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ひと夏の記憶  作者: まなつか
序章
5/23

第五話 「手術」《美咲》

 そしていろいろ検査をしているうちに手術の日がやってきてしまった。

 私は友達に会いたいなと思い始めていた。だけど、まだ面会が許されていない。

 私は時計を見る。もうそろそろ時間になる。心臓が高鳴っていく。

「こんにちは」

 ドアが開く音と看護師の蒼井がやってくるのがわかった。そしてシャーッという音とともにカーテンが開かれた。私の緊張が少し高まった。

「どう? 調子は?」

 彼女は体温計を渡してきた。私はパジャマのボタンを外してそれを脇の下に挟んだ。

「ええ。まぁ」

 なにやら計測器の数値をいろいろチェックしているようだった。

 ピピピピと体温計がなる。私はそれを彼女に手渡した。

「ふぅん、大丈夫そうね。気分はどう?」

「ええ、まあまあです」

「じゃあ、もうそろそろいいかな?」

「はい……」

 私はすうーっと息を吸った。もう、二度とこの空気が吸えないかもしれない。だけどもう手術をする以外に選択は、ない。

「じゃあ、麻酔を打つね」

 そして彼女は私に注射を打った。

 意識が遠くなっていった。


 何かが頭に映る。海……?

 次第にさざ波の音がする。

 人の声がする。

「ねぇ、美咲」

 私は声がする方を振り向いた。去年クラスメイトだった安田だった。

「えっ? なんで?」

 私は彼女がいることに驚いた。

 次第に思い出していく。ここの海は去年に学校で行われた自然教室と題した遊びとしか思えない旅行に行ってきたのだ。そこで彼女は波にさらわれて行方不明になっている。もう死んだと思われている。

「私、さびしいよ。暗い暗い海の底にずっといるんだもん。だから、来て……」

 怖い。私は直感的にそう思った。

「おいでよ、ねえ。ねえってば!!」

「嫌だ!」

「ねえ! 寂しいよ! 寂しいよ! 暗いよ! 怖いよ!」

「やめてええええ! 嫌だぁあああ!!」

 


 ――目をゆっくりと開ける。

 夕日の赤みがかかった光が手に差し込んできている。口には呼吸器がはめられていた。

「美咲! 目を覚ましたの!? よかったぁ」

 ベッドの脇にはお母さんがいた。そしてすぐに電話をかけると言って外へ出て行った。

 私はさっきの夢を思い出そうと必死になったが疲れているのか思い出せなかった。

 ……私、死ぬんだ。

 そんなことをかすかに思った。

 病室を見渡してみた。ベッドの横にはテレビと冷蔵庫があった。私はテレビをつけてみる。クロアチア紛争のニュースをやっていた。私は別のチャンネルに替えた。すると今度はがんについての特集だった。私は嫌になってテレビを切った。

 再び病室に静寂が訪れた。私は窓の外を見てみる。夕焼けの中、カラスが飛んでいた。いいなぁ、カラスは。自由でさ。

 私は生まれて初めてカラスを羨ましく思った。自由になって空を飛びたいと思った。

こんにちは、まなつかです。


久々にアップロードしました。

他の小説や、日々のストレス、勉強等々いろいろあったので……


これからは、こまめにうpしていきたいと思います。

それではっ

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