のび太は私だった:藤本弘と『ドラえもん』の原点
#人類を変えた足跡 シリーズ物語 第四十三回
『ドラえもん』の作者、藤本弘は1933年12月1日生まれです。
あなたにこういう人を思い描いてほしい。やせていて、内気で、人付き合いが得意ではなく、運動も苦手で、決して目立つ存在ではない——そんな人物を。多くの人がそうした誰かを、あるいは自分自身を思い浮かべるだろう。中にはなじみのあるキャラクター、つまり『ドラえもん』の野比のび太を連想する人もいるかもしれない。
「子どものころの私は、のび太だった」と藤本弘は語っています。幼い頃の彼は内向的で反応も一歩遅く、子どもたちの輪の中ではいつも“余所者”のような存在でした。彼が得意だったのは、一人でぼんやりすること——自分の世界に浸り、そこで見た空想をペンで描き留めることでした。
運命が変わったのは小学校5年生のときです。クラスに安孫子素雄という転校生が来ました。彼もまた寡黙で、一人で座ってマンガを描く少年でした。二人はすぐに意気投合し、以来いつも一緒に過ごすようになります。彼らの創作テーマは常に「日常の中にある非凡さと純粋さ」であり、平凡な暮らしの中にある小さな感動や子どもたちの等身大の心情を描き続けました。
『ドラえもん』はまさにそんな作品です。普通の少年・野比のび太の日常を描きながら、非現実的な設定で温かさを届け、孤独な子どもたちに寄り添い、癒しを与えました。藤本はのび太についてこう評しています。外見は頼りなさげでも、何度失敗しても諦めずに少しずつ自分を高めようとするその心こそ、のび太が最も輝く部分だ——その一点だけで、彼は紛れもなく優れた子なんだ。




