表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過去改変に消えたタイムリープ主人公の代わりに、この時間軸に取り残されたドン底不幸なヒロインを救う  作者: でい
第五章 - エピローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/51

第50話 主人公

「……あのなぁ」


 借りたノートにメッセージって。

 気づかなかったらどうするつもりだよ。

 逆に授業中見つけたら、ひどい有り様になってたぞ。


「ちゃんと笑えるやつ描けって、言ったろ……」


 くそっ、涙が止まらない。

 蒼一、おまえはどんな気持ちでこの手紙を書いたんだ?

 仕上げにしては、ポエムがすぎるだろ。


 僕が主人公だって?

 僕に人を救う力がある?

 おまえでもできただろ。

 花を持たせようとすんな。年寄りくさい。何回繰り返せば、そんな達観できんだよ。


 あの日、教室でおまえがタイムリープするって宣言したとき。

 僕は疑わなかった。

 蒼一ならできそうだなって、すぐに納得したよ。

 非現実な光景を目の当たりにしたからじゃない。

 ずっと、おまえを見てきたから。

 調子のいい性格で、意外と気を遣える。

 見切り発車でマイペースだけど芯はブレない。

 蒼一の強すぎる正義感がなければ——


「誰も救えてねえよ……全部、おまえのおかげだ」


 言っとくけど、悪いところもめちゃくちゃある。

 言葉のチョイスが下手クソだし、何より言葉足らずなんだよ。

 日記もそう。この手紙にも、未来のこととかもっと書いとけ。

 僕が迷ったときに、親友がそばにいないでどうすんだ。今いちばんおまえに会って相談したいよ。

 ただ、ポエムには救われた。たぶんこれからもちょいちょい見返すだろうな。


「なにが花火師の仕事だよ。打ち上げを見届けてもいないくせに」


 はっきりしとくぞ。

 主人公はおまえ。都筑蒼一だ。

 タイムリープなんていうチートじみた能力を授かって、誰かを救うために使えるやつは、主人公に決まっている。主人公でしかありえない。

 つらいことも多かっただろ。死ぬほど悩んで苦しかっただろうよ。僕なら逃げ出したかもな。

 でも、乗り越えた。

 修正を重ねて、最後まであがいた。

 僕に——僕たちに、この世界を残した。

 感謝しかないよ。


 だから、蒼一の選択を受け入れる。

 だました? だましていい。許す。

 大変な役目を押しつけた? 大変だけど、むしろご褒美だ。

 僕は僕らしく、おまえが認めた主人公だと信じて、残してくれたものと向き合っていくよ。


 ありがとな、蒼一。

 そっちでも仲良くやろうぜ。出会えば即親友だ。


「きっと、な……」


 ちぎったページを、ハサミで細かく刻む。

 そうしろと言うなら、そうしたほうがいいのだろう。

 涙の跡だらけの手紙を残しとくのも、おまえに悪いしな。


 後始末をつけたところで、階下から気配を感じる。

 トタトタと階段を登ってくる足音が響いた。

 慌てて目尻を拭う。

 ふたりの前では、笑顔でいたい。


 扉が開く。蒼一の託した彼女たちが顔を出した。


「ただいまー、凛人!」

「ただいま、鳴海くん」

「おかえり。凪瀬、汐見さん」


 僕も、全員好きだよ。

 恋愛感情なのか友情なのか親愛なのか、これから知ることなのか、深まっていくことなのか。いずれにしても。

 ひとりひとりの気持ちに、ちゃんと答えていきたいと思う。

 幸せにしてあげられる方法を考える。

 頼まれたからじゃない。僕がそうしたいから、そうするんだ。


「えっ、凛人……それ」

「ん?」


 凪瀬が机の上を指さす。

 大丈夫。ノートはすでにしまってあるし、手紙は人力で消滅している。


「……どうして、私たちの下着がここにあるの?」

「え、ああっ! あ、あのこれは、ここに吊ろうとしただけでっ」

「戦利品として?」

「モズの早贄はやにえみたいに?」

「違う! 部屋干しがいいってネットで見たから!」


 モズの早贄って、獲物を串刺しにするあれじゃないから。

 ふーん、という目つきで見られる。

 状況は最悪。あがくほど怪しくなる。

 冷や汗が頬を伝ったタイミングで、ふたりはニコッと表情を崩した。


「やるじゃん。ちょっと見直した」

「この状況で!?」

「精神修行で欲を失ったのかなって、ふたりで心配してた」

「それ僕じゃないし」

「凛人を見習って、蒼一はスピリチュアルに走ったのかと」


 この場面で煩悩があると言い張るのも、おかしな話。

 本当のあいつは精神修行から抜け出した。ここは便利に言い訳に使わせてもらう。


「……いや、あいつが教えてくれたんだ。これは苦行の一種。エロ本と下着。あえて煩悩と向き合うことで知恵のエネルギーに転化できるって」


 ラマ教だかチベット密教だか知らないが、そんな教えがあってくれ。

 この際、神道でも仏教でも、言い訳に使えるならなんでもいい。


「へぇ」

「そうなんだ」


 ふたりの反応は素っ気ない。

 やっぱりダメか。もう素直に、正気を奪う魔力があったせいと白状しよう。

 魔力を込めたの、君たちだろと反撃に出て……まあ、無理だよな。


「……じゃあ、もっと煩悩と向き合ってみないとね」

「え?」

「凛人はどこまでえられるかなぁ?」

「なにその目、ねえ、ちょっとふたりとも!? 急に胸元伸ばして、エッッ!!」

次話、最終回です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ