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21  乱戦

昨日一日だけでPVが1000を越えました・・・一体何が?^^;


ブックマーク登録いただいた方、ありがとうございます!


めっさ嬉しいです!

 魔法を警戒しているのか、盗賊達は朔達を半包囲する感じで散開しながらゆっくりと近づいてくる。


 その間に朔はチェミーに連れられ馬車の右側に降ろされた。 荷台を背にするように立たされた朔の背中に、馬車の固い前輪があたるのを感じながら辺りを見渡す。


 ツゥエルは朔とチェミーを守るように盾と戦斧を構えて前に立ち、 テットンが皆の間を素早く動き回り、荷台の横に掛けられていたそれぞれの槍を手渡していく。


 タルラとナムルはその槍を受け取り、調子を見るように二、三度しごいから盗賊達に穂先を向ける。


 トーレスは槍を断り、馬を降りてから、落ち着いた様子ですらりと剣を鞘走らせた。 馬はよく仕込まれているのか、トーレスが降りると、距離を取る様に離れていった。 


『我が内に眠りし魔素マナよ、起動式の命ずるままに、立ち並ぶ炎となりて、彼の者たちの進行を妨げよ! 《炎の壁ファイア・ウォール》!』


 高まる緊張感の中チェミーの詠唱が高々と響き、馬車の荷台の後尾から朔達の右手前まで被さるように炎の壁が現われる。 馬車と炎の壁でV字型にさえぎり、数で勝る盗賊達の進行ルートを限定する作戦のようだ。


 その間にもタルラとナムルが先ほどの《シールド》を再度展開させて備えている。


『お前のだ、いざとなったら使え』


 槍を配り終わったテットンがこちらに合流し、昨日盗賊から奪って以降、朔が持っていた槍を手渡してくる。 今の朔の装備はこの槍に腰に差して持ち歩いている雑事使いのダガー。そして……、ゆったりとした胸までしかないレースつきのブラウスに、黒っぽいディアンドルジャンパースカートと、兎の刺繍が可愛い桃色の前掛け風エプロンであった。 愛を知る県の犬の山にあるテーマパーク(小さい世界)のドイツ風貸衣装を思い出させる格好である。


 この世界の趣味なのか、ディアンドルの前袷まえあわせ部分は腰から鳩尾辺りまでしかなく、チェミーのような発達したお胸の持ち主なら、大人用の胸元が開いたブラウスの間から、その谷間がさぞや強調される事だろう。 残念(?)ながら朔が着ているのは子供用で、首元までしっかりとボタンで留められたのもなのだ。 朔としては見られても気にしないので、暑さから胸元のボタンを何度か外したのだが、チェミーに見つかる度に留めなおされてしまった。


(女の子は大変だ)


 全体の様子を覗いながら、スカートの裾を抓んで左右に振り、動きやすさを確認してみるが、いまいち上手く動けそうに無い。 それなりの厚みのある布なのだが、悪魔の魔力を借りて本気で走り回ったら、すぐにでも破けてしまうだろう。


(勿体無いけど、仕方ないか)


 朔は手にした槍を後ろの馬車に立てかけ、ダガーを抜いてスカートを膝上10センチあたりで一気に破り取った。


『あ!?』


 音に気付いたチェミーが、何か言いたげな表情を浮かべるが、盗賊達が近寄ってきてる途中という事もあり、呪文スペルの詠唱に集中し始めた。


 朔はそれを横目にダガーをしまい、馬車に立てかけた槍を右手で取り、杖のように立てて仁王立ちをする。 膝の上辺りがシミチョロ(死後)ならぬ、ドロ(ドロワーズが)チョロ(ちょろっと見えてる)しているが、気にしない。


『ぷっ!』


『お譲ちゃん、やる気だぜ』


 チュミーと同じように振り返ったツゥエルとタットンは、その勇ましい様子に噴出しながらも、程よく緊張がほぐれたように、前へと向き直る。


『《爆裂球ファイアー・ボール》!』


 そして、チェミーの魔法で吹き飛ばされ動きの止まった盗賊に、槍を地面に置いて片膝を着いた姿勢で弓を構えていたテットンが、次々と矢を放っていく。


 **


「ナルム卿! 我ら若輩なれど、騎士の底力見せ付けてやろうではないか!」


「はっ! タルラ様。後ろはお任せ下さい!」


 一方では、タルラとナムルが盗賊達に向かって再びの突撃チャージを開始していた。


 前方を駆けるタルラが吹き飛ばした者を、ナムルが槍で確実に止めを刺して行く。


 一度盗賊の包囲を駆け抜けては、崩れた建物を回りこみ、三度の突撃をかける。


 二人が通り過ぎるたびに、盗賊は一人二人とその数を確実に減らしていった。


 **


「お嬢様の邪魔はさせません!」


 そんな二人を自由に走り回らせまいと、縄や網を投げつけようとする者も居るが、人馬に気を取られている間に、走り寄ったトーレスが一刀の下に切り伏せていく。


 目の前で切り伏せられた盗賊が倒れていく視界の隅に、また網を投げようとする者が映る。 約十歩の距離、走っては間に合わない。


 一瞬にして二度の気合と、剣を振るう動作を行うトーレス。


 一度目は手首のスナップを利かせただけの短くて軽いもの、そして二度目に大きく振るわれる剣。 二度目は剣を振ると言うよりは投げつける動作に似ている。


 そして、一度目の動きでトーレスの持つ剣の刀身が黒く染まり、二度目の動作で剣の軌道に合わせて発生した黒い刃が飛び出し、網を手放す寸前の盗賊を皮鎧ごと真っ二つに切り裂いた。


「ひ、飛剣使いがいるぞ! 気をつけろっ!」


 近くで見ていた盗賊の一人が声を上げる。 《飛剣ブレイド・シュート》それはトーレスの得意とする《身体術スキル》の一つでも有った。


「今更、遅いですよ」


 その声に一人呟くトーレス。 戦局はすでにタルラ達へと傾いている。 チェミー達の方に向かった盗賊は、魔法と弓に警戒して近寄れないまま、徐々に数を減らしている。


 タルラとナムル、そしてトーレスの相手をしてる者達も、タルラ達に備えればトーレスに切られ、トーレスを囲んで止めようとすれば、タルラ達に打ちのめされる状況に何の手も討てず、数を減らすばかりだあった。


(このまま行けば勝てそうですね…、しかし)


 周囲の状況を判断している一瞬の隙を付くように、トーレスの左側から殺気が一気に膨れ上がった。 


 トーレスが咄嗟に盾を構えると、重い衝撃と共に盾が砕け落ちる。


 砕けた盾の先には、大柄で厚みのある体格をした熊のような男が戦斧バトルアックスを振り下ろした姿勢で、立っていた。 


「《破壊撃ブレイク・インパクト》ですか」


 先ほど自分が放った《飛剣ブレイド・シュート》に、飛距離は及ばないものの、数歩先まで衝撃波を飛ばすことの出来る《身体術スキル》を使った男に警戒を強めるトーレス。 


「黒い刃の《飛剣ブレイド・シュート》…。 お前、《黒剣》トーレスか?」


「自分で名乗ったことはありませんが、そう呼ばれて居た事は有りました…が、あなたは?」


「ビーだ、こいつらのかしらをやってる」


「そうですか。 では無駄だと思いますが、お伝えします。 今すぐ武器を捨てて降伏しなさい。 このままでは全滅しますよ」


「その心配はいらねえよ。 この中で一番強い手前てめぇを倒せばそれで終わりだ。 それに『黒剣』を殺れるチャンスなんて、そうそうねえ。 その刃が黒く変わる魔剣は俺の腰に付けさせてもらうぜ。 俺は斧が得意だから、飾りにしかならねえがな」


「あなたは色々大きな勘違いをしているようですね。 ですが、いいでしょう、お相手しましょう」


 トーレスの言葉に犬歯を見せ、獣のような笑みを浮かべてビーは戦斧バトルアックスを構えなおす。


 対峙するトーレスもまた、体格差などまるで気にしないように、気負いを全く感じさせない自然体の構えで応じるのであった。



 **


 

 炎の壁と馬車に挟まれた朔達は順調に盗賊達を減らしていた。 役目としては敵を引き付けて、守りきる事なのだろう。 その間にタルラやトーレスがピンチに陥ってしまったら、意味も無くなるのだが、魂を求めて飛び回る悪魔の実況と通訳を聞く分には、どうやら押しているみたいだ。


(きた! きたきたきた! スキル来た~~~~っ! 馬車の影で見えなかったけど、斬激を飛ばすとかやってみたい! それに二つ名が『黒剣こっけん』とか、トーレスさんかっこ良過ぎ! まさに現代ファンタジー!)


 魔法と弓を警戒して二の足を踏んでいる盗賊達を見ながら、のんびりとそんな事まで考える余裕すらある。 朔達の前に向かってきた10人の盗賊で今立っているのは5人。 しかも全員どこかしらに矢が刺さっていたり火傷を負っていたりと、無傷なものは一人も居なかった。


(それにしても、タルラ達強かったんだな~)


 トーレスとビーの一騎討ちが気になるものの、危なそうなら知らせろと悪魔には言ってある。 タルラとナムルも同じだ。 悪魔が何も言ってこない所を見ると、今のところは心配ないようで、朔としても手持ち無沙汰な状態が続いている。


 はっきり言えば油断していた。


『ちょ! あんた!したっ! 下!』


 そんな朔に悪魔が注意を叫ぶ。


(へ?)


 悪魔に言われて足元を見れば、いつの間に潜り込んだのか、盗賊が馬車の下から腕を伸ばし、呪文に集中しているチェミーの足を掴もうとしている。


「うをっ!」


 朔は慌てて槍を逆手に持ち直し、盗賊の腕めがけて突き刺した。


『うぎゃぁああああああああああ!』


『へ? きゃぁああああああああああ!』


 腕を刺されて叫び声を上げる盗賊と、声に反応して振り返ったチェミーの悲鳴が木霊する中、


『次! 上!』


悪魔に言われ、槍を構えなおす朔。


 その瞬間に荷台から剣が突き出し幌が一気に切り裂かれる。 そして幌の裂け目から飛び出そうとする盗賊の胸に、身構えていた朔は少しだけ”力”を使い槍を突き刺した。


 腕に刺した相手の体重を感じながら、石突を地面にあて、あくまで槍の柄がつっかえた反動で起こった現象を装いながら、槍を使って盗賊をツゥエルとテットンの間に放り投げる。


 それに素早く反応したテットンが、片膝をついた姿勢のまま弓を手放し腰のダガーで盗賊に止めを差した。


『今だ! 行けっ! へばり付きゃ魔法も怖くねぇ!』


 だがその隙を見逃す盗賊達ではなかった。 これまで二の足を踏んでいた盗賊達が一斉に襲い掛かってくる。


 タットンは素早く短槍ショートスピアを拾い立ち上がると、戦斧に盾を構えるツゥエルと肩を並べて迎え撃った。 


 朔の前で5対2の接近戦が始まのだった。







  

 お読みいただき、ありがとうございます!


 シミチョロ、わかる人居ないだろうな~? 今はむしろアンダーのレースを見せてる時代ですしね~。 


 ちなみに、愛知県犬山市のリトルワールド、異文化の参考になりますので、一度見に行かれるのをお勧めします。

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