『護るためには』
心地よい夜風が流れる。
満月の下、俺は公園の滑り台に寝転がり、考えていた。
「どうしたもんか」
エルピスをどうやって護るか。
喫緊の課題は、エルピスの住まいだった。
家に連れて帰って、馬鹿正直に親に話すか。
「くっそ、信じてもらえるわけねえ」
邪神に襲われている女神だなんて、荒唐無稽な話、ゲームのし過ぎで済めばいいが、犯罪者扱いされて、泣きながら警察署に連れていかれそうだ。
なら、友達の妹を預かったってことにするか。
駄目だ、不自然過ぎる。外国人の友達なんかいねえ上に、エルピスの金髪だ。そもそも日本人なんて誤魔化すことすら難しい。
なら親には言わずに家に連れ帰って、見つからないように俺の部屋の襖に布団入れに隠れる。
「くっそ。猫型ロボットじゃねえんだぞ! 」
エルピスにそんな隠れ住むような不憫な生活をさせたくて、俺はこの世界に連れてきたわけじゃねえ。
煮詰まった俺は立ち上がりエルピスを見ると、滑り台の天辺でレグルスを抱きながら、一緒に月を見上げていた。
俺はエルピスを護ることを誓った。
左腕の手首に巻かれたイマジナイトを見る。
この手には、怪物、邪神を倒す力も持っている。
だけど、エルピスがこの世界で生活するための手段は一体どうすりゃいいかも思いつかねえ。
「くっそ……」
ヒル子の言葉を思い出す。
『お主にはおらぬのか。現実世界でお主の話しを理解してくれ、助けてくれそうな誰かを』
「……あの人しかいねえ、か」
俺は決断する。
「エルピス、ちょっと待っててくれ」
俺はすやすやと寝むるレグルスを膝に抱え、座っているエルピスに言うと、エルピスは頷く。
公園の入り口に置いてあった自転車を取ってくる。
俺の傍にきたエルピスとレグルスに
「今からある人に会いに行く。ついてきてくれるか? 」
と尋ねると、エルピスが頷き、レグルスが眠そうに唸る。
前かごにレグルス、そして荷台にエルピスを座らせる。
「俺にしっかり捕まってろよ」
と俺は言うと、エルピスが俺の腰にしがみついたのを確認して、自転車をゆっくり漕ぎ始める。
夜闇の中、俺達は目的地に向けて出発する。