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第6話 旅立ち

12月8日 改稿





 ズドォォオオン! バババババッ!撤退だ、テッタイー!!


 立方体の箱から発せられた音を指で止める。


 この時になって、やっと午前中の訓練が終了した事を知った。


 この箱はタイマーみたいな物で、俺の訓練用にと用意された。音のチョイスが戦場のワンシーンなのは、完全にシャルロッテさんの趣味だ。この音にした理由は…知らんよ、そんなもん。


「ふぃ~っ、終わったか…」


 訓練にもいい加減慣れ、だいぶ余裕を感じている。

 最初の頃は地べたに這いつくばったまま動けない有様で、その度セバスさんに部屋まで運んでもらっていた。自分でも随分逞しくなったものだと思う。 


 荒くなった息を整え、訓練終了の報告に行こうと屋敷へ体を向けると森側の地面に人影が映っているのに気付いた。

 視線を上げると紅色の短髪に赤茶色の瞳を持つ厳つい大柄の男が立っている。

 歳は三十代後半ぐらい、背中には無骨な造りの大剣を背負い、金属製の胸当てにレザーガードの籠手と脛当てで身を包んでいる。

 男は俺を見て口をパクパクさせながら何やら驚愕している様子だった。


「た、大佐はついに子供を誘拐したのか!? 少年好きだとはわかっていた! わかっていたがっ! 犯罪に走るまでだとは!!」


 子供?……ああ、俺か。見た目少年だもんな、今の俺って。…つーか、誰だろう?この人。


「たわけっ!【焔砲フレアカノン】!」


 ドオォォォン!!!


 シャルロッテさんの声が後ろから聞えたと思ったら、三十センチ大の火の玉が男へと向かい飛んでいって…爆ぜた。


「のわああああああああ!」


 まともに火の玉を食らった男がゴロゴロ転がって悶え苦しんでいる。


 ・・・大丈夫なのか? か、かなりの威力があったんだけど…


「えーっと…シャルロッテさん、この人は知り合いなんですか?」


「いいえ、知らない人よ~だから燃やすの!」


 凄く、すっっごく爽やかな笑顔で断言される。


「ち、ちょっと待って下さいよ!今のは本気で効いたんですから!!」


 追撃をしようとさらなる火球を顕現させるシャルロッテさんに待ったをかけながら男が飛び起きる。


 おい、すげーな! さっきの一撃受けて…少々コゲてるけど、無事だよこの人。


「で?何しに来たのよ、ボリス」


「いや、大佐が『精霊大樹の雫』を採って来いって言ったんでしょうがっ!」


「私が?う~ん・・・言ったっけ??」


「言いましたよ! もう、どんだけ苦労したと思ってんですか!? 隣界に渡るのも大変なんですから」


「へぇーご苦労さま」


 どうやらこの人はボリスという名で、彼女からされた頼まれ物を持って来たらしい。本人は忘れていたけど・・・あ、ボリスさんが泣いてる。

 それからもう少しだけシャルロッテさんのボリスさん弄りが行われ、セバスさんによる火傷の治療が済んだところで家の中に移動した。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「ほう、異世界人なのか…。で、大佐に助けられたと―――――」


 シャルロッテさんが受け取った物を保管しに行っている間、俺のこれまでの経緯をボリスさんに話していた。

 話の内容が後半…拷問もとい訓練の日々に移った時だった。いきなりガシッと俺の肩を掴んで小さな頷き繰り返しながら同情の目を向けてくるボリスさん。


「大佐から色々酷い目にあわされただろう。俺はお前の味方だからな」


 俺は・・・俺の苦労をわかってくれる人物にこの日、初めて出会えた気がする。シャルロッテさんとボリスさんのやり取りを見ていて自分と秘かに重ねてたんだよな。

 その後は、各々の(シャルロッテさん中心の)苦労話で仲間意識を深め真剣に慰め合った。


 そんな俺達など気にするでもなく、話題の彼女(諸悪の根源)は優雅に現れた。


「なかなかいい仕事するわね~高品質な物だったわ。あら~仲良さそうね、何の話をしていたの?」


「「イイエ、ナンデモナイデス」」


「ふ~ん。まーいいわ。ところでボリス、この後の予定は?」


「特にありませんよ。大佐のお使いで結構な時間、家を空けていましたから帝都に帰ろうとは思ってますが…」


「そう、ちょうどよかったわ。ユーマを街まで連れて行ってほしいのよ。冒険者として独り立ちさせようかと思ってね。街まで送って、最初にちょこっと面倒見るぐらいでいいから」


「俺、冒険者になるんですか?」


「そうよ。この前、読んだ小説にね~親ドラゴンは子ドラゴンを旅に出して苦労させるってのがあったのよ~でね、成長して帰ってくる我が子を信じて待つのよ。深い愛だと思わない?」


 ああ、またですか。今回はなんかの小説の影響を受けたんですね~それで、俺に旅をさせたいと…毎度、毎度、この人は……


 これまでにも読んだ小説を基にした訓練をさせられた事が多々ある。だから、決して驚く事じゃない。

 例えば、ひたすらに【火玉ファイヤーボール】を剣で切って防いだり、氷点下で滝にひたすら打たれたり、「心眼を身につけるのよ」とか言って眼隠し(目潰し)で模擬戦させられたり…etc. 


 ってか、俺はシャルロッテさんの子共じゃないんですけど…しかも、中身も立派な大人だし。

 ・・・まあ、何を言っても無駄なんだけどね。


 経験上、これまで俺が反対しても彼女の思い付きが実行されない事などない。彼女が口に出した時点で、それは決定事項なのだ。…もう諦めてる。

 それに今回は、訓練ごうもんの日々から少なくとも解放されるというメリットがあるしな!!


「わかりました。俺、立派な冒険者になってみせます!!」


「うふふふ、張り切ってるわね~私も一年で上級冒険者になるのを信じて待ってるわ!!」


 えっ!? 今、無理なことをサラッと言いませんでしたか?


「大佐、いくらなんでも一年で上級冒険者は無理でしょう。現在の最短到達記録でも7年ですよ」


 ありがとう!ボリスさん。もっと言ってやって下さい。俺は凡人なんですよ、身体スペックは高いけど使えない凡人なんですから…自分で言っててなんか悲しくなってきた。


「大丈夫、私が制作した身体よ~問題ないわ。それに、一年っていうのも目標持った方が気合入るでしょう??」


 な、なーんだ…ただの目標か。良かった~だったら、無理に達成しなくてもいいよね。さすがに、この人でも七年かかる事を一年で達成しろなんて無茶を要求しな…


「でも、目標が達成できなかったら特別訓練が待ってるからね~」


 ・・・ですよね orz




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 ボリスさんと会った翌日から旅立ちへ向けての準備を始め・・・なんやかんやで一ヶ月が経過した。


 この一ヶ月は、冒険者生活に必要な知識やスキルを習得する事を中心に過ごした。

 ボリスさんから野営の仕方、狩りや獲物の解体の仕方まで教えてもらい、セバスさんからは家事全般を丁寧に指導してもらった。セバスさんに料理の腕前と知識を褒められたことがちょっと自慢だ。ふふふっ、料理には自信があるのですよ。伊達に元の世界で『モテモテ料理男子本』を暗記熟読、実践していたわけではないのですよ!・・・結局、モテモテ部分の効果はなく彼女いない歴=年齢というのは変わりませんでしたがね orz


 シャルロッテさんはというと旅立ち予定日の三日前に、突然「装備を自分で整えるのも経験だから用意しないけど、餞別として何か欲しいものをあげるわ~でも、あんまりな物はダメよ~」って言ってきたので「なら、銃をください。俺、魔法使えないから遠距離の攻撃手段が限られるんで…最初、出会った時に使ってましたよね?」と返事したら、了解したようで微笑みながら地下研究室に籠ってしまった。


「あの~セバスさん。朝食の後、旅立とうと思うんですが…シャルロッテさんはまだ地下ですか?」


「お嬢様はユーマ様注文の品を制作中でございます」


「おいおい!? 大佐は今日、出発するって知ってんだよな?」


 ボリスさんが苦言を漏らしたところで、バァン!と勢いよく扉が開かれた。


「お待たせ~~~ユーマのお・ね・が・い、聞いてあげたわよ~」


 上機嫌な様子のシャルロッテさんが、手に一つの木箱を携えて目の前までやってくる。

 ポンッと木箱をテーブルに置くと「さっそく開けてみなさい!」と笑顔で言われる。少し躊躇したら「早くなさいな」と急かされた。・・・ここ約半年間の彼方の私に対する仕打ちを考えれば、仕方ないと思うんですけど。

 一つ息を吐いてから覚悟を決め、木箱の蓋を開ける。


 それは、装飾の一切ない重厚な鉄の趣だけを称え、照らされる光を鈍く反射して輝いている。


 箱の中には、一丁のリボルバー式ハンドガンが納められていた。


「対魔物戦闘用回転式拳銃『イルリヒト』。ドライゼM1880の機巧をベースに魔改造を施したほぼオリジナルのハンドガンよ。全長241㎜ 重量500g 装弾数6発 貴方以外に使えないようにしてあるわ。使用するのは、9mm専用徹甲弾なの~」


 両手でソレを取り出し感触を確かめるように扱う。


「弾殻は?」


「ニッケルよ」


「装薬は?」


「魔石製火薬ね」


「弾頭は?」


「用意してるのは中実式だけど…炸薬式でもイケるわよ~」


「パーフェクトです!シャルロッテさん!!」


「当たり前じゃない、私の作品よ」


 彼女は俺の称賛を素直に受け取り、ドヤ顔で胸を反った。


 ・・・やはり、この世界じゃ今の会話はスルーされてしまうよな…ツッコミがほしかったのに。


 でも、スゲーかっこいい銃だ!オリジナルカスタム?ってのがまたイイ感じである。

 射撃に関しては、大学生時代の海外旅行で経験済みだ。その時に大口径の銃も撃たせてもらったし、指導員の人には射撃の才能があると褒められた。経験がある分、少し練習すればすぐに大丈夫といえるくらいには使えるようになるだろう。


「あと木箱に入ってる魔法陣が描かれた布だけど・・・そう、それね。その上に弾丸の材料を乗せて魔力を注げば自動的に生成してくれるわよ。これは、サービスね」


 おおぅ、木箱の底に敷いてある布って魔道具だったんだ。魔道具は魔力さえあれば誰でも使えるから、魔法の使えない俺でも使用可能である。弾がなくなったらそれまでってなら意味ないもんな。


「ありがとうございます!俺、頑張ります」


「それじゃー、行きますかね。ま、困ったことがあればちゃんと面倒見ますんで安心してください、大佐」


 ボリスさんがシャルロッテさんに声をかけながら席を立つ。

 俺も着替えや帝都までの水や食糧、一週間分の生活費と剣一本分のお金(銀貨2枚と銅貨50枚)が入った荷物を背負う。

 

 それから、俺とボリスさんはシャルロッテさんとセバスさんに見送られながら屋敷を出発した。その際に親ドラゴンの役に浸るシャルロッテさんに少しだけ疲れた。


 森に入ってからしばらく経った頃、先を歩いていたボリスさんが急に立ち止まって振り返る。


「あーっと、言い忘れてた! もうすぐ、ここの結界抜けるけど……強力な魔物が徘徊する危険エリアだからな、気を付けろよ?」


「え゛!?」


 ボリスさん・・・もう少し早く教えてよ、そういうのは orz






お読みいただきありがとうございます。


主は枯れ専なので、ウォルターが一番好きでした…なぜ、若返ってしまったのか!?

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