普通と異常
キーンコーンカーンコーン…
どの学校でも聞くようなチャイムの音が授業の終わりを告げる。
「やっぱり変だ…。」
今まで田舎で過ごしてきた俺でもさすがにわかる。ここでの授業が『普通』ではないことに。
普通の授業と言うと例えば国語なら文を読んで筆者の考えを示したり、数学なら計算式を解いたりすることだ。他にも歴史を学んだり実験をしたり…しかしこの学園ではそのようなことは何一つもしないのだ。
そう…この学園で学ぶのは…。
『道徳』
人は何故生きるのか、仲間とはどのような役割を持つのか、努力は本当に結果を呼ぶのか…。それにまだ気になることが、
「圭吾く〜ん!」
そんな考え事をしていた俺に聞き覚えのある明るい声を出しながらこちらに向かってくる少女が
「ふふ〜ん、初めての授業どうだった!?」
乙音響。入学した日、昨日出会った彼女だが優しく接してくれる。
「あのさ乙音さん。乙音さんはここでの授業どう思う?」
「え?えっと、そりゃあはじめは変だな〜って思ったけど。まぁそういうとこも特別な学園なのかなぁって。」
本当にそうだろうか?いくら義務教育を終わらせたといっても全く『普通』の授業をしないのは…
「そんなことよりさ!今日放課後時間あるかな?」
「え、まぁあるけど…?」
「よかった〜!じゃあ私がこの学園を簡単に案内するよ!迷子になったら困るしね!」
おそらく彼女は迷子になったのだろう。
だがそれも仕方ない、ここは学園。と呼ぶには広すぎる。
折角彼女と2人になれるんだ。聞きたいことは聞いておこう。
「それじゃあさっそく行こうか!」
彼女に勧められてそう言って席を立とうとしたその時…
「弥生君。少しいいかしら?」
はっきりとした声で自分の名前を呼んだ俺の視線の先にいたその人物は…
「あっ、委員長…どしたの?」