。

 そう思って、ナユタを受け取ろうとした俺の手を無視して、ヨクトは座り込んだ。

 あぐらみたいに足を組んで、その上にナユタを乗せる。ナユタの体が安定したのを確認してから、ヘレからスマホを受け取った。

 無視された手が悲しいです。


「見てろよ。サバイバルサバンナ最強カバ杯をクリアしてやるよ」


 あ。ごめん。それ俺でも無理なやつだわ。

 現在出ている中で激難マップを選択したヨクトに、俺は心の中で合掌した。




 カバは強い──らしい。

 動物園のもっさりとした、おでぶなカバしか知らない俺には想像もつかないのだが、カバは強いそうだ。

 最強にして最悪。それが自然界のカバである。


 そんなカバに叩きのめされたヨクトが、プライドを粉々にされてへばっていた。

 悲しみをごまかすかのように、膝に抱えたナユタの頭をぐりぐりしている。ナユタは邪魔そうに手を振り上げて──負けているのがなんともいえない。


 そう。カバは強いのだ。

 現在の手持ちの武器では倒せない相手なのだ。

 俺の攻略もそこで止まっている。

 強力な友人(フレンド)がいれば、五割で勝てる。強力な友人がいても、五割で負ける。

 そんなチート敵なのだよ。


 このカバをどう倒すか──課金して、強力な武器を手にいれるか、地味にレベルを上げるか、強力な助っ人に寄生するしかないのだ。

 課金していないうえに、基本レベルで放置している俺のキャラクターだ。カバ様をソロで倒すなど夢のまた夢なのだよ。

 どうだ。カバの強さ思い知ったか。


「はーい。残念でした」

「なぁんだ。ヨクトもへたっぴぃなのー」

「うー。ヘレよりはウマイもん」


 くすくすとヘレがヨクトをからかう。

 確かに、ヘレに比べるとヨクトは上手だった。もしかしたら俺より上手かもしれない。

 五連鎖六連鎖をナチュラルに揃えていたもんな。意識して五連鎖を作るのは、俺でも苦労するというのに。

 六連鎖なんぞは、意識して作れたことありませんっての。失敗して二連鎖になるのが関の山である。


 ナユタがスマホに向かって手をのばしていた。

 ぺちぺちと催促するようにヨクトの腕を叩いている。


「なんだ? ナユタもやるの?」

「はい。どうぞ」


 いや、さすがにナユタには無理だろう。

 そう思って視ていると、ナユタは渡されたスマホを両手に持って、上に向けたり下に向けたり。裏返しにしたりしている。


 やっぱり使い方は分からないみたいだ。

 ですよね。幼児だもんね。

 ナユタならカバ様に勝てるんじゃぁ、とか言わなくて良かった。変な人だと思われるところでしたよ。イヤン。


 しばらく触って飽きたのだろうか、ナユタが俺にスマホを返してくれた。

 大人しく返してくれて良かった。

 友人は、弟にスマホをかじられたとか、なめられてべちゃべちゃにされたとか言っていたから。

 ナユタは賢い、良い子ですね。


「ありがとな」

「ん」


 お礼を言って受けとると、ヨクトがプと頬を脹らませた。

 なんだ。何が気に入らないんだ。


「ナユタ、ヘレ。行こっ」

「え。ちょっ……」


 可愛くなくベーっと舌を出して、ヨクトが立ち上がる。

 ナユタを連れたまま草原に走り出して云ったのを、ヘレが追いかけて行った。


「え……何があったんだ……」


 三人がいなくなって、一気に寂しくなってしまった。

 そういえばメアとシロはどうしているのかと思えば、トカゲと一緒に何かを覗きこんでいるようだった。

 おやぁ、いつのまにトカゲが増えたんだろうか。


 まあ、大人しくしてるなら良いさ。

 メアも少し成長して、幼稚園児くらいにはなっている。幼稚園児といえば、親から離れる準備期間中だよな。

 昼寝も一人だし、着替えも一人。

 早い家では塾通いが始まると言う噂もある、幼稚園児だ。


 メアより小さいナユタには、ヨクトが付きっきりだし。

 なんだかいきなり手が要らなくなってしまった。

 いや、今までも手はかからなかったけどね。それ以上に手がかからないなぁと。


 まぁ、いいか。


 途中だったゲームを再開しようと、画面に目をやって──見馴れない画面に「おや」と思った。


 いつの間にかExcelっぽい画面が開かれているのだ。

 でもコレはスマホだし。このサイズでExcelって、見辛いことこの上ないよね。

 っつーか、Excel入ってたの知らなかったわ。さっきナユタが触ってる時に開いてしまったのだろうか。


 俺はExcelを閉じようとして、変な事に気がついた。


「あれ。コレExcelじゃねえし」


 そう、青色のバーには"Mgcel"と書かれていたのだ。

 どんなパチもんだよ、これ。


 笑って終了させようとした俺の目に飛び込んできたのは──"Mf(x)="。


 どこかで見たことのある文字だった。


 おそるおそるクリックしてみると、新しいウィンドウが開かれる。


 "魔法関数"と書かれたウィンドウだった。


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