脱出艇からすすむ
更新遅くてすいません<(_ _)>
《おい》
《おい、お前が俺のご主人か?》
脱出艇の中で眠っていると不意に声が聞こえてきた。
《おい、聞いてるのか?》
「だれだ」
俺は狭い脱出艇の中を隅々まで見渡すが、自分以外に人間が乗って居ないのを確認して疲れから来る幻聴か?と思い目を閉じようとした。
《おーい、無視ですか?》
……幻聴……では無いっぽい。
「だれだ」
《お前の右手の薬指を見ろよ》
右手の薬指?……デバイスか。
脱出艇に乗ってすぐ、無意識に七色に輝く指輪型の万能型デバイスを嵌めて居た事を思い出す。
右手の薬指に嵌っている、教官から渡された万能型デバイスを見ようとして固まってしまう。
……あれ?指輪がない。
「指輪が無くなってる」
《無くなった訳じゃねえよ》
「どう言う事だ?」
《俺は指に嵌めることでその人間と一体になるように作られてた》
「要するにどう言う事だ」
《だから、お前が指輪を嵌めた事によって、お前の体と俺が融合したって事だ》
「マジですか」
《良いじゃねえか、すげえ事だぜ、俺は風の聖霊のアリエルだ、お前は?》
「俺は……エイル」
《エイル?男みたいな名前だな》
「……」
《ん?お前の魂の色は男っぽいな?》
「そんな事解るのか?」
《ああ、でも気にするな、直に女っぽくなる》
「どう言う意味だ」
《そのまんまの意味だよ、魂は体に引っ張られるもんだ、今は男っぽい魂の色してるが、その内女の色になる、体がそんな女らしいんだから絶対だぜ》
「……そうか」
《なんだよ、女っぽくなるのが嫌なのか?》
「じつは……」
俺はアリエルに自分は記憶がエイルで体がフリーンである事を語った。
「……て言う事なんだけど」
《なるほどな……うん》
「何か気になる事でもあるのか?」
《多分だが、猶予は30日ってとこか》
「何の猶予だ?」
《さっき魂は体に引っ張られるって言っただろ》
「ああ」
《お前の魂ってエイルの物かフリーンの物かどちらか解るか?》
「え?」
確かに、記憶はエイル、体はフリーン、魂は?そもそも魂ってなんだ?記憶……では無いよな、しかし体でも無いよな……でも俺はエイルだ、体がフリーンでもエイルだと言い切れる。
と言う事は魂はエイルの物だと言えるのか?
「多分……エイルか?」
《正解》
「だと問題があるのか?」
《問題大ありだぞ》
「どんな問題だ?」
《お前の体はフリーンだ、記憶はエイルのだが脳はフリーンだ、舌だって心臓だって肝臓だって指だって髪の毛だって、兎に角、記憶と魂以外はフリーンだ》
「ああ」
《と言う事は、考え方とか好きな食べ物とか様々な事がフリーンと同じになってくる》
「なんでさ」
《脳の構造はフリーンがこれまで生きてきた構造だし。食べ物の好み、用は好きな味もフリーンの舌で感じ脳で判断される。考え方だって脳が判断するのだから、結局フリーンの物になる》
「それとさっき言ってた猶予の関係は?」
《今はまだエイルの記憶の経験が勝ってエイルっぽさが出ているが、30日位でフリーンの体が勝ってエイルっぽさが消えるって事》
「それが魂が体に引っ張られるって事か」
《そう言う事だな》
「そうか……」
《今のうちに覚悟しとけよ》
「何の覚悟だよ」
《その内、エイルは消えてフリーンになるって事さ》
「ならないさ、俺はエイルだ、本国に戻ればクローン技術で作った空の男の体に記憶を移して、フリーンの体はフリーンの御両親に帰す」
《……そうか、まあいいさ、俺はお前の今の体と混ざってる、お前がこの体に居る間は俺の力を貸してやるさ》
「ああ……よろしくなアリエル」
《よろしく、フリーン》
「……わざとか?」
《いや、男より女に使われたいからな》
「俺はエイルだ」
《細けえな、30日後にはフリーンになるんだから良いじゃねえか》
「ならないよ」
《はいはい》
「……はぁ」
深いため息をつきアリエルの言葉を考えてみる。30日後には俺はフリーンになると……それを防ぐには30日以内に本国に帰らなきゃならない。それには脱出艇が何時発見されるかが重要になる。と言うか無理っぽい、かなりワープで進んで来ていたと思う、コールドスリープしていたから解らないが30日で帰るのは無理じゃないか?とりあえず脱出艇の中にあるコンピューターで計算してみる。脱出艇のコンピューターから女性の声が聞こえてきて計算してくれている。脱出艇にも高性能AIが積まれていた事にちょっと安心する。自分でも計算できるが絶対の自信はないしね。10秒ほどの沈黙の後、コンピューターの画面に計算結果が表示された。
うん、絶望的だ。今の脱出艇の位置から通常の宇宙航行艦で本国まで約35日かかる、高速艇でも25日、無理だ。高速艇が今すぐ脱出艇を発見してくれないと……その可能性は限りなく低い。
エイルが絶望に沈んでいたその時、脱出艇が大きく揺れた。
「何だ?」
『注意してください、攻撃を受けています』
高性能AIが冷静に答える。
「なに?どう言う事だ」
『攻撃を受けました、攻撃してきたのは、所属不明の小型艦です』
戦艦に侵入してきた賊が追ってきたのか?
「反撃は出来るのか?」
『無理です、本脱出艇に武装は積まれていません』
「逃げ切れそうか?」
『無理です、近くの惑星への不時着を進言します』
「近くの惑星は?」
『惑星スノッリです』
「スノッリ?」
『近年発見された惑星です』
「危険は」
『不明です、一応人型の生活を確認しています』
大きな爆発音とともに脱出艇が大きく揺れた。
「不味いな、考えてる暇はないか、スノッリに向かってくれ」
『了解しました、揺れに注意してください』
脱出艇の椅子に座りなおし、ベルトで体を固定した瞬間に後方に引っ張られるように体が椅子に押し付けられた。加速して一気に惑星スノッリに向かうようだ。逃げ切れないと言っていた以上、途中で落とされるかもしれない、祈る事しかできない。無事に不時着できても、追ってきた賊と戦闘になるかもしれない。不安だが考えても仕方ない、一応アリエルも居るし、聖霊の万能型デバイスなのだから、かなりの力があるだろう。
《まかせろよ》
「心の声に答えるなよ」
《俺はお前の中に居るんだぜ、俺の声は基本お前にしか聞こえないし、お前の考えてる事は基本俺に筒抜けだ》
マジで。
《マジだ》
便利だけどプライバシーが。
《気にするな》
「気になるって」
《兎に角、戦闘になったら任せろ、聖霊の力を見せてやるよ》
「ああ、そうなったらよろしく」
脱出艇が加速の衝撃以外の、被弾による衝撃が酷なくなり、高性能AIの声が聞こえてきた。
『大気圏に突入しました』
すると今度は細かい横揺れが始まった。多分大気圏に突入した後、大気との摩擦によって期待が揺れているのだろう、結構怖い。しかし大気圏突入時には戦闘機動はむりだ、一先ず助かった。あとは着陸後か、追ってきてたら戦闘か、武器は無い、しかしアリエルの力はある、それで何処まで出来るか、だな。ここで死ぬ訳にはいか無いから気張るしかないか。
自宅PCが壊れた……(p_-)
修理が終わるまで、実家に帰って更新してます。
誤字脱字見返してから投稿してますが、見落としがあるかもです<(_ _)>