【超短編小説】Re:わたし、きれい?
突然鳴ったインターホンに思わすビクッと反応した。
厭な予感に背筋が凍る。
脳みそに蜈蚣か蛞蝓でも張り付いたような気さえした。
ぶる、と身を震わせる。
まさかあの女に尾けられたんじゃないだろうか。
そう思ってゆっくりと首を後ろに向けると、いまにもあのズタズタに切り裂かれた手首の傷から無数の目玉がこちらを見る様な予感がして、いっそう背筋が冷たくなる。
真堂がおれを手で制したが、それを断ってドアレンズから覗くと、そこにいたのは溜井 謹だった。
能天気な顔をして何か手土産を振っているのが見える。
安心したおれは「いま開けるわ」とドア越しに声をかけた。
女に尾けられていなかったこと、そしておれと真堂以外にも誰かいる事で安心したのか、全身に血が巡り始めた気がする。
「あれ?鍵閉め忘れた?」
手元のドアノブはカギがされていなかった。そのドアノブが回り、溜井が玄関ドアを開いてするりと入り込んできた。
独り言が聞こえていたのか?
笑う溜井にまぁいいか、と愛想を送った。
溜井は近所で買って来たと言う山盛りの唐揚げパックをリビングのちゃぶ台に置くと、勝手に冷蔵庫を開けて「ビールを貰うぜ」と言いながらロング缶のプルタブを引いた。
その相変わらずなマイペースっぷりに苦笑いをしながら「あぁ、いいよ」と答える。
リビングを振り向くと真堂は返事もせず、微動だにせず座布団の上に座ったままだった。
半解凍の回転寿司でも食った時みたいな渋い顔をして煙草を吸っている。
こいつら喧嘩でもしてたかな、と首を傾げるが記憶にない。
挨拶くらいすれば良いのに。
それとも今日はその仲裁で俺が来たんだっけ?
とにかくこの雰囲気をどうにかしなきゃな、と思い
「おい、とりあえず挨拶くらいしろよ」
と笑いながら言った。
だが真堂は眉間に皺を寄せておれを睨むと「いい加減にしろよ」
と言って吸いかけの煙草を灰皿に押し込んだ。
「お前、さっきから何をやってんだ?まるで誰かいるみたいだぞ、気持ち悪い」
……は?
呆気に取られて真堂の顔を見つめる。
真堂は相変わらず渋い顔をしておれを見ていた。
「玄関には誰がいて、誰と話してたんだ?さっき言ってた変な女か?冗談はよせよ。そこには誰もいないだろ」
真堂の視線を追うと、そこには暗いキッチンがあるだけだった。
「あれ、溜井は……?」




