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ひと夏の記憶  作者: まなつか
第三章 「変わらぬ日々」
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第四話 「みかんジュース」《谷川》



「あぁ、くそぅ!」

 僕はイライラしながら頭を掻く。フケがファサファサ飛び散った。

「おい、不潔だぞ、谷川」

 先に部屋にいた川本がこっちを振り返りながらそう言う。

「あぁ、だってよぉ!」

「いいからこれでも飲んで落ち着け」

 ここは医者たちの休憩室兼ミーティングルーム。川本が親切に紙コップに入ったジュースを渡してくれる。僕がここに置いているみかんジュースだ。

「……ありがとう」

 それを一気に飲み干す。みかん独特の匂いと味が染み渡る。

「しかし、いつも思うんだがなんでみかんなんだよ。オレンジじゃだめなのか?」

 あえてストレスの原因に触れることなく、話を持って行ってくれるのが彼のいいところだと思う。

「いやぁね、僕んところさみかん農家でさ。んで、「新たな商売始めた」とか「れびゅーとかいうのをしてくれ」とか言って毎月こっちに送ってくるんだよね」

「お前の実家って、和歌山だっけ」

「そうだよ。みかん生産高全国一位だ。祖父母はまだ現役で頑張ってるよ」

「はぁ。どうりでみかんジュースなわけだ」

「そうそう、美味しいよ? 川本も飲んでみる?」

「いや、俺はみかんアレルギーだから遠慮しとくよ」

「嘘だろ、それ」

 僕は笑いながら立ち上がり、『ばーちゃん特製みかんじゅーす』と書かれたペットボトルを開ける。そしてさっき川本が差し出してくれた紙コップになみなみ注ぐ。

「いや、俺はいいって!」

 川本が止めようとする。

「ははは、川本昔から柑橘類が苦手だもんなぁ」

 僕はそのコップを奴に差し出す。

「飲むのか?」

「大丈夫だって。みかんの味しかしないから」

「ん……」

 川本は恐る恐る口を付け、潔く一気飲みした。

「……どう?」

「…………」

 何も言わず渋い顔でこちらを見上げてくる。

「はは、また飲みたくなったら言えよ」

「…………」

 何も言わずに彼は立ち上がり、「すげーまずかったぜ。なんか、懐かしい味がしたわ」とか言って出て行った。結局は美味しいってことじゃないか。

 僕は一人笑いながら紙コップを二つゴミ箱へ放り投げた。きれいな放物線を描いてそれはビニール袋がかかった灰色のゴミ箱に入る。

「よし、もうひとがんばりするか」

 そう言って僕も部屋をあとにした。

 入ってきたときのあのイライラはどこかへ行ってしまったようだ。今度川本にみかんでもあげて礼の気持ちでも伝えないとな。

 僕は笑いながら白衣のポケットに手を入れ、患者が待っている病室へと向かった。





 こんにちは、まなつかです。


 いや、マジこの二人好きなんですよ。なんていうか、BLうわなにするやめろ


 なんかみかんの生産高、愛媛か和歌山かどっちか迷うことがあります。

 これで「谷川のほうが上」と覚えればオッケイですねb


 この章はしばらくこういう日常的な話が続きます。

 それでは。

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