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第2話 0と1の世界

溢れてくるものを取りためるって大変ですね。

 ここは、言うなれば”0の世界”。

 全てを見通し、ここに集約され、ここから発信される起点の世界。


 だから”0の世界”


 だから知ってしまった。


 だからわかってしまった。


 だから絶望してしまった。


 この世界が、消滅すること知ってしまったから。


 この世界には世界事象観測研究機関《WEOR》(ウェオル)と呼ばれる機関がある。

 この機関では”0の世界”全体から優秀な研究者と、優秀な能力を持つものが集まり、我々の住む世界と違う6つの世界の観測・研究が行われている。


 ただし、直接その世界に干渉することは出来ない。

 あくまでも観測するのみだ。

 それは何故か。


 この世界が<消滅>するかもしれないからだ。

 何故、消滅する可能性があるのか。

 何故、消滅という言葉が使われるのか。


 それは<対消滅>という事象と関係してくる。


 対消滅とは素粒子と反粒子が衝突し、文字通り消滅する事象の事だ。

 よく分からないかもしれないがそういうことが起こる。


 少し言い換えると、ここに1枚の鏡がありその鏡の前に自分が立つ。そうすると、鏡の中に全て逆向きになった自分が映るはずだ。

 その鏡の中の自分と鏡の前に立つ自分は、何をどうしようと絶対に触れ合えない存在のはずだ。


 だが、もし触れることが出来てしまったら。


 その瞬間、自分と鏡の中の自分は消えてしまう。

 絶対に触れ合えないものが触れ合った時、必ずどちらも消滅してしまうのだ。

 正(+)の世界に存在する現実の自分、負(-)の世界に存在する鏡の中の自分。


 +と-の物資が同質・同量であり、その2つが触れ合えば、物資の総量をどちらも1と仮定すると、1と-1が交わり <1+(-1)=0> となる。

 0ということは消滅だ。


 これが今この世界で起きているのだ。


 同質・同量の世界が0世界以外に6つあり、0を含めて7つ時空の違う異世界がぶつかり合い、そして消滅する。


 そして対消滅は、消滅直後にとてつもないエネルギーをその場に残す。


 数gの素粒子と反粒子がぶつかり合い対消滅が起こると、規模にして原子爆弾レベルのエネルギーが発生する。

 それが時空を超え、7つの星レベルで起きるのだ。

 もしそうなれば、宇宙規模での爆発、小規模なビッグバンと言ってもいいレベルのエネルギーが、全ての時空の宇宙全体に広がる事になる。


 下手をしたら宇宙も消える。


 そんな事実を突き付けられた”0の世界”に、1人まだ呑気に世界観測を続けている者がいる。




 彼の名は<六枳零士(ろくしれいじ)>。

 16歳の高校生であり、世界で唯一他の世界に自分の同一個体を確認することが出来た子である。

 そんな彼はずっとモニターとにらめっこを続けている。


「うーん、やっぱ何も変わりなしかぁ」


 彼が見ているのは観測が始まってから一度も変化のない世界”6の世界”。


「おーい!シスー!世界がやばいんだってよー!」


 ホロモニターに向かい声を出す。

 だがその声は届かない、普通なら。


 《WEOR》の規定により観測員は世界の観測はできても干渉は固く禁じられている。

 でもこの<六枳零士>にはそれが当てはまらない。


「ったく、もっかいやらなきゃか。えーっと、《共有》!」


 零士を中心に見えない波紋が広がる。


「これでどうかな?おーい!シースー!聞こえるー?」


 さっきの見えない波紋は零士にだけ芽生えた力、スキル《共有》。


 自分の意志や感情、言葉などを指定した相手と共有、つまりは時空も関係なく届けることの出来るスキルだ。

 そもそもスキルなんていうものは、この0の世界でもほぼほぼ発現することの無いものだ。

 何がきっかけでどういう条件で発現するのか、全くわかっていない。

 ただ1つ言えるのは零士は芽生えた人物だということだ。


「シスってばー、聞こえてるだろー?脳内に語りかけてるんだからさー」


〘何度やっても変わらないだろうよ。今迄全て無反応なのだから〙


 零士の脳内に自分とは違う少し静かな声が響いてくる。


「ビルは冷静過ぎない?一応世界の危機らしいだけど?」


〘そうは言われてもな、我々にはそれがどういうものなのか、いつ起こるのかわからんからな〙


 この声の主は”1の世界”の零士の同一個体、<ビル・ボトロフ>。”1の世界”と呼ばれる1番最初に0から観測された世界の住人で、蒸気機関と数式と錬金術で繁栄した世界の国際錬金機構主任研究員である。


「確かにそうなんだけどさぁ。上の人も数時間後としか言わないし」


〘その事象が分かれば私が計算出来るんだがなぁ〙


「え?じゃあ共有する?」


〘ん?そうか!出来るじゃないかお前なら!〙


「それじゃ、すぐ共有するよ!!」


 零士はホロタブレット、略してホロタブを起動し対消滅の報告書を映し出し、目を通していく。


「よし、《共有》!」


〘む、届いたぞ!少し待っていろ。直ぐに残り時間を計算する〙


「お願いビル!」


〘任された。そっちも望みは薄いがシスに声を掛けてやってくれ〙


「あぁ、続けるよ!」


 再度”6の世界”に顔を向ける。

「シス、多分君なんだ。僕の共有が君と繋がることで、君の中の何かが訴えてくるんだ」


 ホロモニターに映る赤茶けた大地に1人佇む存在<シス>。


 ”0の世界”から始まる危機はまだ彼には届かない……

まだまだ対消滅しません笑

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