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『chapter end:宣戦布告』

 神社を出た俺は、目的地にたどり着く。


「おやぁあ。これは、先日の高校生じゃあないですか!」


 星の智慧教会、その門の前で、待ち構えていたように禿げた四角い頭をした、支部長のプレートを付けた男が立っていた。


 その背後に、青いポロシャツを着た男女が機械のように整列し並んでいた


「こんな朝っぱらから、何の御用かな」


「てめえだろ。咲耶の弟に、悪霊を仕向けたのは」


 俺が言うと、支部長は


「何のことでしょうか? さっぱりわかりませんが」


 あくまで白を切る支部長に向かって、俺は言う。


「残念だったな」


「は? 何が」


「てめえらが放った怪物も、悪霊にも、咲耶は負けなかった」


「そうじゃ! お主らの悪辣な策略は、咲耶が全て打ち砕いたのじゃ! 」


 誇らしげにヒル子が言う。


「ああ。咲耶は勝ったんだ」


「一体、何の話をしているのかわからないねえ」


 と、惚ける支部長に向かって俺は心底馬鹿にするように笑みを浮かべ


「てめえらは、負けたんだよ」


 と言うと、支部長の顔が固まる。


「……」


 無言の支部長の憎々しげな眼を睨み返し、仁王立ちした俺は言う。


「今度は俺達の番だぜ。てめえら星の智慧教会は、必ず俺達がぶっ潰す」


 それを聞いた支部長の顔が大きく歪む。


「これは怖いですねえ。でもまあ……」


 と言った刹那、笑みを浮かべてた支部長の首があり得ない方向に反り返り、ぐるぐる回りだす。


 人間ではありえないその様子に、俺はあの黄金樹での悍ましい変貌を思い出す。


「まさか……あやつか!」


 ヒル子と俺は合点が行く。


 ぐるぐる回っていた支部長の頭が止まり、涎を垂らす。


「……タノシミニシテマスヨ、タイヨウクン」


 そして、壊れたぬいぐるみのように、大きく口が裂け、叫び始める。


 明らかに何かが憑依したような狂気じみた笑いをあげる男の背後から、影が上に伸びていく。


 支部長はそのまま背を向けると、背後にいた信徒たちと一緒に狂ったように、軽快なステップを踏みながら、建物へと戻っていく。


 晴れ渡る青空を汚すように、建物上空に暗雲が渦巻いていく。


「太陽……」


「ああ、わかってるさ」


 俺とヒル子は、倒すべき敵の本拠地を眼に刻み付け、その場を後にする。


 





「ねえ! 見た? 見た?! 」


 眼下に映るその光景を眺めていた、紅いドレスを着たその女は、両手を叩いて叫ぶ。


「ふははは! あれがお主の執心の勇者とやらか! 中々やるじゃあないか!」


 豪胆に笑う人影に向かって、紅いドレスの女は微笑む。


「そうでしょ! 彼、ほんっっとうにかっこいいんだから! 」


 ため息を零した美女は頬杖をついて、華奢なその指を伸ばす。


「ああ。待ちきれないわ」


 薔薇色の髪が揺れ、女の瞳が黄金に輝く。


「早く会いたい。ね、太陽君……」


 蕩けるようにつぶやいたその言葉が自分に向けられているなんて、太陽は知る由もなかった。

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