表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/45

稲妻のひらめきから継承された光:世界初の電球とその物語

#人類を変えた足跡  シリーズ物語 第二十五回

1879年10月22日

世界で最初の電球の誕生


太陽が沈み、夜が訪れると、人々は人工の光のもとで夜の営みを始めた。人はもはや「日の出に働き、日没に休む」という生活に厳密に縛られる必要はなくなり、闇はもはや隔たりとはならなかった――その変化をもたらしたのは電灯である。


1808年、イギリスの科学者Humphry Davyは電流の実験中に偶然二本の炭棒を接触させ、それらが離れた瞬間に炭棒の先端から鋭い白い閃光が走るのを見た。その稲妻のような光はひらめきのようにDavyを興奮させ、如何にしてその一瞬の光を持続させるか思案した。試行錯誤の末、Davyはアーク灯を発明した。強烈な光を放つこの灯は消費電力が大きく寿命も短かったため、短い輝きの後に姿を消したが、それでもDavyの発見は後の電球発明に重要な手がかりを与えた。


実験でDavyは、電流の流れる白金線がきわめて弱い光を放つことを観察した。しかし通電後の白金線は空気中ですぐに切れてしまい、持続的な発光は困難だった。これを解決しようと、後続の研究者たちはフィラメント(灯絲)の材質と、通電時にフィラメントが置かれる気体環境に着目して研究を進めた。


1854年、ドイツの時計職人Heinrich Göbelは白金線の代わりに炭化した竹の繊維を用い、真空のガラス球内でそれを点灯させる試みを行った。実験の結果、その灯は約400時間の点灯を保ち、今日から見ると実用的な電球として史上初の成果といえる。残念ながらGöbelは特許を申請しなかったため、彼の4年後に炭素フィラメント電球を発明したイギリスの化学者・物理学者Joseph Wilson Swanの名が広く知られることになった。1860年、Swanは炭素フィラメントの電球を作り特許を申請したが、通電時のフィラメント周囲の気体環境までは考慮していなかった。


やがて1874年、カナダの二人の電気技師が電球内に窒素を充填して炭棒を通電させる試みを行ったが、資金不足により研究を継続できず、1875年にその特許をトーマス・エジソンに売却した。この特許譲渡は、いわゆる「電球発明」の曲折する物語に決着をもたらす出来事であった。


エジソンはその特許を手にすると、灯絲の改良を重ねた。実用的な電球をつくるには、通電で白熱状態になる材料を見つけるだけでなく、その材料が概ね2000度の高温に耐え、1000時間以上燃焼(通電)可能であり、加工が容易で変形しにくく、そして何より安価であることが求められた。エジソンはそのために1600種類以上の繊維材料を試したと言われる。


そして1879年10月22日、エジソンは直径0.025センチメートルの炭化した綿糸をフィラメントとして用いた電球を作り上げた。通電したその瞬間、人類史に恒久の光が灯った。その電球は45時間にわたり灯りを保ち、フィラメントは安価で比較的長時間使用に耐えうるものだった。つまり、日常生活で広く使える世界初の実用的な電球が誕生したのである。


翌年にはエジソンは毛竹の繊維を用いた灯絲で連続1200時間の点灯に成功し(現代の白熱灯の寿命はおよそ2000時間前後)、電灯普及の基礎を固めた。


エジソンがフィラメントを探し求める過程は数千回にも及ぶ失敗の連続であり、彼はまさに暗闇と向き合っていたと言える。しかし最終的に毛竹という信頼できる材料を見出したことは、この時代に語り継がれる励ましの物語となった。その後の電灯の普及と実用化においてもエジソンの貢献は大きく、今日私たちが使う電灯は一般にエジソンの功績と結びつけて語られる。

挿絵(By みてみん)

だが忘れてはならないのは、Davyからエジソンに至るまで、暗闇を照らす歩みの一人一人が記憶されるべきだということだ。頂点に立った者は決して単独で到達したのではなく、多くの巨人の肩の上に立っている。こうした執拗な発明者たちのおかげで、私たちは夜に「光がほしい」と願えば、その光を目にすることができるのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ