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婚約破棄された最弱令嬢ですが、実は神殺しの力を持つ元聖女でした~捨てたあなた達には地獄を、拾ってくれた隣国皇太子には一生分の愛を~

作者: 結城斎太郎
掲載日:2026/03/27

「――リシェル・アルディナ。貴様との婚約は、この場をもって破棄する」

王城の大広間。貴族たちが見守る中、第一王子エドワードは冷たく言い放った。

ざわめきが広がる。

その中心に立たされた私は、ただ静かに息を吐いた。

「理由を……伺ってもよろしいでしょうか」

「白々しいな。貴様は無能だ。魔力も低く、王妃としての資質がない」

嘲笑があちこちから漏れる。

さらに彼の隣に寄り添う少女――平民出身の聖女、ミリアが勝ち誇ったように微笑んだ。

「リシェル様は……努力なさっていないように見えました」

……ああ、そう。

全部、仕組まれていたのね。

私の魔力が低いように見えていたのも。

評価が落とされ続けていたのも。

すべて。

「証拠もある。彼女は王国の魔術研究費を横領していた」

「……それは事実ではありません」

「黙れ!!」

エドワードが怒鳴る。

「弁明など聞く価値もない!」

――その瞬間、何かが音を立てて壊れた。

「……そうですか」

私は微笑んだ。

「では、どうぞご自由に」

その言葉に、場が一瞬静まり返る。

想定外だったのだろう。

泣き崩れるでもなく、取り乱すでもない私に。

「……強がりを」

「いいえ」

私は一歩前へ出る。

「あなた方に、もう何も期待していないだけです」

そして、静かに告げた。

「――今この瞬間から、あなた達は“敵”です」

空気が凍りつく。

だが、誰もまだ理解していなかった。

この言葉の意味を。

私はそのまま王城を追い出された。

護衛も、財産も、すべて没収。

夜の街へと放り出される。

「……やっと、か」

誰もいない路地裏で、私は呟いた。

――制限解除。

その瞬間、世界の色が変わる。

押さえ込んでいた“力”が、解き放たれる。

空気が震え、地面が軋む。

「これで、遠慮はいらない」

私は元々――聖女だった。

しかもただの聖女ではない。

“神を殺した聖女”。

その力が強すぎるがゆえに、王国に封じられていただけ。

無能を演じさせられていただけ。

「さて……」

復讐の始まりだ。

そう思った、その時。

「面白いものを見たな」

低く、よく通る声。

振り返ると、そこには一人の男がいた。

銀髪に蒼い瞳。

圧倒的な存在感。

「君、名前は?」

「……リシェル・アルディナ」

「なるほど。あの“無能令嬢”か」

男は笑った。

「だが――全然違うな」

その一言で、理解する。

この人は“分かる側”だ。

「あなたは?」

「俺か?」

男は一歩近づき、私の顎に触れる寸前で止めた。

「隣国アストレア帝国、皇太子――ルーク・ヴァルディアだ」

心臓が一瞬だけ跳ねる。

敵国の皇太子。

それが、なぜこんなところに。

「単刀直入に言おう」

彼は言った。

「君を拾いたい」

「……は?」

あまりにも突飛な言葉に、思わず聞き返す。

「君は使える。いや、それ以上だ」

ルークは楽しそうに目を細めた。

「俺の国に来い。全てを与える」

「……なぜ」

「簡単だ」

彼は迷いなく言った。

「君が気に入った」

……馬鹿なのか、この人は。

でも。

「断ったら?」

「攫う」

即答だった。

私は思わず笑ってしまった。

「……強引ですね」

「そうか?」

「ええ。でも」

少しだけ、考える。

このまま一人で復讐することもできる。

でも――。

「条件があります」

「聞こう」

「私の復讐に手を貸さないこと」

ルークは一瞬だけ目を細めたが、すぐに笑った。

「いいだろう」

「……もう一つ」

「なんだ?」

「邪魔もしないこと」

「当然だ」

そして彼は言った。

「ただし」

「?」

「君が壊れそうになったら、俺が止める」

……その言葉に、少しだけ心が揺れた。

「……勝手にどうぞ」

「決まりだな」

ルークは手を差し出す。

私はそれを見て。

――ほんの少しだけ、躊躇ってから。

その手を取った。

それから一ヶ月後。

王国は崩壊の兆しを見せていた。

魔術機関の暴走。

貴族の内乱。

そして――聖女ミリアの“奇跡”が止まった。

「な、なぜ……!?」

彼女は焦っていた。

当然だ。

彼女の力は、本物ではない。

私から奪ったものだから。

「返してもらうわ」

静かに現れた私を見て、彼女は顔を歪めた。

「リシェル……!」

「それ、私の力よ」

「違う!!これは私の――」

言い終わる前に。

私は彼女の力を“回収”した。

悲鳴が響く。

「が……ああああああ!!」

光が消え、彼女はただの少女に戻る。

「嘘……嘘よ……!」

「嘘じゃないわ」

私は冷たく言い放つ。

「最初から全部、嘘だったのはあなたよ」

そのまま、背を向ける。

もう用はない。

「ま、待って!!助けて!!」

……振り返らない。

それが、私の復讐。

「――終わったか」

城の外で待っていたルークが、穏やかに言う。

「ええ」

「満足したか?」

少しだけ考える。

「……半分くらい」

「欲張りだな」

「当然です」

私は彼を見る。

「まだ、終わってませんから」

王子も、貴族も。

全部。

「いいだろう」

ルークは笑った。

「最後まで付き合う」

そして――

「その代わり」

彼は私の手を取る。

「終わったら、今度は俺のものになれ」

「……強引ですね」

「知ってる」

少しだけ、沈黙。

そして私は、ふっと笑った。

「考えておきます」

「逃がさないけどな」

その言葉に。

なぜか、嫌な気はしなかった。

――復讐の先にあるもの。

それが何か、まだ分からない。

でも。

もう一人じゃない。

それだけで。

ほんの少しだけ。

未来が、違って見えた。



ーーーー



王都が燃えていた。

「……随分と派手にやったわね」

城壁の上から見下ろす私は、淡々と呟く。

貴族同士の争いは、すでに内戦へと変わっていた。

原因は簡単だ。

王家の信用が地に落ちたから。

聖女は偽物。

王子は無能。

そして――不正の数々。

「全部、自業自得よ」

私がやったのは、真実を暴いただけ。

それだけで、この国は崩れた。

「冷たいな」

隣に立つルークが、どこか楽しそうに言う。

「そう見えますか?」

「ああ。でも」

彼は私の髪に触れる。

「嫌いじゃない」

「……やめてください」

「嫌だ」

即答だった。

この人、本当にブレない。

「そろそろ最後だろ?」

「ええ」

私は視線を城の奥へ向ける。

「王子を潰します」

「一番の大物だな」

「ええ」

そして――

「私の“婚約者”でしたから」

その言葉に、ルークの空気が一瞬だけ変わった。

「……過去形だな?」

「当然です」

「ならいい」

……本当に分かりやすい人。

王座の間。

そこに、エドワードはいた。

かつての威厳はない。

疲れ切り、追い詰められた顔。

「……来たか、リシェル」

「ええ」

私はゆっくりと歩み寄る。

「最後の挨拶に」

「貴様……!!全部、貴様の仕業か!!」

「いいえ?」

私は首を傾げる。

「あなた達が勝手に壊れただけです」

「ふざけるな!!」

彼は剣を抜いた。

だが、その手は震えている。

「俺は王だぞ!!」

「なってませんよ」

冷たく言い切る。

「その資格がないから」

次の瞬間。

彼が斬りかかってきた。

――遅い。

私は指先一つで、その剣を止めた。

「なっ……!?」

「これが“無能”ですか?」

静かに力を込める。

剣が砕けた。

「ひっ……!」

後ずさる彼を見て、思う。

ああ。

こんなものだったのね。

「リシェル……頼む……!」

彼は膝をついた。

「やり直そう……!俺が悪かった……!」

……心底、呆れた。

「今さら?」

「愛しているんだ!!」

その言葉に。

私は、はっきりと笑った。

「気持ち悪い」

空気が凍る。

「あなたが愛しているのは“自分”でしょう?」

「違う!!」

「いいえ」

私は彼を見下ろす。

「だから、私を捨てた」

沈黙。

それが答えだった。

「終わりです」

私は手をかざす。

魔力が集まる。

「ま、待て!!」

「安心してください」

淡々と告げる。

「殺しません」

その代わり。

「全部、奪います」

魔力が彼を包み込む。

地位、権力、名誉。

すべてを剥奪する術式。

「やめろおおおおお!!」

叫びが響く。

そして――

静寂。

そこに残ったのは。

ただの、何も持たない男。

「……これが、あなたの末路です」

私は背を向けた。

もう、見る価値もない。

「終わったな」

外で待っていたルークが、静かに言う。

「ええ」

「どうだ?」

少し考えて。

私は答える。

「……スッキリしました」

「それは良かった」

彼は優しく微笑む。

そして。

「じゃあ次だな」

「……何がですか?」

分かっていて、聞く。

「約束だ」

彼は私の手を取った。

「復讐が終わったら、俺のものになるって話」

「そんな約束してません」

「似たようなもんだろ」

強引すぎる。

でも――

「……断ったら?」

「今度こそ攫う」

やっぱりそれ。

私は小さくため息をついた。

「……あなた、本当に皇太子ですか?」

「一応な」

「品がありませんね」

「君限定だ」

……ずるい。

「どうする?」

真っ直ぐな視線。

逃げ場なんて、最初からない。

「……条件があります」

「またか」

「当然です」

私は彼を見つめる。

「私を、対等に扱うこと」

「元からそのつもりだ」

「命令しないこと」

「しない」

「……あと」

少しだけ、迷う。

でも。

「私を、裏切らないこと」

その言葉に。

ルークは一瞬も迷わず答えた。

「誓う」

真剣な声だった。

「俺は絶対に、お前を捨てない」

――その言葉で。

やっと、何かがほどけた。

「……なら」

私は、小さく微笑む。

「あなたのところに行きます」

その瞬間。

ルークが、珍しく驚いた顔をした。

「……いいのか?」

「今さらですね」

「確かに」

そして彼は――

嬉しそうに、笑った。

それから数ヶ月後。

私は、アストレア帝国の皇太子妃となった。

「リシェル」

執務室で書類を片付けていると、ルークが後ろから抱きしめてくる。

「……仕事中です」

「知ってる」

「なら離れてください」

「嫌だ」

……本当にブレない。

「重いです」

「もっと言え」

「……は?」

「君に冷たくされるの、結構好きだ」

……この人、ちょっとおかしい。

「変態ですか?」

「君限定でな」

ため息しか出ない。

でも。

「……まぁ、いいです」

「お?」

「嫌じゃないので」

その瞬間、抱きしめる力が強くなる。

「リシェル」

「なんですか」

「愛してる」

……ストレートすぎる。

「……知ってます」

「冷たいな」

「あなたが言わせたんでしょう」

「もっと言ってくれていいぞ」

「嫌です」

でも。

ほんの少しだけ、振り返って。

「……私も、です」

小さく呟いた。

その瞬間。

「今のもう一回」

「言いません」

「ケチ」

「うるさいです」

そんなやり取りが、なぜか心地いい。

復讐は終わった。

すべて終わって。

残ったのは――

この人との未来。

「逃がさないからな」

「逃げませんよ」

私は、彼の手を握る。

「もう」

ここが、私の居場所だから。

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