第4話 意固地で独自で情けない”3の世界”のクリストフ
この子は書きづらかった泣
自分と性格似すぎてて……
ここからが本番だ。
前2つの世界は、とりあえずクセはあるが話の出来る人たちの世界だった。
ただここからは違う。
この先は1人で、一癖も二癖もある強者ばかりだ。
レイジは頬を叩き、気合いを入れ直してホロモニターに目線を移す。
モニターには6つの塔がそびえ、漆喰の白と青いタイルが埋め込まれた尖塔が目立つ豪華なお城が目に飛び込んできた。
ここは”3の世界”。
固有ジョブが階級、仕事、街のパン屋の行列の順番すらも(?)、全てが固有ジョブの優劣で決まる世界だ。
そしてここで零士が呼ぶのは・・・
「《共有》!えー、聞こえますでしょうか?聞こえますでしょうか?[勇者皇:クリストフ・サー・エリシウム]さまー?」
[・・・]
「あ、えーっと、勇猛果敢で世界最強の皇さまの[勇者皇:クリストフ]さまー?聞こえますかー?」
[・・・・・・]
「……はぁ。んんっ!!カッコよくてめっちゃ強くて、それでいて愛らしい一面もお持ちの[勇者皇]さまー?聞こえていらっしゃるでしょうかー?」
[・・・、うむ]
「ったく!長いんですよ!!毎回!!!こっちは緊急なの!!!!さっさと応答してください!!!!!毎回毎回応答パターン変えるな!!!!!!!」
柄にもなく大声で怒鳴り散らす零士。
《共有》の影響で、脳内をガンガン揺らす零士の大声に、今までだんまりを決めていたクリストフも流石に折れた。
[うむ……すまない]
「はぁ・・・はぁ...まぁいいです。それより緊急事態なので手っ取り早く今起きていることを《共有》します」
[わ、わかった。っんぐ!?]
急に大量の情報を《共有》したため、軽くダメージを受けつつ情報を受け取る。
[これは……非常にまずい状況なんだな。]
「そうです。この世界もこのままでは消える運命にあります」
[ならば国民にこれを伝え、最期の時を有意義に・・・]
「何言ってるんですか!?」
諦めの言葉を零士は遮る。
「他の世界の”僕たち”は諦めず、助かる手段を探してるのに、[勇者皇]である貴方は早々に諦めるんですか!?」
[出来ることと出来ないことがあろう。それを判断したまで・・・]
「だから、たった数時間でも出来ることがないが足掻くこともしないんですか?それで勇者なんて名乗ってるんですか?勇者は、国民みんなに希望を指し示す星なんじゃないんですか!?」
[だから、私にはこの事態を打開することは]
「バカなんですか?貴方は。」
[ば、バカとはなんだ!!]
「いやバカじゃん。バカ丸出しじゃん。早々に諦めて駄々こねてるバカじゃん」
[ババ、バカバカ言い過ぎなのではないか!?]
「いやだって、ここまでのバカだとは思わなかったから」
[だ、だって!!しょうがないではないか!!!]
勇者皇:クリストフ・サー・エリシウムは固有スキル[勇者皇]を持ったことにより、彼の住む国<勇者国ガルバ>の皇となった。
だが、それだけだ。
元々皇都の下町に暮らす平民の子だったが、15歳の成人の儀を受けた時、皇となった。
いや、[皇]になってしまったのだ。
でも、クリストフは[皇]になどなりたくなかった。
この世界には他にも[王]や[帝]になるスキルを持つものたちがたくさんいる。
固有ジョブの序列は武術系と技術系とあり、武術系は[無→豪or剛→真→王→帝→皇]、技術系は[無→弟or兄→師→王→帝→皇]となる。
その人たちにこの国を任せればいいのではないか。
自分は皇になんかならず、王や帝の人でもいいのではないか。
そんなことを儀式を終えた時に考えていた。
しかし、それは許されなかった。
皇を得てしまった。皇か生まれてしまった。皇が選ばれてしまった。
この事実は変えられない。
それに伴い、別の”モノ”が産まれる前兆でもあったのだ。
固有スキル[勇者皇]と対をなすモノ、固有スキル[破皇]の存在と、この2つの皇ジョブに対抗した第三勢力の固有ジョブ[獣凰]が世界で同時に産まれ出る事の、確たる証拠なのだ。
だが彼は、この混迷の時代を生き抜いた。
戦うことでしか存在証明が出来ない[破皇]を倒し、[獣凰]とはどうにか和睦を取り付けることが出来たのだ。
情けない自分であった。
弱い自分であった。
ただひたすらに普通でいたいと願う自分であった。
でも、[皇]として立たなければならなかった。
立つしかなかった。
立たざるおえなかった。
だから、立った。
だから、戦った。
だから、前に出た。
だから、支えられた。
多くの家臣たち、多くの国民たち。
そしてレイジに。
彼は見てくれていた。
ずっと、見ててくれていた。
ずっと、支えてくれていた。
感謝しかない。
でも、今は違う。
この問題は、完全に私の範疇から逸脱している問題だ。
この世界を救うことは、どうにか出来た。
でも、この問題は他6世界にまで広がり、私の手からはこぼれ落ちる内容なのだ。
なのに。
「しょうがなくない」
[えっ?]
「しょうがなくなんかないんだよ。前にも言ったでしょ?僕が支える、僕が見てる、僕がみんなと《共有》して必ずどうにかするって。だから[獣凰マコラ]とも、どうにか和解出来たじゃん」
[獣凰マコラ]は[破皇]がクリストフによって倒された時に、漁夫の利を狙い攻めこもうとしていた。
だが、その目論見はレイジ達の作戦により瓦解し、結局和睦という形に収まったのだ。
[それとこれとは話が別では…]
「別なんかじゃない。あの時みたいにまたみんなで戦ってる。いや、あの時と比べられないほど多くの仲間たちが一緒にこの問題に挑んでる。だから[勇者皇]である君と、[ガルバ]国民のみんなの力を借りたいんだ」
[勇者皇]だけではなく[ガルバ国民]までをも巻き込み、この問題に対処する。
その考えに、クリストフは息を呑む。
巻き込んでもいいのだろうか。
あと数時間しかない世界の寿命に対して己とその周囲との過ごす時間ではなく、この世界と他の世界のために尽力してくれと、力を貸してくれと頼んでもいいのだろうか。
[勇者皇]としての立場をこんな形で使ってもいいのだろうか。
そんな思いが去来する中、レイジが言う。
「[皇]として、ではなくていい。一国民、一この世界を愛するものとしてみんなに頼んでほしいんだ」
[・・・・・・っで、でも]
「君が、クリストフが小心者なのは知ってるよ。臆病で慎重で石橋を叩いて壊すレベルなのは僕が一番知ってる。だから君に頼みたいんだ。この世界を、他の世界を救う手立てを、みんなで最後の最後まで模索して欲しいんだ」
[・・・うん、分かってはおるんだ本当は。うむ、だとか、よかろう、だとか皇様らしく振る舞おうと努力してきたが、性根は変わらない臆病者だ。でも、そんな私を、レイジ、君は頼るんだな?]
「うん!全力で頼らせてくれ!!」
[はぁ……分かった。では直ぐに国中の研究者達にこの事を知らせる。そして我々のジョブやスキルが生きる道、解決への糸口にならないか探ろう!]
「頼むよ!」
と、零士が笑顔で答えた時、
{レイジ!おい!レイジ聴こえるか!?一つ思いついたぞ!!対消滅を回避する方法が!!}
{ソーン}から《共有》に通信が届いた。
《御礼申し上げます》
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