第32話 もう1つの道
「Tombstone in 城之三崎」は
「Twilight Avenue 城之三崎」と
通りを隔てた斜向かいに建っている
比較的新しいマンションで、
入り口は当然オートロックだった。
俺達は駐輪場の屋根に上って
外階段の2階の踊り場に侵入した。
小学生でも安易に侵入できるような構造で
オートロックの意味があるのか甚だ疑問だった。
それからエレベーターで13階へと向かった。
13階というのは
この辺りのマンションの中では一番高かった。
このことも大吾達が
このマンションに固執している理由だろう。
何とかと煙は高いところを好む
というのは古くからの格言だ。
13階でエレベーターを降りると外廊下を通って
その先にある扉から外階段へと出た。
階段を上がると先ほどの話の通り
俺達の前に鉄格子が立ちはだかった。
パッと見たところ、
上から下までまったく隙間がなかった。
しかし。
よく見ると鉄格子の左上隅だけ様子が違った。
その部分だけ40cm四方の穴が
金網で塞がれていた。
どちらにせよ。
ここから屋上に侵入するのは
不可能だと言わざるを得なかった。
「もう1つの道はどこなんだ?」
俺は誰にともなく質問した。
「あれだよ」
大吾が空に向かって指差した。
「ん?」
俺は手摺から外を覗いた。
左上に屋上の縁が見えた。
「そこにパイプが見えるだろ?」
背後から大吾の声がした。
それは屋上の縁から外壁に沿って
下まで伸びている排水管だった。
「まさか・・」
「わかったか。
それがもう1つの道だ」
ここから排水管までの距離は
30cmもないだろう。
手を伸ばせば届きそうだった。
そして排水管をよじ登れば
屋上へ行くことができる。
屋上の縁まではせいぜい2m。
それはたしかに容易いことだった。
しかし。
ここは13階。
万が一でも手が滑れば
それはすなわち死を意味する。
それにもし排水管が壊れたら。
この排水管がどれだけ丈夫なのかわからない。
「やっぱりここは無理だよ」
「だよな、さすがにこれはなぁ」
翔太と洋が恨めしそうに排水管を睨んでいた。
「男の人って本当に変なことに熱心なのね」
茜はさほど興味なさそうに
少し離れた所から俺達の様子を見守っていた。




