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ジュダストロ・ファーマーズ  作者: 瀬戸 森羅
2/3

何から始めよう?

第2話です!

 ー午前6時

「ん…む」

  窓から射し込む明るい光に照らされて目が覚めた。

「よく寝たよ…」

  今日から僕も一人前の大人になった。頑張らないと。

「んー…そういえば、土地と家はもらったけど、何からはじめたらいいのかな」

  そういえば、備え付けの本棚に説明書のようなものがあるらしい。

「えっと…これかな」

  『タスフの新成人へ』と書かれた紙のついた本があった。

  『やぁ、諸君。わしじゃ。グリンじゃ。この度は成人おめでとうじゃ。これからそなたらは一人前の大人として村のため人のために働かなくてはいけない。不安じゃろうが心配するでない。この本を読んでおけばばっちりじゃ』

「うん、これを読めばしっかりできそうだね」


  読むだけで半日かかってしまったが、これからのことは随分と見通しがついた。

「よし…じゃあ午後は色んな準備をしなくちゃね」

  まずは畑を整備しなくちゃならない。用意されたとはいえ完全には整備されている訳では無い。雑草やゴミを取り除いて耕すところからはじめよう。

「そしたら、次は種を買って蒔いて…うん。何とかなりそう」

  不安だったがしっかりできそうだ。…ミカは大丈夫だろうか。

「まぁ、心配することじゃないよね…」

  ひとまず仕事に取り掛かることにした。


 ー午後5時

「ふぅ…。こんなものかな…」

  とりあえず大まかな範囲に畑ができた。まだ種を蒔くところまではいっていないが、今日はこれで十分だろう。

「今日はもうお店がやってないから…また明日買いに行こう…。…あ、そういえば…ご飯、どうしよう…」

  夕食のことをすっかり忘れていた。冷蔵庫も備え付けられてはいるが、当然食べ物は入っていない。

「何も無いし、プティンさんのところに行くしかないか…」

  プティンさんのレストラン、ハングリーラビットは村の人たちが食事をするお店だ。明日は種を買わなくてはいけないが、食費を考えていなかった。危うく飢えるところだったね。


「あ、アふ」

  ハングリーラビットに入ると、入口のすぐ側の席で、ミカがパスタを頬張っていた。

「…ミカ…。口の中のもの飲み込んでから話そうね…」

「ん…。ごめんごめん!やっぱり食べ物ないからここに来るしかないよね!」

「うん、仕方ない」

「あれ?お前らも来たの?」

  店の戸の開く音がして、後ろから声をかけられた。

「あ…デイビット・クルンルン」

「フルネームかよ。ビットって呼んでくれ」

「わかった。ビットもやっぱり食べ物持ってかなかったのかな…?」

「そうなんだよ。もしかしたら新成人みんなそうかもしれないな」

  デイビットが僕たちのいる席の近くに座ると、言った通りに新成人たちが次々と店に入ってきた。

「おや」

「お?」

「あれ~?」

 新成人全員が顔を合わせることになってしまった。

「結局誰一人食糧を持ってったやつはいなかったんだな」

「そのようですね。私としたことがお恥ずかしい」

「トーマスも忘れるなんてちょっと以外かも~」

「アミィは誰よりも忘れると思いましたけどね」

「まあ、なんか新成人の顔合わせみたいな感じでいいんじゃねぇか?」

「そうね」

 たしかにみんなのこともよく知りたいし丁度良かった…。

「みんな…今日はやっぱり畑の整備?」

「そうだなぁ。それくらいしかとりあえずできなかったな」

「ボクはとりあえずずっと本読んでたよ」

「アミィのはあたしたちと違って色々と複雑そうだもんねぇ」

「そんなことないよ~。ボクだって畑のことはよくわかんないし~」

「まぁ、専門外のことはお互いわかんねぇってことだよな」

「そう考えるとアミィはこの中でも一際重役なのでは…?」

「アミィ…すごいね」

「ちょっとちょっと!あんまりプレッシャーかけないで~!」

 そう言うとアミィは恥ずかしそうに手で顔を隠した。

「まぁ俺たちも頑張らないとな!」

「だな!」

「とりあえず…食べようか」

「そうだね!」

「…ミカ以外はね」

 既にパスタを食べ終えていたミカをちらりと見る。

「もっと食べちゃう!」

 しかしどうやらさらに食べるつもりのようだ…。

「…食費を考えるんだよ…」

「今日は無礼講じゃー!」

「後で困っても貸さないからね…」

「相変わらずアルとミカは仲がいいな」

「ビットだって妹いるでしょ…?」

「あんなのはいなくていいよ」

「またまた~」

「私も優秀な兄でもいれば色々と教えて頂きたかったものですが」

「めんどくさいだけだよ、あんなのは」

 そう言いつつビットは照れくさそうに笑った。

「家族って、憧れるけどなぁ~…」

 ぼそりとアミィが呟く。

「そういえば、アミィは…」

「うん、そうなんだよねぇ」

 アミィは家族がいないらしい。もともとこの村の人でもなかったようなのだけど…赤ちゃんの頃に拾われてこの村で育てられたらしい……。

「悪ぃな、アミィ。嫌なこと思い出させちまったか…?」

「ううん、いいんだよ~。ボクだってな~んにも覚えてないし。ここにみんなといられるのは、ボクにとっても幸せなことだしね」

「アミィ…あんたってやつぁ…!」

「えへへ、チェリッシュと出会えたのも、とっても嬉しいことだもんね」

「心の友だぞ…私たち!」

「うんっ!」

「みんな…仲間。これからも協力してこうね」

「おーっ!」

  みんなと一緒だと考えると、これから先の仕事も、不思議と頑張れると思った。


「あんたたち、気合いは十分ね」

  厨房で注文を待っていたプティンさんがこちらにやってきた。

「あ、プティンさん」

「すみません、うるさかったですかね」

「いいのいいの。あんたら若いのは今主役みたいなもんだから」

 そう言ってプティンさんは朗らかに笑った。

「主役だって」

「ただの…未熟者だよ…」

「これからこれから」

「若いのがそんなネガティブじゃだめよー?」

「まぁ、俺たち今日まで親の手伝いでくらいでしか仕事のこと知らなかったしなあ」

「自信ないのはわかるよね~」

「アミィはお手本もいないからなぁ」

「がんばれよ!」

「がんばる…っ!」

「さぁじゃああんたら!今日はたくさん食ってきな!」

「お、もしかして…?」

「いいよっ!今日はあたしのおごりだ!」

 プティンさんはどんと胸を叩いた。

「プティンありがとーっ!」

「あたしも?!あたしもだよねっ?!」

「はじめのパスタ以外は無料でいいよっ!」

「えっ?!ちょっと~!それじゃ不公平じゃない~!」

「ははっ!冗談だよ!沢山食べな!」

「わー!プティンさん太っ腹~!」

「よっしゃ!食うぞー!」

「今日は…僕も…。」

  プティンさんがたくさん料理を作ってくれて、更に場は盛り上がった。

  明日からは種も蒔いて、本格的に仕事が始まる。

  頑張らないと、ね。

  みんなと過ごす時間も楽しいけど、しっかり仕事もするぞ…!

  明日のためにも…おやすみなさい。

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