世界
本作品の世界は、大昔の大災厄と呼ばれる戦乱で、地上を治めていた神族が、魔族により一掃されてしまった大陸を舞台としています。
この世界では人間の他にも、様々な種族が存在しています。その中でも大陸の半ばを支配する魔族は、個体数こそ多くはありませんが、ヒエラルキーの頂点に位置しています。
また、この世界には魔法が存在します。ただし、人を蛙に変えたり、かぼちゃの馬車を魔法で出したりするような、あまりにも物理法則から外れた事は出来ません。
せいぜい遠くの物を見たり、炎を出したりするような、現実の科学でなしえる、もしくは将来的に可能だと考えられる物ばかりです。
有力な魔法使いでも、亜人種や大型の獣を殺傷するような魔法を行うには、かなりの力を必要とします。
ただし、魔族や神族といった存在は、並外れた魔力を持っており、天変地異に匹敵するような魔法を行使する者も存在します。
◇地理について
舞台となる大陸は、ほぼユーラシア大陸と同じ形。
山や河などの地形は異なるが、日本に相当する島も存在している。
大陸の東側半分近くが東方魔族の領域。
本作での出番はほとんど無いが、西方魔族は大災厄で被害を受けて以来、戦乱などが原因で人口が徐々に減りつづけている。また、数の減少に伴い版図を狭めつづけ、現在では大陸西端部のわずかな領域を生息地としている。
人間の国家は大陸中央に集中し、その周辺に亜人種の棲息域が散在。また、国境間には、領土を原因とした戦乱を緩和するため、どの国家にも属さない緩衝地域が存在する。
共通言語が存在しており、すべての亜人種は意志の疎通が可能。この言語は神族により伝えられたものだとされている。
種族特有の方言に近いローカル言語も存在する。
大陸の交通網となる街道は、人間の国家以外ではあまり整備されていない。また、都市部から離れるほど敷石の状態が悪く、辺境においては馬車での通行はかなり困難。
作中で語られる西方大陸=南北アメリカ大陸に相当。
南方大陸=アフリカ大陸に相当。
◇国について
レギウス教国
位置的にはロシア連邦西部にあたる寒冷地帯。
国土の七割ほどが森林と農耕地に占められており、木材が豊富な半面、鉱石や石材は不足しがち。そのため、民家などは主に木材と土を固めた造り。
南部のアルストロメリア地方は穀倉地帯となっている。
神族の王、レギウスを主神とする神殿が強い権力を持つ宗教国家。
教王が元首を勤める立憲君主制の国でもある。
神官は国から保護されており、神殿で行われる商いはすべて国有。
レギウス教国成立以前には、地母神信仰があった名残から、女性の地位は比較的高め。また、レギウス神族の中には愛の女神がおり、主要神の一柱とされ、その神殿では愛を売る商売がなされている。そのため、娼婦を卑賎の職業と考える風習はなく、むしろ愛を分け隔てなく与える神の信徒として敬意を払われている。
かなりの利潤を上げており、財源としては非常に優秀。
主要都市
王都カルザス
城塞都市ガルナ
サルファ
アルストロメリア等
魔術士ギルド
大導師ホスローをギルドマスターとする魔術士達の組合。
百二十年前、レギウス教国に進攻した魔人凱延を撃退した事から、魔族との戦いにおいては絶大な発言力を持っている。
神官達とは対魔族といった点で協力体制を取っているが、決して友好的ではない。ギルド内では布教活動に熱心な宗派や好戦的な神官達を、狂信者として嫌う傾向がある。
魔術士ギルドの序列。
大導師>導師>導士(緋色の導衣)>術師(黒のローブ)>術士(灰色のローブ)
導師は二人。導士は四十名程。導士以下は、それぞれ導衣やローブの色で見分けがつく。
導師の一人を宮廷魔導師とし、その補佐役数名と共に王宮へ出向させている。
レギウスの国政においては神殿に次ぐ強い影響力を持ち、他国にも複数の支部が存在しており組織力も高い。
神殿
神王レギウスと十一柱の主要神族を崇める聖職者達の集まり。
神王レギウスの大司祭が、レギウス神教の頂点に位置している。
都市部には各主要神の神殿があり、司祭がその運営を行っている。主要神の数だけ宗派が存在し、それらは各司祭枢機卿が統率している。また、他国の同宗派にも強い影響力を持つ。
国主である教王が退位、崩御した場合、大司祭と司祭枢機卿達により新しい教王が選任される。そのため神殿はレギウス国内において、非常に強い権勢を誇っている。
極々まれに、神託を通じて神王レギウスにより、新しい教王が指名されることもある。
◇ロマリア王国
大陸中南部に位置する農業大国。
高温多湿な気候で、初夏には一月ほどの雨季が訪れる。
王族が強い権力を持ち、女系支配が長くつづいている絶対王制国家。
魔族の領域と国境を接しているため、同様の立場にあるレギウス教国とは、協力関係を結んでいる。
肥沃な農耕地帯を抱えているため、動員兵力も高い。
三千年の間、単一王朝による支配がつづく大陸最古の王国。
ロマリア南部の山脈には古竜の霊を奉る祠があり、守護神として広く信仰されている。ただし、竜族は大災厄により数が激減しているため、実際に竜を見た事のある者は極めて少ない。
竜神として信仰される古竜の霊は、もともと大災厄期に古代人種と共に西方大陸からやって来た皇竜属と呼ばれる外来竜種。
神族との戦いに破れた古竜が、瀕死の状態で飛来し、地母神の巫女により保護されたことがロマリア王国の建国につながっている。
以来、巫女の血筋が竜神の祭祀とロマリアの王権を受け継いでいる。
◇ラザエル皇国
レギウス教国の西に位置する専制君主制の国。皇王が国主。
国境の東側はレギウスとロマリアに接している。レギウスとの間にある中立地帯の鉱山を巡り、対立することもしばしば。
レギウス神教の信者が多いが、国教というわけではない。
国政は軍事寄りで軍部の権勢が比較的強め。
西方にはエルフの集落が散在。関係は良好。
◇エスタニア共和国
ロマリアの南西に位置する国。
宗教に関しては寛容で、様々な信仰が根付いている。やはりレギウス教徒が多め。
南方から北西に伸びる山岳地帯はドワーフの王国になっている。
◇海洋都市国家群
ロマリアの南に点在する多くの都市国家の総称。
漁業と海運で莫大な利益を上げている。
細いながらも魔族の領域南部との交易がある。
他国と比べると住民達の信仰心は薄く、宗教は様々。中ではレギウス神族の一柱である商業神が人気。
たまに人魚が貿易船にいたずらをするので、商人にとっては結構迷惑。 人魚達は悪さもするが、たまに溺れた人を助けたりもする。でも漁船には近づかない。網にかかると食べられると思っているらしい。ちょぴり怖がり。
◇魔族の領域
大陸の東西に領域があり、西方に住む魔族は、ごくごく少数。
対して東方魔族は数も多く、その領土も大陸のおよそ四割を占有する。
中央、北部、南部、東部の四つの地域に分けられている。
第七代の皇帝である戦禍を頂点とし、各地に十五人の魔王が存在している。
魔族は非常に好戦的で、中央以外の魔王の間では常に争いが絶えない。
各地域には、年功序列で盟主と呼ばれる魔王達のまとめ役が存在するが、すでに形骸化しており、あまり敬意を払われてはいない。
魔族の領域各地には、オーク、コボルト、オーガ、トロールといった亜人種が生息している。これらは魔族に隷属しており、極少数ではあるが人族も存在している。
中央の魔王は、皇帝を補佐する役目を任じられている。
独自の領地は持たず、三王と黒エルフの女王により、中央の広大な領土を共同統治している。
三王同士の序列は雷鴉の一族が代々盟主を勤める。
龍の羽と尻尾を持つ特殊な魔族の亜種が存在。
黒エルフが住む森林には、グリフォンなどといった魔獣が棲息している。
黒エルフの森にはローパーと呼ばれる触手生物も住んでいるが、本作での黒エルフは非常に強力な魔力を有しているため悪さはしない。しても普通に返り討ちです。ざんねん。
南部には夢魔、東部には鬼のような姿の魔族が生息している。
領地と領民を持たない放浪の魔王が東部と南部に存在。
魔族のしきたりや因習は、約四千数百年前に天上の神々を滅ぼした初代皇帝(災厄の主)が定めたとされている。
主な魔族のしきたりと禁忌。
・定められた領域の外に出てはならない
・定められた領域の外に領土を持ってはならない
・魔王殺しを禁ず
・弱者への虐殺を禁ず
これらは大昔の規則なので、すでに形骸化している。そのため執政者に都合よく解釈されて利用される事が多く、あまり守られてはいない。
しかし、初代皇帝への畏怖心は強いため、精神的な拘束力はそれなりにある。
新たな皇帝が誕生すると、一時的に禁忌が解放される事がある。ただし、伝統を重んじる一部の魔王達からは、反感を買うことが多い。
戦禍は七代目の皇帝。
先代は五百年ほど前に、やはり他種族に対し宣戦布告を行おうとしたが、魔王の裏切りにあい弑逆された(と思われている)。
ここから先は、本作の千数百年後を舞台とした、別のお話の中核となる設定であり、世界観は共有していますが、「氷の滅慕」ではあまり重要ではありません。
この世界で魔力と呼ばれているのは、霊子という人類未発見粒子。暗黒物質の正体でもあり、観測する事がほぼ不可能なほど微細な粒子。
この粒子の発見により、生物には固有の魂(宗教的な魂とは全くの別物)のような物が存在する事が分かり、正式に霊子と名付けられる。
魂魄は、生物の死により肉体から遊離し、数十~数百年かけて大気中の霊子と同化するため、この世界では、転生という概念は完全に否定される。また、一度遊離した魂魄は、肉体と結び付くことはなく、死者の復活も不可能。
魂魄を無理矢理肉体に留めようとすると不死者になる。




