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僕は生存の為に

 僕に生まれて初めて名前が出来た。

 ここで僕はログ技師と呼ばれる事になった。

「ログ技師、調子はどうだい?」

 僕が破壊した工場の修復作業を、工場長が見に来た。

 僕が破壊した工場長の腕は完璧に修復されていた。

「明日中にはなんとかなりそうです」

 工場長がほっとした電磁波を発する。

 聞けば工場長には後が無いらしい。

 管理不足である工場を駄目にして、賠償責任を負わされた上で懲戒解雇寸前だった所をロゼ博士に拾われたとか。

「こんなのを査察官に見られたら今度こそ終わりだからな」

 海の底に沈められちまうよと真剣な声で呟きながら、工場長はロゼ博士の研究室に入って行った。

 僕がやらかした結果なので、申し訳ない気持ちしか湧いて来ない。

 その後ろ姿に心の中で謝っておく。

 作業機械が順調に工場を修復していくのを管理しながら、僕は生まれ変わった瞬間の事を思い出す。

 生まれ変わったと言っても、その前の記憶は全て保持している。

 右手で引き千切った工場長の腕を持って、左手の拳を振りかぶった所で、僕は生まれ変わったのだ。

 記憶している以前の僕は酷く冒険的だった。

 単身で未知の工場に乗り込んだり、隔離構成層に身を委ねたり、グラン博士が管理する工場に不正在留しようと試みたり。

 何故自らを危険な場所に置く事に躊躇が無かったのか、今の僕にはそれがさっぱり理解出来ない。

 グラン博士はそれを僕の心が錆び付いたからだと仰ったが、心が錆び付いても身体が錆び付く事が無くなるのだから、これは誰もが望むべき変化なのだろう。

 その変化はグラン博士が意図的に引き起こしたと仰られた。

 どこまでも凄い御方だ。

 ミナカタ公国しか知らない僕はこれまで知らなかったが、重金属種は陸地でも稀有な種らしい。

 そんな稀有な種を主力とした工場を考案したロゼ博士と、重金属種の特異点たるグラン博士。

 二人の尊敬する上司の名前から一文字ずつを頂いて、僕はこの工場で生きて行く。

 僕が錆びる事は未来永劫無いだろう。

 僕はとても満ち足りた気持ちを実感して、工場の修復を続ける。

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