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【書籍化】ジジババ勇者パーティー最後の旅  作者: 福郎
第三章

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師匠

(さて、サイラスはどうしているか。恐らくすぐアルベールまで報告が届き、色々と試されてはいるだろうが……) 


 とある川辺。

 サイラス少年に師匠とだけ呼ばせている男が、魚を焼きながら物思いに耽る。

 どうやら一方的に話しかけてくる弟子がいなくなったことで、ついつい考えることが増えたらしい。


(自分の修行が楽しくて仕方なかったが、教えるのも楽しいと思えたとは、我ながら今更の発見だ)


 己を鍛えるのが楽しくて仕方が無く、世間で誰かと交流する暇があるなら修行する程の、ある意味極まった修行馬鹿が、サイラスとの日々を振り返る。

 何を教えても即座に吸収して昇華する、モンクにとって悪夢のような天才児でも、師匠からすればまだまだ未熟者だ。

 それと同時に、自分の技術を確かに継承してくれた愛弟子でもある。


(あの弟子はどこまで行くか……あと十年は確実に生きられるだろう。恐らく見届けられるな)


 七十を過ぎ、死期を悟っている師匠だったが、それでもサイラスの完成は見届けられるだろうと判断していた。

 私の弟子は二十と少しでモンクの極みに到達できると宣ったなら、多くの人間が失笑するに違いない。ついでに、シュタインという実例を知っている者たちでさえ、あの大天才が例外だっただけで、そんなことはあり得ないと断言する筈だ。


(才能だけならシュタインに匹敵する。ただし、運が良ければ大戦級の出来事を経験しない筈だ)


 その筈なのに、シュタインを知っている師匠は、己の弟子なら匹敵する才能を持ち合わせていると断言した。

 例えどれだけのモンクから失笑されようが、師匠はその意見を曲げるつもりがない程に。

 とは言え以前にも述べた通り、サイラスがシュタインと肩を並べるには、大戦のような環境で研磨する必要があり、それを経験しないに越したことはない。


(まあ、大戦そのものは起こらないが……他の騒ぎはどうだろうな)


 師匠は焼けた魚を口に運ぶ。

 世に潜んでいた謎。巨悪。理解不能なナニカ。そう言った類の存在は、大魔神王が大暴れした余波で目を覚ましたか、世界の混乱がこれ以上ないチャンスであると判断して蠢動した。

 だがそのほぼ全てが勇者パーティーに敗れ去り、なんなら一部は大魔神王が消し飛ばしている。

 それに最大の問題だった神々もすでに零落し、師匠は知らないことだったが、大戦後に最大勢力だった神たちも、勇者フェアドの息子の殴り込みで見る影もない。

 そのため危険らしい危険は発生しないように思えるものの、何が起こるか分からないのが世界というものだ。


 師匠はフェアドの息子の件以外、それをよく知っていた。


(ふ、まるで親だな。親か……)


 師匠はサイラスの将来を考えている自分に気が付き、内心で苦笑しながら自分の親を思い出す。

 短気に見えて割と待つ。不器用に見えて妙なところで器用。雑な癖に変なところで筋を通したがる親。


「お師匠様ー! お師匠様ー!」


 師匠が物思いに耽っていると、静かな川辺をかき乱すような大声が発せられた。


「お師匠様ー! お客様をお連れしましたよー!」

(まあ、煮え立つ山から誰かが来るとは思っていたが、タイミングが良かったのか悪かったのか。よりにもよって時期が重なったようだな)


 聞き馴染んだ弟子の声で、師匠は再び苦笑しそうになる。

 送り出した筈のサイラスが客を連れて来たとなれば、煮え立つ山でもその才能をいかんなく発揮し、師匠とはどういう人物なのだろうと興味を持たれた。

 通常ならばそう考えた。

 通常なら。


「彼を見て七十年前を思い出した」


 その客が呟く。

 客が若者だった時の八十年前ではなく、七十年前。

 開祖アルベールが思い出していたものとは違う時代。

 空が真っ赤だった時代。全てが生きるのに必死だったあの時。

 あの山での戦い。


「流派名が無いのはそういうことかと思った」


 客の言う通り。

 事実として師匠に受け継いだ流派名はない。

 ただ、モンクを殺すために生み出された技術の集大成だ。


「なんと呼べば?」

「そうだな。完全な同一個体とは言い難いが……」


 客。否、宿敵の問いに師匠は頷く。

 怨念の吹き溜まりである父が行った最後の大仕事。悶え苦しみながらも子の、信徒たちの魂から灰汁(怨念)を引き抜き、馬鹿達の攻撃を利用して、俺から独り立ちしろと無理矢理でも暗黒から蹴飛ばした頑固者にとっての、やはりイレギュラー中のイレギュラー。

 起きていたら、やっぱこいつおかしいぞと首を捻っただろう。


 サイラスの疑問に曖昧ながらも答えよう。

 シュタインが一位ならば師匠はどの位置だろうか?


 ところで大戦再勃発を除いて、モンクたちが最も恐れた事態がある。


 生き残ったモンク殺しが終戦後も研鑽を積み続けた場合、いったいどうなってしまうのだ。と。

 それに限りなく類似していた。

 最早開祖アルベールすら及ばず、比肩する者がいるとすればシュタインただ一人。

 そして必ずしも完全な同一個体とは言い難く、本人ではないだろう。

 だがそれでも、それでもだ。


「黒煙でいい」


 モンク殺し。

 ではない。

 自然発生した精霊なのに肉を持つ特殊個体は、(大魔神王)から授けられた名を名乗った。

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― 新着の感想 ―
お前……お前なぁ……! ほんとそういうとこだぞ大魔神王てめぇ……
黒煙でしたかー。 ---------------------------- ・最大勢力だった神たちも、勇者フェアドの息子の殴り込みで見る影もない。 面白い事をしてますね、フェアド息子。 マトモな神達…
やはり…と思いつつ少し違う。 正気を失いながらも、体内の信徒たちを浄化し、消滅しないように世に解き放つとは…! とても本人のコマンドが「殴る」しか無いとは思えない器用さですわー。まあ召喚とかしてるけど…
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