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私は防錆の為に

 ログ技師の作業を見に行って、その足でロゼ博士にその状況を伝えに行って、今日の私の仕事は終わる。

 普段より早い定時はその後に予定があるからだ。

「うむ。初めてにしては上手いな」

 グラン博士から感心された。

「そうですか?」

 感心されたのは油の塗り方だ。

「通常は二度三度と塗って万遍なく塗るのだが、ただの一度で完璧に塗れているではないか」

 海上都市では重金属種は錆びる。

 だから肌の手入れは念入りにしないといけない。

 制湿機のあるこの工場では多少雑でも問題は無いらしいが、それだと他の環境に行った時に錆びるからと、グラン博士直々に油の塗り方を教えてくれる事になった。

 工場内でその知識を持っているのがグラン博士だけなのだ。

「重金属種にとって錆びは危険だからな。時には死に繋がる」

 だそうだ。

 そしてその知識を得た事で、ログ技師が工場に侵入して来た事に関して恨む気持ちは消えた。

 解雇の危機を負わされ、殺されかけたのにも係わらず、怨嗟は湧いて来ない。

 ログ技師は生きる事に精一杯だったのだろう。何より私は生きているのだからそれでいい。

 そして同時に、疑問も湧く。

「グラン博士」

 思い付いた疑問はそのまま、本人にぶつける事にする。

「グラン博士は何故、船を作るのですか?」

 開発途中の船は、この工場と似た性質を持つ。

 それは重金属種が主体となって制御する事で、運用必要な人員を劇的に減らす事だ。

 工場における最初の管理者は私。

 船における最初の管理者はグラン博士。

「錆びるのに、と言いたいのかな?」

 グラン博士は愉快そうな電波を漏らしてそう言った。

「そうです。しかもあの船、潜るんでしょ?」

 その疑問に気が付いたのは工場長が初めてだろうと言って、グラン博士が微笑印象が私の中に流れ込んで来る。

「私は心身共に速やかに環境に適応してしまうのでね、同じ環境に長期間身を置くと心が錆びるのだよ」

 心が錆びる。そんな抽象的な表現がグラン博士から聞けるとは思わなかった。

「常に、新しい環境は必要なのだよ」

 分かった様な、分からない様な。

 私の困惑した電磁波を感じ取ったからか、グラン博士はそれを端的に、しかし抽象的に言い直した。

「全ては、僕が錆びない為に」

完結しました。

書き始めてからずっと主役をグラン博士にするかログ技師にするかで悩んで、グラン博士に大きく傾いたのが9話を書いた時です。そしてオチを全員生存エンドにする事を決めたのは8話を書く直前です。

因みに対抗馬はそして誰もいなくなったエンドでした。

主役の選定に何で迷ったかと言いますと、ジャンルが冒険なのにグラン博士は冒険してない事に違和感があったからです。

僅かながら錆びる危機を承知で新型工場に居るのが冒険、と言う解釈で乗り切る予定で書き始めましたが、一話を書いた時点で無理だと悟りました。

誰かさんが冒険し過ぎるので。お前の事だよログ技師。

タイトルの「僕は錆びない為に」はダブルネーミングとして考えたタイトルだった訳ですが、それが筆者の首を絞めた訳です。

途中で主役を変えられるタイトルなんて甘い考えがあった時代もありました。途中で主役を変えられる状態を維持して話を重ねるのは至難の業でした。

結局ログ技師が冒険者の肩書を外される事とグラン博士が最後の一行まで主役の立ち位置には立たない事で折り合いが付きました。

表向きはログ博士の冒険譚から始まる一騒動。でも騒動を収束させてハッピーエンドを導くダークヒーローはグラン博士。

この事さえ最初に決めておけたのならと悔やまれます。


今回はこれまでより更に短いエピソードの連続で話を構成しようと思って書いていました。

最初からそうすると文章が崩壊するので最後の方だけですが。

実際9話~10話は9話~20話として掲載する予定もありましたが、露骨なアクセス稼ぎになってしまうのと、サブタイトル考えるのが面倒であんな形式になりました。

整合性を考えるなら8話も二部構成にした方が良かったなと今になって思いますが、戒めとしてそのままにします。書き直すのが面倒とかそんなことは決して無いですよ?重金属種に誓って無いですよ?


なんとか書き切る事が出来ましたが、予想以上のぐだぐだっぷりに筆者は結構落ち込んでおります。あの説明あそこでしれっと触れられたなとか色々。

そんな拙作ですが、楽しんで頂けたのなら幸いです。

読んで下さった方、ありがとうございました。

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