男を磨く儀式、その原点――Gillette が変えた世界
#人類を変えた足跡
シリーズ物語 第五十五回
1855年1月5日、安全カミソリの発明者 Gillette 誕生
少年が男へと成長する最初の兆しは髭が生えることであり、第二の兆しはその髭をきれいに剃る術を学ぶことである。
鏡の前に立ち、人生で初めてのシェービングに挑む少年。それは青春映画において欠かせない一場面だ。これは一種の「成人式」であり、両親の指導のもとで慎重に、あるいは親に内緒で独り、その儀式を噛み締める。慣れない手つきと幼い肌ゆえに、頬からはわずかな血が滲む。その赤い一滴は、生命の重要な節目を刻む印なのだ。
一方、成熟した男たち——例えば James Bond のような男は、シェービングのプロセスにおいてその色香を存分に放つ。滑らかな頬を撫で、引き締まったフェイスラインを覗かせるその姿は、スーツや高級車、そして拳銃と同じように、彼らのセクシュアリティを象徴する一部となる。
少年や James Bond たちが手にするそのカミソリは、おそらく同じブランド、Gillette のものであろう。事実、この名は「安全カミソリ」の代名詞となった。Ford の偉大さが自動車製造のみならず近代的なライン生産方式の発明にあったように、1855年1月5日に生まれた King Camp Gillette の功績は、偉大なカミソリ会社を創設したことだけではない。彼は「ホルダーを安価で提供し、消耗品である替刃で収益を上げる」という、極めて先見性のあるビジネスモデルを確立したのだ。この賢明な戦略により、Gillette のカミソリは第一次世界大戦中のアメリカ軍兵士の標準装備となり、世界的なブランドとしての地位を不動のものにした。
1910年、絶頂期にあった Gillette は、100万ドルという破格の報酬を提示して Theodore Roosevelt に社長就任を要請したが、元大統領はこの申し出を拒絶した。
おそらく彼にしてみれば、一国の統治で十分に疲れ果てていたのだろう。その時の彼が求めていたのは、ただ毎朝心地よく髭を剃ること、それだけだったのかもしれない。




