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ひと夏の記憶  作者: まなつか
第二章 「川本の過去」
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第三話 「新たなスタート」《川本》



 俺はそのあと警察に連行された。マスコミにも騒がれたと思うが俺は知らない。少年院に入っていて服役していたからだ。

 少年院を出る頃にはもうすっかり以前のような毒が抜けていた。

 そして施設に入れられて、新たな生活をスタートさせた。

 高校に入るために勉強をし、なんとか合格。そこからまたひたすら頑張った。俺の中に一つの目標があったからだ。

 医者になりたい――

 そう思うようになっていた。医者になって一つでも多くの命を救いたいと思った。それが俺にできる唯一の償いだと思った。

 高校は勉強に全てを打ち込んだおかげで友達ができなかった。それでも良かった。そして愛知県にある大学の医学部に入ることができた。そこから今までずっとがんばり続けてきた。

 谷川と出会ったのは大学の頃だ。中学以来、初めてできた友達。俺が殺人を犯した奴だと知っても彼は俺に接してくれた。とてもうれしかったし、何より楽しかった。

 俺と谷川は一緒に地方の大型病院へと行くことに決めた。そこに不死身の少年がいると知ったからだ。俺らはその少年――夏野を研究しようと思った。だがそううまくはいかなかった。奴は研究に対して抵抗するからだ。俺らは研究をだんだん後回しにして他の患者の治療に専念するようになった。

 俺は人をこの手で何人も救うことができたが、それと同じくらい……いや、それ以上に失ってしまった。だけどやりがいのある仕事だ。

 そんなあるとき一人の少女が入院してきた。俺は最初にその姿を見たときに目を疑った。俺の初恋の女性とそっくりそのままだったからだ。そして名字は違えど名前が全く同じだった。

「水森……美咲……?」

 そう、俺の初恋の相手の名前も美咲なのだ。

 俺はそいつだけはなんとしてでも救いたかった。俺は手術の為に何日も練習をした。本を徹夜で読んだりもした。だが、手術は思うような結果にならなかった。美咲の余命はあと一ヶ月ほど。夏が終わる頃にはその小さな命も尽きていることだろう。それが何よりも悔しかった。

 だから俺は残り少ない彼女の人生を少しでも良かったと言えるような物にしたいと思っている。

 そこで、この広い世界の一部だけでもいいから見せてやりたいと思った。

 俺も全然行ったことのないような世界に。

 そこで使おうと思った"駒"が、お前――夏野一稀ということだ。



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