貴族なんて、夫に売られる娼婦みたいなもの。
性的描写があります。
十五歳の子が倍以上年上の夫に弄ばれます。
不快な方は読まれないほうがいいと思います。
貴族の令嬢なんて、実際のところは体の良い娼婦だ。
親に誰それに嫁げと言われ「はい」以外の返事を持たないのだから。
好きでもない男だったり、一度も会わないまま結婚式で初めて会ってその日に、夫と言う呼び名の買い手に体を好きにされる。
それからはよほどのことがない限り夫という名の買い手にいいように扱われ、運が悪ければ浮気されてそれでも我慢して、子供を産んで育てることを当たり前だと思われる。
稀にその夫婦に愛が生まれることがあればそれはとても幸せなことだろう。
けれど大半の人は愛を感じられず人生を閉じるのだろう。
父に「お前の婚約者が決まった」と言われ「どなたでしょう?」と尋ねると我が家にとって政略的に繋がりを持ちたい家だった。
ただ、その家には年頃の子供まだ十歳程度だったように思っていたのだが・・・。
「釣り合いの取れる方はいらっしゃらなかったと思いますが?」
「当主が後妻を探していたんだ。とてもタイミングが良かった。お前の名を出したら、とてもお喜びになっていたよ」
「ご当主ということは三十歳を越えてらっしゃったと記憶しておりますが・・・」
「三十三歳だ」
「その方に嫁げと言われるのですか?」
「そうだ」
「お父様はわたくしがまだ十四歳だと知っていらっしゃるのですか?」
「当然だろう。決まったことにグズグズ言うな。お前の十五歳の誕生日に結婚式が行われる。再婚なので派手なことはしないと仰っておいでだ」
「わたくしは嫌です!!」
「結婚は決定だ。後三ヶ月しかない。覚悟を決めておきなさい」
わたくしが反論しようとすると、父はあっちへ行けというように手を振って部屋から出ていくように言った。
「鬱陶しいからもう下がれ!!」
まさか自分の倍の年よりもまだ上の人と結婚させられるとは思ってもいなかった。
今まで婚約者も決めない理由をなぜだろうと不思議に思っていたけれど、わたくしを少しでも高く買ってくれるところを探していただけだなんて!
我が家の領地はなぜか小麦が育ちにくく、主な収穫物は日持ちのしない葉野菜が主流で、父は小麦が取れるところと繋がりを持ちたがっていた。
わたくしは一体何キロの小麦と交換されるのだろう?
十五歳で嫁ぐということは学園も辞めなければならない。
友人達になんて説明すればいいのだろう?
結婚相手は父との方が年の近い相手に売られるの。とでも言えばいいのだろうか?
せめて同世代だったならば、覚悟はしていたのに!!
ノックの音がして返事もしていないのにドアが開いて、母が入ってきた。
「お父様に聞いたわ」
「ふっふふふふふっ!!わたくしは小麦何キロで売られたの?それが何年間続くの?本当に困った時には助けてもくれないわよきっと」
「そうね・・・」
「同じように売られたお母様はまだ年齢だけでも釣り合いの取れる相手だったから『婚約したの』と友達に話すことも出来たでしょうけど、わたくしは結婚することすら友人に話すことも出来ないわ!!」
「嘆いても変わらないのだから、少しでも希望を見つけて嫁いでいくしかないわ」
母はわたくしを抱きしめ背をさすりながら、狂ったように笑うわたくしをどうしていいのか分からずにいるようだった。
「どこに希望があるの?・・・お祖父様も賛成しているの?」
「仕方ないと仰っているそうよ」
「お祖父様にも売られるのね」
わたくしは結婚することを友達に何も話さず、誕生日の前日も「また明日ね」と言って友人達と別れた。
十五歳の誕生日は、結婚式と言っても教会に白いワンピースを着たわたくしと、ガウガンデル公爵様と公爵の前妻の子供が二人とわたくしの両親だけで婚姻宣誓書にサインだけして終わった。
子供の頃から夢見ていたウエディングドレスすら着ることが叶わなかった。
まだ陽の高い時間から窓のカーテンが開けられたまま、白いワンピースを目の前で脱ぐことを求められ、立ったまま体の上を夫となった買い手に長い時間弄られ、一緒に湯船に浸からされて、足を開かされ腰に当たる硬いものをこれから入れるのだと突きつけられ、のぼせる間際に体を拭われ、ベッドに連れ込まれて長い、長い、時間弄ばれた。
翌日は起き上がれなくて、ベッドで寝ていると仕事の合間にやってきてはわたくしを弄んで、仕事に戻って夜になるとまた弄ばれた。
よほどわたくしの体が気に入ったのか、嫌がるわたくしを押さえつけるのが楽しいのか、わたくしは十五歳の誕生日からずっとベッドで何も着ることを許されないまま二週間、夫を教え込まれた。
夫という買い手は満足したのかベッドから出ることを許し、わたくしに籠の中の鳥という自由を与えた。
欲しいものは衣装でも宝石でも、本でも買ってもらえたが、外出することは許されなかった。
外出する時はいつも夫という買い手がわたくしを見せびらかす時で、ひと時でも離れることを許さなかった。
数年が経って夜会やお茶会にクラスメートの姿を見るようになった時、話しかけられると私は最低限の受け答えをして、それ以外は夫が受け答えしていた。
友人達もそのうち声をかけてはいけないことだと感じるのか、誰も声を掛けなくなっていった。
実家が不作で麦を欲しがっていると夫から聞かされたのは、売られた日から何年が経った頃だったろうか?
毎年決められた量は安価に売っているが、わたくしに新鮮味を感じなくなっている今日このごろには、夫は実家に小麦を増量するのを渋った。
そこで夫は私に言った。
「実家に小麦を余分に売ってほしかったら、シュテット前侯爵の相手をしてみないか?」と。
シュテット前侯爵というと、年は六十五歳は越えていて、顔にも手にもシミが浮いていて私を見るといつも全身を舐め回すように見る人だった。
私は実家が困ろうがどうでも良かったので「嫌です」と断った。
そうすると翌日、結婚してから初めて父親が私を尋ねてきた。
何年かぶりに会った父はろくに挨拶もせず用件を切り出した。
「今年は本当に不作で、領民が生きていけないかもしれないんだ!公爵に小麦を売るように頼んでくれ!!」
「わたくしはもうお父様の所有物ではなくなったのに、どうしてお父様の言うことを聞かなければならないのです?」
「所有物って・・・」
父親の困惑にわたくしは笑い声を上げた。
「夫という買い手にわたくしという所有物を売り飛ばしたお父様が何を言ってらっしゃるんです?実家へ小麦を譲ってもらう代償が何か知ってらっしゃいます?」
「代償?」
「ええ、わたくしはシュテット前侯爵に二週間という期間売られるんですよ」
父の間抜け面に腹が立つ。
「わたくしを弄ぶことに飽きてきたらこの家の収益に還元できる人に貸し出されるんですよ。わたくし」
わたくしの言っている言葉を理解できないのか、何度も目を瞬き一つの結論にたどり着いたのか恐る恐る私に尋ねてきた。
「そんな事は・・・ありえないだろう?」
「お父様は夫に小麦のためにわたくしを売り飛ばしたんですから、想像すれば解るでしょう?夫というわたくしを所有する男は、わたくしが若い間に色々な人に貸し出して、この公爵家を盛り立てているんですよ」
「そんな・・・ありえない・・・」
「前妻の子どもたちに女を教えてやれと言われたのが最初でした。二人の子供達を相手した褒美はこの家で行うお茶会でした。
わたくしの友人を呼んでもいいと言われましたが、友人などもういません。結局夫の虚栄心を満たすものでした。夫はわたくしを貸し出すとそれからしばらくはわたくしに執着して、どうやって抱かれたのか尋ねながらわたくしの心を、傷つけるんですよ。そして酷く扱って喜ぶんです」
父が娘を売った先がどんなところか初めて知ったこの瞬間は笑いが止まらなかった?
「嫉妬なのでしょうかね?わたくしとはマンネリ化していた関係に一石を投じたのでしょう。わたくしは今もこの家の親子三人に好きに扱われます。そして、夫が決めた相手への貸し出し。わたくしが外の世界に触れるのが怖いのか、この家の中でその行為は行われるのです。お父様は聞いたことがありませんか?この家に時折誰かが不自然に滞在することを」
父は一瞬考えるようにして、直ぐに思い当たることがあったのか、慄くように震えた。