表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過去改変に消えたタイムリープ主人公の代わりに、この時間軸に取り残されたドン底不幸なヒロインを救う  作者: でい
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/51

第18話 来ちゃった♡

 そよ風に揺れるカーテン。

 隙間から心地よい朝日が差し込んでくる。


 普段よりも早い時間に目が覚めた。

 さすがに二日連続ともなると、原因はすぐに察しがつく。

 慣れない布団と枕——そして胸の上にある、柔らかな重み。

 それは穏やかな顔で、スゥスゥと寝息を立てている。


 汐見澪しおみみおが、覆い被さるように抱きついていた。


「……実は起きてるだろ」

「んん……むにゃむにゃ。ふわ〜ぁ。おはよぉ」

「普通、そんなあざとい寝起きしないから」


 冷静にツッコむ。

 汐見さんは「あ、しまった」という顔をした。というか呟いた。


 陽光を反射する、さらりとしたプラチナブロンド。透明感のある肌。目の下の薄いクマ。

 とろんと、寝ぼけ眼を残して僕を見ている。

 目と鼻の先で、アイドルのような素顔のまま、彼女は言い訳をする。


「でも鳴海くん、『おまえは僕のカイロだから、冷たくなるまで離れるな』って言った」

「言ってない。長々とした捏造を重ねるな」

「あと『できるだけ寄り添うから』って」

「……言った。それは言ったけど、こういう意味じゃないから!」


 汐見さんの肩を、両手で支えて持ち上げる。

 途中でノーブラと気づき、慌てて目をそらした。重力が憎い。


 僕の狼狽ろうばいに気づき、彼女はにんまりとした表情で見下ろしてきた。


「どうしたの?」

「……いい加減にしないと縛り上げるよ」

「鳴海くんが、そういうの好きなら」

「ちゃうわい!」


 すてーんと転がす。彼女はなすがままに布団を転げていく。

 昨晩から距離感が近すぎる。いちいち行動も危ういし、汐見さんの目的は一体なんなの。


「あのなぁ、そんなことばかりしてると勘違いするぞ」

「勘違い?」

「……男は、チョロい女の子でも、べつに気にしなかったりするんだよ」


 汐見さんが僕に甘えているのは、傷ついた心の拠り所がほしいだけ。

 そこは勘違いしちゃいけない。弱みにつけ込むのは避けなければならない。

 あくまで一般論として、彼女の迂闊な行動をさとしておく必要がある。


 僕の言葉を聞いて、汐見さんは事もなげに言う。


「勘違い、していいよ?」


 返す言葉が喉にひっかかる。

 今度はしっかりと目が合った。

 虚ろな瞳ではなく、訴えかけるような眼差し。

 視線が離せない——


 ピンポーン。

 ブブブ。


 チャイムとスマホが同時に鳴った。

 まさか。急いで時計を見る。

 まだ七時を回ったばかりなのに、早すぎる。


「お客さん?」


 僕の様子を見ていた汐見さんが、首をかしげて声をかけてきた。


「あ、いや……宅配便かな」

「こんな早い時間に?」

「うん、時間指定って便利だよね。配達員さんには申し訳ないけど」


 言いながら、スマホで返信を打ち込む。

 少しでも時間を稼がないと。

 この状況を見られたら、とんでもない勘違いをされるに決まっている。


「悪いけど、汐見さん。ちょっと静かにしててもらえる?」

「……どうして?」


 無垢な瞳がまっすぐ射抜いてくる。

 宅配便の受取ごときでこんなお願い、そりゃ不自然に感じて当然だ。

 わかってる。僕だってわかっていますとも。


 ブブ、ブブ、ブブとスマホが小刻みに震える。心拍とリズムを合わせたみたいに追い打ちをかけてくる。

 もう時間がない。経てば経つほど不利に傾く。

 ——嘘を重ねても、どうせバレる未来しか見えない。


「……友達が来た」

「学校の?」

「うん。見つかると、かなりマズい」


 正直に打ち明ける。たぶん、ちょっと涙目になっていた。

 頼む汐見さん、どうか空気を読んでくれ。


「……わかった。念のため隠れてるね」

「助かる!」


 話が早い。返事を聞くやいなや、僕はドドドと階段を下りた。

 寝巻きのままだし、顔も洗ってない。寝癖を直す余裕なんてどこにもない。


「迎えに来るなって、言い忘れてた……っ!」


 そうだ、これだった。

 昨晩の電話で言い逃していた大事な言葉。

 その後悔が今さらになって襲いかかってくる。


「お、おはよー」


 急ぎ足で玄関を開けると、そこで待っていたのは——


 ツインテールと前髪のメッシュ。艶やかな黒髪に混ざるビビッドなピンク。

 真っ白な肌に、タレ目気味の赤いアイライン。真紅のリップ。

 軟骨まで並んだ両耳のピアス。黒のチョーカーが首元で揺れる。


「おはよ、鳴海凛人なるみりんとくぅん。来ちゃった♡」


 後ろ手を組み、甘える声で挨拶を返す。

 目を細めて、にっこりと笑みを浮かべた——


 凪瀬彩伽なぎせあやかが立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ