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神の館

一応確認はしてますが、高熱でダウンしてた時の話が混ざってるのでおかしい箇所があったらご指摘ください。

「琴と金槌の店主、オスカーです! 宝剣についてのご相談を受けてお伺いしました!」


「お、お待ちしておりました。そちらの方々は……」


 オスカーは早速、神殿の外にいた聖職者に声を掛けて仕事を始めようとしたが、その聖職者はオスカーの外見とテオ達が気になったようだ。


「あ、偶々会ったうちのお客さんです! 観光中で、こちらの神殿を見学されたいとのことです!」


「冒険者パーティー、底明かりのリーダー。テオです」


「……それはそれは。どうぞゆっくりされてください。オスカー殿、こちらへ」


 オスカーの説明とテオの自己紹介で、聖職者は納得したように頷き、仕事の説明をするためオスカーを促す。


 しかし、テオ達が首から提げている牙。迷宮産ドラゴンを殺した証を見た聖職者の瞳には、とある感情が隠れていた。


「それじゃあ自分はこれで! 王都の観光楽しんでね!」


「はい。ありがとうございます」


 気楽な顔のオスカーとテオ達は神殿の前で別れる。


 神殿は基本的に開放されている場所だが、仕事で来ているオスカーは奥で話す必要があった。


「なんて言うか……いろんな意味で凄い人だよね」


「ですねー」


 怪鳥のような姿のまま神殿へ歩いていくオスカーの後ろ姿を見て、テオとミアはぽつりと漏らした。


 変わり者が多い冒険者でも、鳥を模したひらひらの服を着て鶏の鶏冠のような髪をしているのはそうそういないだろう。


「それに……」


「ああ。前に言った通り、エルフの中でも年寄りの部類だな」


 テオが若干困ったようにフレヤを見ると、ドワーフの彼女はオスカーがエルフでも高齢の部類に入ると補足する。


「大戦でエルフもドワーフも大きな被害を受け、年寄り達は数を大きく減らしたら、あれだけ元気なのもそうはいないだろう」


 フレヤは話しながら神殿の外を見るために正面から逸れて歩く。


「ふむ。確かに見事なものだな」


「ドワーフから見てもか」


「ああ。それこそ我々の祖先が関わっているかもしれん」


 フレヤは神殿を評しながらエリーズに頷く。


 レイモン神の神殿は華美な装飾こそないが、建築に情熱を注ぐドワーフが関わっているのではと思わせるようなものだった。


 話は変わるがこの一行は全員が武器の類を所持している。


 職業上、恨みを買いやすい冒険者が非武装なことはそうそうなく、大戦なんてものが起こった世界であるため、神殿に武装した人間が訪れるのも珍しい話ではない。


 そして高位冒険者の得物は見てわかる力強さを宿し、更に迷宮ドラゴンを討伐した証を首から提げているとなれば、色々と魅力的に映るだろう。


 話を戻そう。


「突然申し訳ありません。ひょっとしてその牙は迷宮ドラゴン討伐の証ではありませんか?」


「あ、はい。そうです。迷宮都市ユリアノで討伐しました」


「それはそれは……」


 ゆっくりと近づいてきた聖職者の質問に、テオは慣れた説明を返す。


 まさに神の導き。


 高位の冒険者は貴族との関わりを持つ者が多く、一部の者はリン王国の青きドラゴンが悪龍と迷宮産ドラゴンを目の敵にしていることを知っている。


 そして当然、暴力の専門家となれば求めている人材の理想像に近い。


「中もどうぞご覧になってください」


「えっと、それじゃあお邪魔させていただきます」


 聖職者はにこやかな顔で、テオ達を神の神殿に招き入れた。


(なにかの作業中なのかな?)


 中は一見すると、通常の神殿と変わらない静謐さを宿しているようだ。しかし、テオは隅にある木箱や椅子に土埃が付着していることに気が付き、神殿がなにかの作業をしているのではと思った。


「自分は責任者のマティアス大司祭と話してきますので、少々お待ちください。きっとマティアス大司祭もお話をしたい筈ですので」


「分かりました」


 聖職者がこの場から離れると、テオ達は神殿の中を見学する。


 だが妙なことに気が付いた。


「あれ? こんなところに足跡?」


 高位冒険者は迷宮の罠を回避するため、どんな些細な違和感も見逃さないと言われているが、それはテオも同じだ。


 しかし、今回はその観察力など必要なかった。


 神殿内部では土や泥が固まった痕跡が僅かに存在しており、一番汚れそうな入り口には目立った汚れがないことがすぐ分かる。


(地下があってなにか作業してる?)


 この内部に限定している土汚れを見たテオは、神殿に地下が存在しており、そこを出入りしている人間が何かの作業をしているのではと推測した。


 だがその想像も、突然の怒号で中止することになる。


「絶対に逃がすなああああ!」


「え!?」


 神殿の奥から響く不穏な内容の声に驚いたテオ達は、警戒態勢になって原因を探ろうとした。


 すぐ現れた。


「逃げるよ! なんか盛られそうになった!」


 奥から走ってきた怪鳥、オスカーがテオ達に警告を発しながら入り口を指差す。


(全く! 狙いはうちの武器か伝手か! どっちにせよ傍迷惑な!)


 そのオスカーは心の中で悪態を吐く。


 王都で著名な武具店となれば、身を狙われることも十分考えられるが、オスカーもまさか神殿の大司祭から飲むよう促された茶から、危険信号を感じる羽目になるとは思っていなかった。


 しかもマティアス大司祭は、オスカーが茶を飲まないと判断するや即座に制圧しようとしたので、この武具店の店主は慌てて逃げ出したのだ。


 そんなオスカーの行動は空しく、神殿の入り口は魔法的な技術で強固に封鎖される。


「死ね!」


 更に追うマティアスはテオ達の詳細を聞いていなかったため、気にすることなく口封じの魔法を行使する。


 逃げ場を断たれた上で漸進層に分類される威力の、魔法エネルギーが発射された。


 つまり意識が切り替わるには十分だった。


「君がだよ」


 齢は三百を優に超え、戦士としては二百年と少し。


 大戦に最初期から参加しているどころではない。


 その前の時代の人とエルフ、ドワーフとエルフの戦いにすらも従軍し、なおも生き残っている男。緑隠れオスカーの意識が切り替わるには。


「ぎゃあああああああああ!?」


 絶叫を上げるマティアスの両目にはいつの間にか、枝のようなものが突き刺さっていた。




 -ちっ。緑隠れの名前の由来だって? 葉っぱや森に隠れてたからだぁ? ちげえ。もっと直接だ。最後に見るのが、自分の目に突き刺さった枝になるからだ-

 古いドワーフ

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― 新着の感想 ―
[一言] 多分大戦に参加して生き残った奴ら一人一人がこの時代の悪の組織とか単身で潰せるクラスの奴らだと思うんですよね(真顔) ……つまり老セガールが大量に存在する世界か
[一言] あ、やっぱりオスカーも強いじゃん。
[一言] HAHAHA…草人にしてやろう
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