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ひと夏の記憶  作者: まなつか
第一章 「二人の出会い」
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第二話 「駆け上がった先」《美咲》


 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!

 私はそう叫んでいるのかつぶやいているのかわからないほどに混乱していた。そして無我夢中で死に神から逃げるように階段を上っていく。

 カツカツカツ――私の足音が階段に響く。

 はぁはぁはぁ――私の荒い息づかいが耳にまとわりつく。

 私は階段を上りきって屋上のドアにたどり着く。――ここはいつも閉まっているから開くはずがない。私は少しの可能性にかけてドアを引いてみたが、やはり開かなかった。

「うぅ……!」

 私は急いで一階下へ向かった。下には行きたくなかったがそれしか方法はない。

 途中で医者に捕まってしまった。

「おい、どうした?」

 川本だった。

「探したんだぞ。早く病室に戻れ」

「い、いやだっ! 私はまだ死にたくない!」

「死なねえっての! いいから戻れ」

「やだやだやだ!」

「だーっ! うるせえ。ここは病院だぞ」

「……ぅ……」

 私は腕を捕まれていて逃げられなかった。そこで何とかして逃げだそうと頭をフル回転させる。

 ――そうだ。

「あ、蒼井さんだ」

「えっ!?」

 いまだっ! 私はぱっとそこを離れると階段の方へ戻っていった。そして迷った末、屋上へ向かうことにした。

 川本も馬鹿な奴だ。蒼井さんだけにでれでれして。男ってホント単純。高校生(本当ならば)にも扱える簡単さね。

 しかし、屋上のドアの前に来てさっきのことを思い出した。しまった、ここ、開いてないじゃん。だけど下からは川本がコツコツと足音を立ててやってきている。

 私はそっと屋上のドアを再び引いてみた。すると、先ほどとは違ってすーっと開いた。私は怪しく思って再び閉めた。すると、今度は下の方からこちらの方へ向かってくる足音が聞こえた。川本かっ!? 速いな。

「おい! 美咲!」

 ええい!

 私は勢いよくドアを開けた。そして隙間にするりと身体を滑り込ませてバタンと閉めた。

「誰っ……?」

 私が声に驚いて顔を上げるとさっきぶつかった少年だった。

「えっ……?!」

 私も声を上げてしまった。そして彼の姿を見る。身長は180くらいだろうか。顔はそこそこ。なんか、傷だらけ。

「あの……どうしたの?」

 彼が訪ねてきた。

 私は迷った。だけど、迷う暇もなかったようだ。川本が扉を開ける。

「おい! ――って何で開いてんだよ!」

「あ――川本?」

「一稀? な、何でお前がここにいるんだ?」

 あれ、知り合いだったのか?

 ――私の乱れていた精神状態はいつの間にか収まっていたようだった。




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