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33  《呪文(スペル)》と《身体術(スキル)》

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夢の三桁が見えてきた~~~っ!


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 峠の砦に朔達が到着したのは、未だにも高い時間だった。 朔の感覚では三時過ぎくらいだろう。 途中何組かの行商人ともすれ違ったりもして、馬車でのんびり進むその姿に朔は「旅の商人もいいかも」とか、新しい世界での生活に思いを馳せたりもしていた。


 砦は峠の形に合わせて石壁を二重に組み、外門には双塔、内門には主郭キープが設けられた堅牢な物であった。 これまでサルバー王国の西の守りとされているのも頷ける造りである。


 そして、二つの城門を抜けると小さいながらも街があり、何件かある宿屋の一つで部屋を取ると、タルラ達は旅装を解いたのだった。


 今はそれぞれ部屋着に着替えて、一息入れている所だ。


「で、何でサクがこの部屋に居るのよ!?」


「仕方ないですよ、この部屋しか空いてなかったんだですから。 旅に出たらこんなことは良くある事よ、ミラベル様も、お年頃なのは分かるけど、そんなにツンケンしてると嫌われちゃいますよ? 私はサクちゃんと一緒に寝れて嬉しいですけどね」


 森にはびこっていた盗賊達が一掃されたと聞いて、これまで二の足を踏んでいた商人達がこぞって国境へ押し寄せてきた為、今この砦の街はかつて無いほど賑わっているらしい。 故郷の人ごみから比べたら、さほどでもないので、朔は気にならなかったが、宿の人の説明ではそう言う事らしいのだ。


 ようやく取れた部屋も六人部屋が二つ。 それ以外は大部屋で雑魚寝になってしまう。 となれば、部屋割りも自ずと決まる物で、男部屋と、女子供部屋に分かれる事になった。


 そして朔はと言うと、当然子供扱いである。 流石にナムルやトーレスに代わってくれとも言えないので、諦めるしか無さそうだ。


「タルラお嬢様、ミラベル様、準備は宜しいでしょうか?」


 ノックの後、扉の向こうから、トーレスの声が聞こえる。 タルラ達はこの後、砦の指揮官に挨拶に行く予定だ。 扉の向こうにはナムルと、ミラベルの護衛の騎士二人も、正装に着替えて待って居る事だろう。


 ツゥエルとタットンは買出しに行き、ムルビィは女性人の服を纏めて洗濯をする事になっていた。


「サクちゃん、せっかく時間が空いたのだから、魔術の勉強を始めよっか」


 ムルビィのお陰で手が空いたチェミーが、荷物から分厚い本と紙を取り出し机の上に広げ始める。


『魔術、魔術~。 サクしっかり覚えようね!』


 魔術は魔法の廉価版と言っていたわりに、悪魔も乗り気だ。 最近気が付いた事だがこの悪魔、自分の出来る事が増えるのが嬉しいらしい。 内空間が使えるようになったときも飛び上がって(いつも飛んでいるが)喜んでいたし、この世界で魔法が使えることにも浮かれている。 向こうの世界で、魔力を思う存分使用できなかった反動かもしれないが、悪魔が(食事)以外のことに興味を持ってくれるのは、朔としても正直ありがたかった。


「はい、チェミーしぇんせい よろしくおめがいしましゅ」


「くっ、うん、よろしくサクちゃん」


 冗談めかしてかしこまった口調で言ってみたのだが、発音で失敗してしまい、チェミーに少し笑われてしまったが、気にしない。 母国を出るまでは、積極性とは無縁な生活をしていた朔だが、今の座右の銘はトライ&エラーだ。 喋らなければ言葉は上手くならないなら、笑われても喋ると決めている。 


「まずは魔術の基本的な知識からね。 これを覚えてからでないと、習得の方向性が決まらないから、ちゃんと頭に叩き込むのよ?」


「はい」


 言いながらチェミーは紙に《呪文式発動魔術スペル・マジック》と《身体式発動魔術スキル・マジック》と書き出した。


「まずは《身体式発動魔術スキル・マジック》。 これは、体の動きを媒体にして発動させる魔術なの。 私は一つも習得してないから、詳しいことは教えられないけど、使えるようになるには、かなりの鍛錬が必要だって聞いたことが有るわ。 トーレスさんが使う《飛剣ブレイド・シュート》 や、ツゥエルが使う《筋力強化パンアップ》なんかがそれで、《呪文スペル》がない分、発動が早かったりするの。 でも反面、無属性しか発動できなかったり、有効射程が短かったりするのよ。 詳しいことは、トーレスさんや、タラル様に聞くのがいいのかもね。 剣術や体術の型なんかも、《身体術スキル》の発動に繋がる物が多いらしいから、基本の鍛錬をおろそかにしたら駄目ってタルラ様は言っていたわ」


「むぞくせい?」


「火とか水とかの属性を持たない魔術の事よ。 魔法の矢とか、シールド魔術とか、身体強化ブーストとかが、それに当たるかな。 でも、属性が無いからって馬鹿には出来無いのよ。 魔法の矢も、シールド魔術も、上級になると本物の矢や盾よりも硬くて強くなったりするの。 何より無属性の一番の特徴は、属性同士の習得妨害が起きないってことかな」


(属性同士で干渉しあうのかな? よくある火は水に弱くてとか…)


「そうね、丁度いいから《呪文式発動魔術スペル・マジック》の、属性の話をしましょうか」


 チェミーは先ほどの、《呪文式発動魔術スペル・マジック》の下に、《光》と書き、その下に縦に《火》《風》《雷》と順番に書いていく。 今度は《光》の横に《闇》、《火》の横に《氷》、《風》の横に《地》、《雷》の横に《水》と書いて行く。


 図としてはこんな感じだろう。


《光》―――――《闇》

《火》―――――《氷》  《回復》

《風》―――――《地》  《無属性》

《雷》―――――《水》



 そして少し離れた所に《回復》と《無属性》も書き加えられる。


「これが属性。 例外も有るけど、基本はこの関係だと覚えてね。 縦の列が相性のいい組み合わせで、横が習得時に妨害が起きる組み合わせなの。 初級の魔術なら問題ないけど、中級になると、《火》と《氷》の両方を習得することは出来なくなるの。 例えば《火》の中級《呪文スペル》の《爆炎球ファイア・ボール》を覚えたら、《氷》の中級《呪文スペル》の《爆氷球アイス・ボール》が覚えられなくなるのよ。 無理して両方覚えると、どちらも使えなくなってしまうから気をつけないといけないわよ。 だから、新しい《呪文スペル》を覚える時は、どの《呪文スペル》が今後覚えられなくなるのかきちんと調べてからのほうがいいわね。 そうしないと後で泣きを見ることになるから」


「はい、せんせい しつもん」


「なにかな?」


「ぞくせいで つよい よわい は あるの? ひ は みずに よわい とか」


「それは無いかな。 どの属性でも初級同士をぶつけたら、両方消滅するみたいよ。 でも、初級の《水弾ウォーター・ショット》と、中級の《爆炎球ファイア・ボール》をぶつけたら、《水弾ウォーター・ショット》だけが消えるって、聞いたことは有るわ。 タイミングが難しいから、戦闘中じゃ狙ってやっても当てられないけどね」


 タルラや、森で遭った男の魔法の矢を思い出し、あれに魔法を当てるのは確かに難しそうだと朔は納得する。 そしてここまで聞いて、魔術も一応自然法則に則っているのかもと朔は考える。 大火事に少しの水では意味が無いし、マッチで火をつけても、そよ風で消えてしまうのと同じ感覚を受けたのだ。


「他に質問が無ければ、次は回復魔法の説明ね……」


 回復魔法は、低級の自己回復なら問題は無いが、中級以上や、自分以外の相手にかける《呪文スペル》の場合は、無属性以外、全ての属性と習得妨害を起こしてしまうらしい。


 そして、無属性に属している《身体強化ブースト》も、他者にかけれる《呪文スペル》になると、習得妨害が発生してしまう。 これに関しては、

『《身体強化ブースト》は、回復魔法じゃないか?』

『いや、《身体術スキル》で発動するから、無属性だろう』

と、専門家の意見も分かれているらしい。


 チェミーの話では、遺跡から出てきた《呪文スペル》や《身体術スキル》を覚えて、使ってみた結果の経験則で「こうじゃないのかな?」と、属性が振り分けられたらしく、後付けなのだそうだ。 だから、現状ではこの考え方が主流で、本質は全く解明されていないらしい。


 そして、回復魔術や身体強化魔術は、教会が主に教えているらしく、学園や私塾では習うことが出来無いらしい。


「私達のパーティーにも回復や支援魔術を使える人が欲しいんだけど、フリーの使い手はなかなか居なくて、いい人が見つからないよね」


 回復魔法の説明は、チェミーの愚痴っぽい一言で〆られた。


 

 

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