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ひと夏の記憶  作者: まなつか
序章
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第一話 「不死身」《一稀》

 

「次こそ死んでやる」

 夏の夜の蒸し暑い空気。半分都会で中途半端なうるささ。車の行き来する音が右へ左へ移り変わっていく。下を見下ろす。赤い車のランプが点滅していたり、信号機が点滅していたり――

 もう見飽きた景色だった。

 一体何回目の夏だろうか。

「こんなのもう見ていたくない」

 僕は地面を軽く蹴って飛び降りた。

 体がジェットコースターに乗っているような感覚になる。飛び降り自殺は何度目の経験だろうか。数えきれない。

 病院の白い壁、そして、コンクリートの黒い地面が見える。次の瞬間、視界と思考回路が吹っ飛んだ。



「……丈夫か? おい! 夏野!」

 その聞き飽きた声で僕は目を覚ます。目の前には白衣を着た医者の谷川が僕の顔を覗き込んでいた。先ほどまで聞こえていた車の喧噪も夜景も何もない。

 ……と、いうことは……。

「はぁ……」

 深くため息をつく。それはもう諦めにも近いため息だった。

「はぁ……じゃねえよ! 何やってんだよ! お前!」

 個室の病室に谷川の少し高めの声が反響する。僕はそっとベッドの横の2つの時計に目をやった。いつかの誕生日に両親からもらったものと自分で買ったものだった。その両親は既に他界している。もう何十年も前の話だ。

「谷川……まだ朝の四時だぞ。大声出すな、迷惑だ」

「……え? あ、あぁ。ごめん」

 ようやく落ち着きを取り戻した谷川はベッドの横のパイプ椅子に腰をかけた。

「あのな夏野。お前はどんなことしても死ねないんだ。わかってるな? いわゆる不死身なんだよ。だから――」

「うるさい。そんなことわかってる」

 僕は奴を一喝してから目を逸らし、天井に眼を向ける。白い天井には無数の黒の模様みたいなものが付いていた。数える気に昔なったが結局わからなくなった。

 奴はため息を軽くついてから立ち上がって何も言わずに部屋を出て行った。

 再び訪れる静寂。なんだか少し心細かった。もう一度時計を見る。両親が買ってくれた時計は一二時ぴったりを指したまま動かなくなった。電池を替えても動かない。修理屋さんに持って行ったら「こんな時計見たことがない」と言われてしまった。隣にあるデジタル時計はきっちりと時を刻んでいた。

 部屋はクーラーのカタカタと言う音しかしない。

 僕はいつでも一人ぼっちなんだ。


 三時間後僕は部屋に運ばれてきた朝食を平らげて、部屋を出た。

 なんの当てもなく歩く。それが日課になっている。ここは矢土総合病院西病棟8階。重症患者や特殊な患者が入院しているところだ。

 僕はここに生活している。不死身なんてのは特殊中の特殊。世界にも例がない。マスコミもなんども僕のところに来たが、次第に忘れられていった。国からの研究補助があって僕は生活することが許されている。もちろん、補助金を止められても死ぬことはない。だが死ぬほどの空腹を味わうことになる。いわゆる生き地獄というものだ。


 僕は何階か下の階に降りる。……ここは5階の消化器系か。

「嫌だっ! イヤイヤイヤ! 死にたくないよ!」

 僕が曲がり角を曲がるとドスッと胸から腹にかけて鈍い痛みが走る。

 胸のあたりで「きゃっ!」という女の子の悲鳴。

「うわ!」

 とっさに閉じていた目をゆっくりと開ける。すると床に女の子が倒れていた。パジャマ姿の彼女は背が小さく、弱々しかった。

「あぁっ、大丈夫?」

 僕は半ば反射的に声をかける。その後ろから母親と思われる女性が走ってくる。

「ちょっと、美咲! 走るから……。あ、すいません。……この子……」

 母親もなんだか弱々しい感じがした。ほっそりしていると言うよりもげっそりしていた。もう何日も寝ていないように見える。

「あ……」

 その隙をついて美咲と呼ばれたその少女は起きあがって走り去っていってしまった。


 こんにちは。まなつかです。

 今回は病院ものです。夏ですので、気合を入れて書いていきたいと思います。

 

 今回の作品は、設定をあきようさんに書いてもらいました。

 私もそろそろ勉強をしなくてはならないので……。


 何かしら知識不足ですが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

 感想もきっつーいのでもいいのでどんどん書いてくださいね。


 それでは、また。


――追記(2011年11月12日)

 また一から改稿を行っていきたいと思います。

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