静寂の彼方へ:人類初の超音速飛行
#人類を変えた足跡 シリーズ物語 第二十回
1947年10月14日
人類が初めて音速を突破した日
1940年代、冷戦の構図が固まりつつある中で、米ソの二大国は激しい軍拡競争を繰り広げた。ジェット機という新たな軍事力は、その競争において非常に重要な位置を占めていた。とりわけ「音障(音速の壁)を超えられるかどうか」は、大きな注目点だった。
音速を超えることは容易ではない。亜音速では機体は主に空気抵抗を克服して飛行するだけだが、音速を超えると機体周辺の気流が一変し、通常の空力学の枠を超えた現象が起こる。機体が振動したり制御を失ったり、最悪の場合は機体の破壊や乗員の死亡に至ることすらある。
1947年10月14日、米空軍大尉 Charles Yeager は、ロケットエンジンで推進する X-1 型機で9回目の試験飛行に臨んだ。彼の任務は、この機体で音速に挑むことだった。
高度約6000メートルあたりから、彼の目には太陽も星も見えた。速度が0.88マッハを突破したとき、機体が振動し始めた。Yeager はこれまでにも何度も同じ状況を経験しており、スタビライザーを調整してさらに上へ、さらに前へと進んだ。そして0.92マッハで高度1万メートルまで登り、加速を続けた。計器の指針はやがて目盛りの端に迫り……ついに指針は目盛りの範囲を越えた。推定速度は約1.06マッハであった。
人類は初めてソニックブームを聞いた。
しかし Yeager 自身はまったく感じなかった。
彼のまわりは静けさに包まれていた
—— それは、
彼が音をすでに背後に置き去りにしていたからである。




