第10話 初依頼
2章の執筆開始!
だけど、好きな作品の更新速度が激減したことにより主のテンションも駄々下がり中。
皆、オラに元気(評価ポイントorお気に入り登録)を分けてくれ^^
ゴォーン ゴォーン ゴォーン
朝の訪れを知らせる鐘の音が街中に響き渡り、外壁の向こうから顔を出した太陽が俺の顔を眩しく照らす。
ここボルドラというより都市と名のつく様な街では、このように時計台の鐘が朝・昼・夕の時間を教えてくれるそうだ。
この世界でも時間や暦なんかの概念はちゃんとしている。それも、元の世界と変わらないというかほぼ同じだ。1日は24時間で、1週は7日。そして、1年は365日であり12カ月である。
月の呼称は宗教や地方によっては違う呼ばれ方もあるようだが、数字で示せばどこでも通じる。ただ、曜日だけはファンタジーな世界っぽく火水土風光闇無と独特であるのだが。
「ふぁ〜!う〜ん、気持ちいい」
今、俺は欠伸を一つと背伸びをしながら冒険者ギルドへの道を早足で歩いていた。
昨日は『バロット武具店』を出たら予定通り宿屋に直行した。
宿は、冒険者ギルドの割引が効く所で一晩朝・夕食付きで銅貨60枚のところを銅貨50枚で泊まることができた。部屋は狭いが清潔で、食事も朝・夕ともに満足できるものだった。
冒険者ギルドの割引ってのも案外使えるものだとわかったのは結構大きい。冒険者は何かと出費が多い仕事だと聞く、なるべく積極的に利用して節約に励むとしよう。
一日目はそんな感じで終了したわけだが、なにはともあれ本番は今日からである。冒険者稼業の本格始動!気合を入れて頑張る・・・はずだったんだが、その最初の一歩で躓いてしまう俺なのである。
いつもより早めに起きて部屋から朝食に降りて来ると宿屋の女将さんに「今日はお休みかい?」と声をかけられた。俺が愛想笑いで「今日が初日ですよ」と答えると怪訝な顔をされたので、理由を聞いてみると俺みたいな新人冒険者はこの時間帯にはギルドに行っているのが普通なのだそうだ。冒険者ギルドに寄せられる依頼は基本早い者勝ちなので、割りの良い依頼はすぐになくなってしまうとのこと。・・・知らなかった orz
まあ、それで朝食を後回しに宿を飛び出して、ギルドに急ぎ向かっているわけですよ。
ギルドまでの道中は、店の準備を終えた露天商が客引きをしたりと早朝だというのに活気に溢れている。そんな喧騒の中で、俺はというと同じように出遅れた冒険者らしき人たちを見かけては安心していたりした。うん、完全にダメな人だね…わかってるよ。
昨日、登録したばっかりなので冒険者ギルドまで迷わずに来れた。扉を開けて中に入ると新人だろう若い冒険者を中心に掲示板の周りが混雑している。
うわーやっぱ出遅れた。…って呑気に見てる場合じゃないよな!
すぐに俺も人が団子になっている所に体を捩り込んで、依頼書の見える位置をなんとか確保する。
「えーっと…なになに……ふむふむ」
【倉庫整理:報酬銀貨1枚】
【薬草採取:(一株に付き)報酬銅貨30枚】
【引越しの手伝い:報酬銀貨2枚】
【荷物の配達(三日間):報酬銀貨3枚】
【食堂の手伝い(昼):報酬銅貨60枚・賄い付き】etc.
依頼は、やはり雑用系が大半を占めているけど採取系もいくつかあった。昨日、残っていた依頼よりは実になりそうなものも多い。問題はどれにするかだが・・・元の世界でも経験ある食堂の手伝いにするかな、昼時だけみたいだし。
俺は掲示板から目的の依頼書を一枚剥がすとまた人団子の間を掻き分け受注窓口へ向かう。
「空いてるカウンターは…お!あそこが空いたな」
空いてるカウンターを探してきょろきょろしていたら、ちょうど目の前の所が空いた。
「すいません、これをお願いします」
「はい。依頼の受注ですね~わかりました。あら?貴方、昨日の新人君じゃない」
差し出された依頼書を確認して顔を上げた受付嬢は、ギルド登録の担当をしてくれたカリナさんだった。
「カリナさんでしたか、昨日はお世話になりました。」
「うふふふ。そんなに畏まらなくてもいいですよ~気軽にカリナお姉ちゃんと呼んでくださいよ」
「え!?はい?」
「良いわねー初々しくて。えっと依頼の受注でしたね、少し待っててね」
からかわれたらしい。カリナさんって実は小悪魔なお姉さんタイプ???
彼女は俺の持ってきた依頼書を受け取り、サインして依頼書を戻してきた。
「雑用系の依頼を受けるのはもちろん初めてだと思うから説明するわね。依頼主の所にはギルド職員のサインがある依頼書を持って行き、自分が依頼を受注したことを証明したうえで仕事に従事するのよ。で、終わったら依頼主の持っている完了証明書を貰ってギルドに戻ってきたら依頼達成よ。完了証明書がないと依頼達成と認められないから注意してね〜これが、お店の場所よ。それじゃー初依頼、頑張ってきなさい!」
「ありがとうございます。いってきます!」
俺は手を振っているカリナさんを背にギルドを出た。
お店に行くまで十分に時間があるから、一度宿に帰って朝食を食べることにしよう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ジャアァァ ジャアァァ カンッカンッ タッタッタッタッ ジュージュー
「一丁上がり!野菜炒めとポークステーキできたよー持って行って!!」
「はーい」
俺は一心不乱に料理を作っている。
飲食店での厨房担当のバイトと『モテモテ料理男子本』で自己研鑽し、執事神セバスさん指導の下で鍛えられた俺の料理スキルは、もはやプロ並みだ。 振るう包丁は腕の延長として自在に扱いこなし、鍋の炎と一体になり御せば・・・・・・完璧な料理がホラッ!もう出来上がった。
「鳥と野菜の黒胡椒炒め三人前あがり!一つはピーマン抜きだから間違えるなよー」
「坊主!野菜がそろそろ無くなりそうだから切っておけよ。おい!シェリル~チキンステーキのハ二ーマスタードソースあがりだー持ってけ!!」
「「はーい」」
投げかけられた指示に返事を返し、すぐさま野菜に向き直る。
ザクッザクッ タタタタタタ ザクッザクッ タタタタタタ ドサッ
野菜を切り刻むマシーン…そうだ、俺は今、包丁と一心一体化している!
ザクッザクッ タタタタタタ ザクッザクッ タタタタタタ ドサッ
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ふぃーっ、終わった~疲れた~。
厨房で鍋や包丁を振るうこと約3時間、俺は客足の無くなった食堂のテーブルに突っ伏していた。正直、食堂の手伝いを舐めていた。あそこは戦場だ。
昼少し前に依頼の食堂に行ってみると熊似の親父さんと女将さん、二人の娘のシェリルの三人家族で経営しているお店だった。普段は親父さんと女将さんの二人で厨房を回しているのだが、女将さんが寝込んでしまい人手が足らなくなったらしい。本来ギルドから派遣されてくる人に頼む予定だった手伝いの内容は、皿洗いやウェイターなどだったのだが、俺が料理をできるとわかるや否や試しに作らされ、親父さんの「合格だ!」の一声で厨房担当になってしまった。しかも、この店はボルドラでも人気の店らしく開店と同時に満席状態。元の世界でも厨房のバイトを経験済みだった俺だが、忙しさの度合いが違った。あまりの忙しさに途中から変なテンションになってた気がする。
「お疲れ様~はい、これ賄いね」
コトっと笑顔で賄いを持ってきてくれたのは、この食堂の看板娘シェリルである。賄いのメニューは、肉野菜炒め大盛と卵スープに黒パンだ。
「ありがとう。腹減ってたからホント助かるよ」
「おいおい、助かったのはこっちのセリフだぞ!母ちゃんが風邪で寝込んじまって、困ってたところに、本職並に料理ができる奴が来てくれたんだからな。坊主がいなかったらと考えるとゾッとするぞ」
熊似の親父さんが笑いながらバシバシ背中を叩いてくる。痛っ!この親父、腕力まで熊似である。
「ち、ちょっと!お父さん、ユーマが痛がってるわよ。」
「おおう、すまん。がはははっ」
豪快に笑う親父さんに苦笑しながら賄いを食べ、完了証明書を貰う。親父さんには「正式に働かないか?」とラブコールされるほど満足してもらったみたいだし、最初の仕事としては合格点なのではないだろうか。ただ、店を出る時の妙に笑顔で手を振る親父さんが少し気になったけど。
ギルドに戻るとカリナさんがいたので、そこで依頼書と完了証明書を渡し報酬を受け取った。
「お疲れ様。初めての依頼はどうだったかしら?」
「大変でした。なんとか満足していただけたみたいですけど」
「そう、よかったわね。まだ時間は早いけど、もう一つぐらい依頼をこなしていく?短時間で済む依頼を見繕ってあげるわよ」
「いいえ、今日はこれまでにします。明日は採取の依頼をしてみようと思ってますから、色々と道具を揃えないと。あ!おすすめの道具屋とか教えてくれませんか?」
「いいわよ~少し待っててね。道順を紙に書いてあげるから。」
カリナさんにサラサラと書いてもらったメモを貰い、ギルドを後にした。
教えてもらった道具屋は南門のすぐ近くにあるようだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
目的の道具屋に着くと元の世界の雑貨屋という感じの店だった。
カウンターには、恰幅のいいおっさんが座っているだけで俺の他に客もいない。
「ちょっといいですか。採取用の道具とか…新人冒険者に必要な物を銅貨50枚ぐらいで見繕ってもらいたいんですけど?」
「うん?……坊主は冒険者なのか。え、えーっと少し待ってな」
少し気になる間があったが、どうせまた子供とか勘違いされたんだろうな。初依頼の熊似の親父さんにも勘違いされたしな、もう慣れました。
しばらくするとおっさんが袋を一つさげて奥から戻ってきた。その袋をドサッとカウンターに乗せる。
「新人ならこの袋に入ってるもんで十分だな。中には中古品も混ざってるがまだまだ十分使える品だから安心しな。値段もギルド割引込みの銅貨50枚で収めたぞ」
カウンターに乗せられたのは一般的冒険者に必須とされている物の詰め合わせセットだった。
袋の中身は『ロープ、魔石製ライター、採取・解体用ナイフ、布の袋三つ、携帯食料3食分、水筒用革袋、傷薬、解熱剤、痛み止め薬、止血剤、針、糸、包帯』といったラインナップである。
最初は最低限の物でかまわないからこれでいいな。
後はお金が貯まってからだな。
「じゃあ、これください」
「おう。あと外側の大袋はサービスだ!またよろしくな」
笑顔のおっさんに料金を支払い、道具屋を出る。
日はもう少しで夕暮れになるかどうかの高さだ。宿屋には三日分先払いしてあるので、ゆっくり露店を散策しながら帰ることにしよう。
その帰り道の途中で美味しそうな香りを漂わしている串焼き店があり、一本銅貨1枚だったので10本も買ってしまった。こういう露店で売ってるお店に弱いんだよな〜俺は。だが、これで俺の所持金はゼロになった。
明日からもう稼ぎまくるしかないな~でも、背水の陣になってかえっていいかもな!
焼き上がったばかりの串焼きを両手にどこかスッキリとした思いが自然と漏れてくる。
そして、俺はすっかり軽くなった財布を手で弄びながらまた宿への道を歩き出した。
ちなみに宿の夕食の献立は串焼きだった…………かぶったぁぁああ orz
お読みいただきありがとうございます。