魔法
氷の滅慕の世界では、通常目に見えない魔力の流れが存在しています。大気中、地中、海中、宇宙のあらゆる場所に、魔力は存在します。
魔力は通常の物質と同じく、重力の影響を受けます。とても微小な粒子なので、自然界に存在する魔力はほとんどの物質を透過します。そういった性質から、大気中よりも地中の方が密度が濃く、これを地脈などと呼称します。
すべての生き物は自動的に魔力を体内に貯めますが、力が強い者ほど多くの魔力を取り込めます。
保有している魔力は、傷などを負うと血の流れとともに体外へ漏れ出ます。また、魔力は魂を構成する物質でもあり、あまり多量に失うと衰弱してしまいます。血以外の体液にも魔力は含まれていますが、そちらは微少です。
魔力を保有出来る容量には個人差があり、許容量の少ないない者があまりに大量の魔力を摂取すると、限界許容量を大きく越えてしまい、命に関わる重篤な状態となります。ただし、限界を越えて摂取すると少し最大許容量も増えます。
また、血とともに魔力を摂取しても、食事と同じで100%吸収出来る訳ではありません。これは魔族が、倒した相手から魔力を直接体内に取り込んだ場合も同じです。
魔族と神族、そして一部の竜族は、魔力の扱いに優れ、呪文や触媒の助けを借りず瞬時に魔法を発現します。
それ以外の種族は、呪文や触媒、なんらかの呪術的な動作=魔術という過程を経て、魔法を行使します。
これらは魔力を物理的な力へ変換するさいの効率に原因があり、魔族などは非常にその変換効率に秀でているといえます。
魔力は、自然界に存在する地水火風などといった物質へ変換することにより、大きな効果を発揮します。また、それらに魔力をまとわせることにより、さらに大きな力を生み出すことが可能です。
作中に出てくる~~の精霊は、魔法的な生物ではなく魔力(霊子)により精製された力の総称。登場人物達は魔法のシステムを熟知しているわけではないので、魔法を行使するさいに精霊を召喚する、といった言い回しをすることがあります。
魔力を物理的な力に変換する場合、生成する物質の四つの形態(固体、液体、気体、プラズマ)により難易度が変わってきます。
魔力の強さはある程度遺伝し、魔法を扱う者の性格や血統により得意とする系統が異なります。それ以外の系統は扱えないということもありませんが、得意な系統の魔力は利き手のようなもので、他の系統の扱いは非常に不器用なものとなります。これは長期間の修練により、ある程度は克服可能です。しかし、威力、精度ともに見劣りしますので、生死のかかる戦いなどでは、余程の理由がなければ己が得手とする系統の魔法を使います。
中央の魔王、一早などは地と風の両方を、魅月は精神魔法とその他に分類される魔法に熟達しています。
魔術という過程を踏み魔法を行使する場合、系統の得手不得手でそれほど顕著な効果の差はでません。
◇放出型の魔法
地の属性
主に石や土などといった固体物質を生成する魔法。
石の矢や槍、岩の塊などを射出して攻撃手段とする。壁の形に生成することも可能なので、この系統を使う者はかなり固い。
攻守に優れ、制御も楽で比較的扱いやすい。
魔力の強い者は、地割れを起こしたり小規模の山を生成したりすることも可能。意外と派手。
藤堂や毘前などがこの系統。
水の属性
主に液体を生成する魔法。
固体が液体に変化しただけで、ほとんど地魔法と同じような扱い方がされる。
守りよりはやや攻撃に秀でる。
傾国などがこの系統。
火の属性
主に炎を生成する魔法。
魔力で分子運動を加速させること自体は難しくないが、温度などの細かい制御は困難。
灰塚や茨木などがこの系統。
風の属性
主に気体を生成する魔法。
単純に圧縮空気等で攻撃する場合は、とても扱いやすい。反面、気圧の変化等、気流を制御する場合は扱いが非常に困難。
高城やウルスラなどがこの系統。
雷の属性
電磁気力を操る非常に強力な魔法。
扱える者は少なく、制御も困難。
雷撃等による単純な攻撃手段として用いられることが多い。磁力を操り、自在に物質へ影響を与えられるほどに制御出来る者は数少ない。
戦禍や雷鴉がこの系統。
氷の属性
低温を生み出す魔法。分子運動を低下させる他に、気圧の変化等で冷気を発生させることも可能なので、風の魔法にも通じる。
雷の魔法と同じく、扱える者は少なく制御も困難。
アルフラや白蓮がこの系統。
光の属性
ほとんど熱量を発生させず、純粋な光や衝撃を生み出す魔法。
ものによって扱いやすさは千差万別。
フレインがこの系統。
その他の属性。
物質を振動させ分子結合の崩壊を引き起こしたり、魔力を物質に変換させず、直接攻撃の手段としたりなど種類は様々。
光系統の魔法に近いものもあり、この辺りは魔術師達が体系化した書物などでもあまり細分化はなされていない。
魅月や口無、戒閃がこの系統。
◇神聖魔法
かつてレギウス神族の一柱、医神ウォーガン等により伝えられた魔術を基礎に発展させた回復魔法。
初歩である軽傷治癒から最高位の快癒までいくつかの種類がある。
あくまで自然治癒力を上げる魔法であり、部位欠損や死滅した細胞を蘇らせることは不可能。
主に神官達がその知識を秘匿、独占しており、各宗派により様々な研究がなされている。遠距離や範囲に効果を及ぼす治癒魔法はその成果。
解毒の魔法は毒の種類により使い分け必要で対応が難しく、主に免疫力を増幅させる魔術が代用されている。病気などの治癒もこれに同じ。
◇暗黒魔法
レギウス神教の教義において異端とされる魔法の総称。
法の神であるレギウスの倫理に反する魔術であり、一般的には知識の所有すら認められていない。
死者の魂魄などを屍体に宿らせる死霊魔術。毒や疫病、腐敗等をもたらす魔術がこの分類にあたる。
ただし、もともと腐敗の魔法は、土壌を豊かにし、作物をより多く収穫するため地母神ダーナによりもたらされた魔法なので、用途によっては使用を黙認している宗派も存在する。この辺りはレギウスの信徒達の間でも意見が割れている。
カダフィーやジャンヌがこの系統。
◇身体強化魔法
この系統は呪文や触媒の補助がなくても使用が可能。
名称そのまま身体能力を強化される魔法で、単純な膂力や瞬発力の向上から、集中力や鎮静、恐慌状態からの回復などといった、精神に影響を及ぼす効果も得られる。
代謝や免疫力の向上といったことも可能で、治癒力を増すことも出来るが、これは神聖魔法に準じる。ただし、高位魔族は神官の扱う治癒魔法より、余程大きな回復効果を引き出せる。
◇精神魔法
生物の精神状態を操る魔法。
非常に強力な魔法になると、対象者の自我を完全に奪うことも可能。
竜族や獣人族の咆哮、呪術的な力を持つ視線などによってもこの効果を得ることが出来る。
◇結界魔法
結界、封印、障壁などを生成する魔法。
結界は一定範囲内に特定の効果を現す。魔力変換の疎外、弱体化、気配の隠匿、意識の拡散など用途は様々。
封印は魔法の発現自体を抑制するものであり、範囲は狭いが結界よりも拘束力が強い。
障壁は圧縮した魔力により物理、魔法、双方を遮断する壁の生成。
魔族や神族は、障壁を任意に発生させることが可能。扱いに長けた者は、障壁に結界の効果を付与することも出来る。
エルフ族は結界魔法を人族の魔術師よりも発展させている。
◇付与魔法
器物に魔力を付与する魔法。
ほとんどは一時的に魔力を付与するに留まるが、高位の魔術を用いることにより永続的な効果を得られる。それらの知識は、主に古代人種により発展させられたものだが、その衰退により現在ではほとんど失われている。数少ない古代人種の末裔達は、不完全な形ではあるがそれらの知識を継承している。また、書物などでも古代人種の知識は残っているが、とても稀少な品とされている。白蓮も若干ながら付与魔法の知識を有している。
神族の中には古代人種に匹敵する付与魔法を扱う者もいる。