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第13話 これからの予定

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…ビュン! …ビュン! …ビュン!


「9998・・・9999・・・10000!」


 早朝の爽やかな空気と穏やかな陽。

 そして、剣が風を切る音。


 音の出所は、俺だ。


 ギルドで昇格試験の事を聞いてからの三日間、ひたすら剣の素振りを繰り返していた。昇格試験に試験官との模擬戦があると知って、今更ながら焦っている。

 素振りの型は、ボリスさんから教わったモノだ。街に来るまでの道中で教えてもらっただけなので、基本中の基本だけだけど。

 本格的には、ボリスさんが帰ってきた後に指導してもらうつもりだけど、それまでに何もしないのも時間の無駄なのでとりあえず素振りをしている。

 冒険者業の方は(軽い手伝いはあるけど)タダで住める場所を確保できたから一時的に休業することにした。今は、少しでも時間を剣の修練に費やしたいからだ。


 只今、素振りを開始して12時間が経過している。

 普通ならそれだけの時間を鍛練すれば全身疲労と筋肉痛で動けなくなるものだが、俺なら問題ない。どんなに肉体を酷使しようともホムンクルスボディ特典の自己治癒能力で解決だ。数時間毎に数分間休憩すれば、損傷した筋肉はバッチリ回復するし肉体的疲労もなくなる。


 それに、睡眠も三日に一度6時間ぐらいしか必要ない。・・・不本意ながら。

 これは、シャルロッテさんの実験?訓練??拷問!で飲まされた(甘え不要!休息不要!全力稼働!ワ〇ミ薬!?)呪薬の後遺症の所為だ。具体的には、一定の間隔6時間以上の休息を身体が拒絶してしまうという発作で・・・それが現在絶賛発動中なワケで、ひたすら素振りしかないワケだ。スゴイデショ!… orz



ガタンッ!


 何かが落ちた音で振り返る。

 熊が…じゃなかった親父さんが木桶を落としたまま口と目をいっぱいに開けて呆けていた。


「お、おい、坊主。お前、まさか昨日からずっと…」


「おはようございます、クマールさん。いやだな~違いますよ~早朝からですよ」


「おぉう!そ、そうだよな…がはははっ」


「そうですよ。そろそろ仕込みの時間ですね、手伝います」


 ヤベッ!集中してて、気付かなかったわ。咄嗟に誤魔化したけど大丈夫だよな?


 クマールさんってのは、ここ『クマさん食堂』店主熊似の親父さんのことだ。名前までクマだと聞いた時は思わず二度聞々してしまったよ。


 俺は素振りを中断してから親父さんと連れだって食堂の厨房に入っていく。

 それから下宿代替わりの仕込みを手伝うも慣れたもので2時間程で終わった。

 この後は、クマールさんファミリーの朝食にお呼ばれしてから街に繰り出す予定である。

 二日前に注文した装備を受け取ることになっているからだ。もちろん、注文した店は『バロット武具店』。店主はまだ不在だったから、今回もクリスに頼んでいる。俺としては店主よりクリスの方が腕利きだと思っているから願ったり叶ったりだけど。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「いらしゃい!ってユーマか。仕上がってるよ」


 クリスは客が俺だとわかると破顔して座り直した。


「じゃあ、見せてくれ」


「うん!ちょっと待ってね」


 彼女はニンマリとしながらカウンターの下に一度消えてから、ドサッと注文の品を出してきた。


【レザージャケット・クリスカスタム】――――― クリスによって自前のレザージャケットを冒険者用に色々と改造してもらった。動きを阻害しないことを第一に、肩・肘などの箇所に魔物の革を仕込んで補強している。胸と背中の防護用に前掛けが付いた二重構造になっている。


【レザーパンツ・クリスカスタム】――――― クリスによって自前のレザーパンツを冒険者用に色々と改造してもらった。金的箇所は魔物の革で、膝・脛には金属片を仕込んで補強してある。もちろん、動きを阻害しない配慮もなされている。、


【ケイフロッグのグローブ】――――― 鍾乳洞などに生息する蛙型魔物ケイフロッグの四肢素材を使用してとても滑りにくく仕上がっている。俺の注文で指抜きにしてもらった。中二病再発!とかじゃなくって、ゲームや映画の兵士が装備してたから…銃を扱うのに利点とかあるハズ… orz


【『イルリヒト』専用レッグホルスター】――――― この辺では、銃が珍しいらしくホルスターはどこにも売ってなかったのでクリスに剣用のベルトを改造して作ってもらった。右足用だ。



 おお~平凡な見た目だった俺の服が…なんというかライダースーツっぽい?!

 

 昇格試験の資格を得た次の日、俺は真っ先に『バロット武具店』を訪れた。目的は、装備を揃えるためでクリスと財布に相談しながら色々物色したんだけど・・・ぶっちゃけ店にある新人冒険者用の安価防具よりも俺が普段着ている外出用ジャケットとパンツの方が上等な物だと判明したんだよね。さすがシャルロッテさん製品!一般服なのに非常識…冒険者用の革鎧より丈夫な普段着って、意味不明です。

 これより良い物を買うとしたら最低金貨1枚はするらしく、とてもじゃないけど手が出なかった。そこで、クリスが俺の服を冒険者向けに改造してくれることを提案してくれた。材料は武具製作で出た材料の切れ端なんかを使用するからと銀貨5枚で懐にも優しい値段だったので迷いなくお願いした次第だ。

 ついでに銃のホルスターと滑り対策のグローブを注文。こちらは合計銀貨1枚で引き受けてくれた。…まあ、銃に関しては弾丸の材料費のコストが高いので、現在の収入では赤字にしかならないから使えてないんだけどね。


「さっそく装備していくかい?」


 クリスにRPGの装備屋の親父みたいなセリフを言われた。いや、着てみるけどさ。

 ちなみにこのセリフは、全武具店のエチケットマナーらしい。


 ・・・うん!完全にバイクのプロテクターだな。やはり赤いスカーフをって、ファンタジー的にはアリなのか?


「うんうん。すっごく似合ってるよ!かっこいい~」


 あれ?クリス的にはいいのか。ってことは、このセンスがアベレージ?


 笑顔で手を振るクリスと別れ、訓練を再開するため借家に戻ることにした。

 帰りの道中で俺をチラ見する人の視線が気になった。


 やっぱり、アリじゃないのかこの格好は!?


 …と後悔していたが、どうも違うらしい。

 こちらを窺っている冒険者風の男達の会話に耳を傾けてみると「マジかっけぇ~」「どこの店のだ!?」「ヒャッハー!イカスぜ!!」などの羨望の言葉だった。


 …やっぱり、アリなんだこの格好。



 多くの羨望の眼差しを全身に受けながら『クマさん食堂』に戻ってくると、店の前にボリスさんが立っていた。


「ボリスさん、帰って来てたんですか?」


「おう!今さっきな。で、宿屋の人にユーマの伝言を聞いてな…」


「そうなんですか。あ、俺の借家はこっちです」


 そのまま立ち話も何なので、さっそく裏庭の離れに案内した。

 とりあえず、お茶を用意してから近況報告とこれからの予定を話す。


「ふむ。試験前に鍛えるのは構わんが…多分、今のままでも合格するぞ?」


「え?そうなんですか」


「青色からの昇格試験では、戦闘能力のありなしが重要だからな。ゴブリンを倒せるくらいの実力があればOKなんだよ。お前ならおもいっきり蹴ればゴブリンぐらい十分殺せるだろ」


 少し難しく考えすぎたのかな。確かにシャルロッテさんの封印術式でステータスが大幅に下がったけど、それでも一般人に比べて十分高スペックというかステータスだけなら銀色三本の冒険者並だしな。だが、元が元なので自信が今一持てないんですよね。


「まあ、ステータスだけならそうですけど…。でも、ボリスさんも知っての通り、俺って戦闘技術ほとんど皆無なんですよ。シャルロッテさんの所で受けていた訓練に模擬戦もありましたけど、身体制御が目的の回避中心でしたし、剣術自体を本格的に習ったのはボリスさんに会ってからですよ。ですから、本当に不安なんです。・・・鍛えてくれませんか?」


「まあ、いいけどな。ただし、鍛えるからには厳しくいくぞ?」


「大丈夫です、地獄なら既に経験済みですよ」


「そ、そうだったな…さすがにアレよりは楽だな」


 ハイライトの消えた目で答える俺にボリスさんは苦笑いを浮かべていた。


 ずっと平凡だった俺だ。高い身体能力を手に入れたからって実戦に臨めるだけの自信なんて湧いてこない。それに昇格試験が良くても、これから先に待っているのは模擬戦じゃない…実戦なんだしな。


 ボリスさんは一ヶ月の間、俺を鍛えてくれることを約束してくれた。それから俺のギルドランク色昇格を見届け次第、帝都の家まで帰るそうだ。

 俺のために自分の予定を変えてくれたみたいで悪い気がしたけど、ボリスさん曰く「帰っても、国の面倒な仕事を押しつけられるだけだから気にすんな」だそうだ。







・・・国の仕事を停滞させてる俺って、捕まえられないよな?




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