第7話 トラベラー、いやトラブラー
少し短いです。
悪しからず。
{{・・・}}
絶句しているソーンを他所に、零士はフィーニャの方を向く。
「フィーニャ、”アイツら”ってことはまさか」
〖そうニャ、”マーダーラビット”ニャ〗
マーダーラビット、この世界でのEランクの戒獣(ソーンの世界でAランク)。群れて行動する小型のうさぎ型戒獣だが、群れの単位が数万を超える。
1匹見たら1万はいると思え。
あの黒い悪魔と同じレベルでやっかいな戒獣だ。
「ってことはあの土煙って……」
〖その群れの猛ダッシュの後ニャ。順調にこっちに向かって来てるニャ〗
「結構やばいんじゃないの?」
〖ニャ、こういう時の為の準備はしてきてるニャ〗
フィーニャは”ニコ”っと笑い、森を疾走しながら上空に向かってサムズアップする。
山から離れながらまっすぐに走るフィーニャ。
走るその先には、水面がエメラルドグリーンに光る湖があった。
〖行くニャ!スキル〈半獣〉ニャ!!〗
スキル〈半獣〉、身体の一部を獣化し、身体能力を上げるスキル。
フィーニャは手足を獣化し走る速度を上げ、眼前に迫る湖に向かって一気に加速する。
〖とう!ニャ!!〗
湖にそのまま突入するかと思われる勢いのまま、フィーニャは湖の上を跳躍する。
それはさながら体操選手かのよう、縦に横にクルクル回りながら湖を超えていき、両足で対岸に着地。
満点な演技だ。
〖これで大丈夫ニャ〗
「え?これでって?」
〖まぁ見てるニャ〗
ものすごい勢いで土煙を上げながらこちら日向かってくるマーダーラビットの群れ。
その影が湖の岸辺に現れ始め、マーダーラビットの姿が分かる。
耳の横に2本のツノがまっすぐ生え、口には上下2本ずつの鋭い犬歯、足の爪は鋭く尖り、両手のからは鎌のように湾曲する鋭い爪が生えている。
マーダーの名に恥じない、命を刈り取ることに特化したような姿だった。
「うーわ、やっぱえげつない見た目だなぁマーダーラビット」
{{アレが・・・うさぎ?}}
ソーンがようやく思考の彼方から帰ってくる。
〖さぁ、来るニャ〗
先頭のマーダーラビットが湖を目にし咄嗟に止まろうとする。
しかし追従していた他のマーダーラビット達は眼前に迫る湖を視認出来ていないため、全速力で前に進む。
先頭のマーダーラビットが声を上げる。多分止まれの合図だろう。だが、その声は後方の仲間には伝わらない。
先頭のマーダーラビットはそのまま後方の仲間達に押しつぶされつつ、落水した。
そして勢いは収まることなく何千というマーダーラビットが湖に沈んでいく。
〖どうニャ!!〗
「おう、oh......」
{惨いな・・・}
落水するマーダーラビットの勢いは4〜5分続き、ようやく後方の仲間が止まった。
湖の岸の高さは約2mほどあるので、湖に落ちたマーダーラビット達は岸に上がることが出来ず、そのまま溺死していく。
残されたマーダーラビット達はというと。
なんと全力でフィーニャの方に向かって岸辺を走り出していた。
その数、まだ1万ほど。
〖ニャ、ニャンだってーーー!?〗
「やっぱり、こうなるよなぁ」
{{やっぱり?}}
「フィーニャにはね、通り名があるんだ」
{{俺の魔導王みたいなやつか?}}
「そうそう。さっき彼女がトラベラーだって言ったよね?」
{{あぁ、聴いたな。こちらで言う冒険者みたいなもの達なんだろ?}}
「そうなんだけど、彼女の通り名がね、ヤバいんだ」
{{ヤバい?}}
「うん、フィーニャはトラベラーの名をもじって別名”トラブラー”って呼ばれてるんだ。トラブルを起こすもの、持ってくるもの、って笑」
{{はぁ??}}
「だから、今回も多分こうなるんじゃないかとはずっと思ってたんだ笑」
{{いや、笑い事じゃないだろ!!目の前まで来てるぞ!?}}
「まぁ毎回、大概どうにかなるんだフィーニャのトラブルって。だから今回も大丈夫だと思ってるんだけど・・・」
〖あわあわあわあわあわ〗
{{流石に、先程ので策は尽きたみたいだな}}
「あっれ・・・どうしよう」
{{しょうがない、俺が手を貸す。上手く行くか分からないが。レイジ!彼女の手に《共有》を繋いでくれ}}
「手に?」
{{あぁ、早く!}}
「う、うん!《共有》!!」
〖ニャニャ?!ニャンだこれ!?〗
フィーニャの手の上に小さな黒い穴が浮かび上がる。
{{フィーニャ!!その穴を目の前にかざすんだ!!}}
〖ニャ?!誰かニャ?!〗
{{いいから早く!!}}
〖ニャ!わ、分かったニャ〗
フィーニャはマーダーラビットに向けて手を向ける。
{{さて、景気付けにデカいの行くぞ。行け、〈チェインライトニング〉!!}}
フィーニャの手から凄まじい勢いの雷が迸った。
《御礼申し上げます》
この度は、拙作を最新話まで読んで頂きありがとうございます。
自作が読まれるのは大変嬉しい事です。引き続き更新をしていきますので、読んで頂ければ嬉しいです。
新規の読者様、もしよろしければページ↓にある
『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして応援して貰えないでしょうか。
多くの人の目に触れることで感想ももらえるようになるので、作品を楽しく書くことができるようになります。
作者のモチベーション維持のために協力して頂けると嬉しいです。
後、フォローもしてもらえると助かります。
以上、図々しいお願いかと思いますが、何卒宜しくお願い致します。