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コミカライズ決定記念 大戦前の裏

7月18日よりDREコミックにてジジババ勇者の配信が決定!

これも皆様のお陰でございます!

ありがとうございまああああああああああああああああああああす!

 寝起きは最悪だった。最悪も最悪だった。

 しかし、その次の瞬間には驚愕した。


「どわっ⁉ 誰だお前ら⁉」


 青年が飛び起きると、その傍には二人の少女がいた。

 つまり青年の自宅にいた不法侵入者という訳だ。


「あの……貴方はどのような方でしょうか?」

「だれですか?」


 尋ねる少女達は、寒村に行けばどこにでもいる人間だ。

 茶色の髪や瞳、日に焼けた肌はくすんで汚れ、栄養状態も悪く、容姿に優れている訳でもない。


 そして姉妹なのか、ようやく十代になった年頃の姉に比べ、妹の方はまだ幼く、喋り方もたどたどしかった。


「どのような方で誰って言われても……」

「偉い……人なのでしょうか?」

「すごい?」

「まあ、そうだな。おう。偉いかどうかは知らんが、凄いのは間違いない。かなり。超」


 困惑する青年は少女達の問いに、おぼろげながら把握している認識で答えた。


「それより無断侵入するんじゃねえぞ。とっとと帰れ帰れ。あー、多分こっち……だよな?」

「キャッ⁉」

「わわ⁉」


 色々と面倒になったのか、青年は有無を言わさぬ勢いで二人の少女を肩に担ぐと歩き始めた。

 その足取りはしっかりとしており、小柄とは言え人間二人を担いでいるようには感じさせない。


「あ、あの!」

「どう考えても歩幅が違うんだから、しばらくじっとしてろチビッ子共。お前ら名前は?」

「え? ……あれ?」

「おなまえ?」

「ふーむ。まあ、思い出した時でいいさ」


 身動ぎする姉を気にせず青年は歩き単純な質問をしたが、返答はなぜか戸惑ったようなものだった。


「す、凄いということは、貴方様は……ひょっとして神様ですか⁉」

「おうさま?」


 まだ青年から降りようとしている姉は、隙を見つけるために話題を戻し、あまり物事を知らない妹の方はきょとんと首を傾げ、自分が知っている一番凄い存在を捻りだした。


「ははははははは! 俺が神とか王って! ははは! ん? んー……んんんんんんん?」


 笑い出した青年はその途中で考え込んだ。

 いきなり神や王と呼称されても困るが、入ってくる知識に従えば神と言えなくもないし、この場を領地だとすれば王と言えなくもない。


「両方……そう……言えるのか? どうなんだ?」


 結果、青年はなんともあやふやな判断で頷いた。


「し、神王様⁉」

「しんおうさま?」


 このかなり大雑把かつ適当な返事に姉は慌て、平伏するため更に身動きが激しくなったが、妹の方はよく把握できていないらしい。


「ま、別に偉い訳じゃねえさ。なんせボッチだからな。おっと、可哀想な目で見るなよ?」


 ニヤリと笑った青年が肩を竦める。

 そう、本来は妙なところで面倒見がよく、必ずしも悪性の存在と断言できる存在ではなかった。


 だが少なくとも今現在は……寝ぼけていたと言っていい。


「あん?」


 青年、ではなく黒い靄がようやく自分の状態を認識した。


「んがっ⁉」

「あああああああっ!」

「やあああああああああ!」


 ある意味で正常が三人に追いつき、その存在を粉微塵に割いた。


 バラバラになり、裂け、弾け、飛び散り、そして正しい構築を果たす。


 流れ込む千年の恨み。怨念。悲劇。妄念、憎悪。

 死。


「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!」


 なんとか少女達を降ろした靄が頭を抱えて蹲る。

 ただ揺蕩い、眠っていた間に積み重ねられた負が靄を苛み、縛り、かつてない弱体化を施したが、代わりに理性が弾け飛ぶ寸前だ。


「かみさま……」

「おうさま……」


 ギリギリ耐えていた靄が自分を呼ぶ声に頭を上げ、見てしまった。


 眼球のない姉と血に塗れていた妹を。


 その背後の光景も。


 姉妹の祖父母が炎の中で踊っていた。

 父の顔には幾つもの釘が刺さり、舌は裂け、人としての形を保っていなかった。

 母の体はあざだらけで顔は腫れあがり、尊厳を奪われ、息絶えた。


『あははははははははは!』

『はははははははははははははは!』

『はははははははははは!』


 それを笑う兵士達。人間。命。

 ゲラゲラと、けらけらと、楽しそうに、否。そうに、ではない。楽しんでいる

 これが光? これが? こんなものが?

 ただ平穏に暮らすことすら許容しない存在が?

 光だと?


 喰うために殺してるそこらの獣の方がよっぽどマシな存在が光?


 命を奪うことまで否定しない。


 だが何故辱める? 何故楽しめる? 何故笑える?


 全ての命がそうでないことくらいは分かる。だが、だがだ。

 振り返った後ろで聳える、天まで届く屍の山はどう説明する。


 男も、女も、老いも若きも、乳幼児どころか胎児まで!

 単なる死体ではない。理不尽を受け果てた者達の亡骸、怨念の集合体を!


『アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!』


 笑い声が靄の正気を追い詰める。

 積まれている亡骸は誰も彼もが嘆き悲しんでいるのに、その原因はどいつもこいつも笑っている。

 神のために。正義のために。大義のために。国家のために。

 笑い、笑い、笑い続ける光が命を奪い続けてこのザマだ。


「かみさま……」

「おうさま……」


 再び靄は姉妹に呼ばれる。


 神は救ってくれなかった。

 王は救ってくれなかった。


 誰かが彼女達にとっての神に、王になる必要があった。


 靄の足に縋りついていた姉妹が、塔の如き屍の山が口を動かした。

 百の。

 千の。

 万の。

 百万の。

 夥しい命が。

 光が願ったのだ。


『復讐を』


 願いを聞き届けた。


 しかしそれでも、それでも筋は通さねばならなかった。

 通そうとして人に拒否された。

 神に命を惨く扱うなと、魂をきちんと管理しろと迫ったのに約定を違えられた。


 世界の中心である主流派の神は自己を優先した。

 彼らに従い、世界を構成する者達はその神を優先した。


 もしリン王国など主流派の神ではなく、ドラゴンや別の神が影響力を発揮する国家と関わったなら、多少はマシだっただろう。しかしそれでも結局は、破滅までの時間を僅かに先延ばしただけだに違いない。


 だからこそ名乗った。


 揺蕩う原初混沌の切れ端。違う。

 原初の神、闇。違う。


 神を、王を、光を絶やすために。

 神として、王として、死に安寧を齎すために。


「我こそが世界の敵! 大いなる魔にして神の王! 大魔神王なり!」


 世界が、空が、赤に。

 積み重ねてきた怨念の血で赤く染まった。

大戦前の表、勇者パーティーの若い頃はコミカライズ配信日にあげる……筈(*'ω'*)

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
復習をし終わった後に何が残る?知らんのか?新たな復習だ!!
復讐だけで済めば、まだセウトなんだけれど、「この世界まるごとオカシイから総て亡ぼす」というのが、ですねぇ……。 ある意味、勇者側も、巻き込まれた命あるモノたちからの大魔神王への復讐なんですよねぇ……。
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