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神々

 神聖なる花園。


 様々な美しい花が咲き誇り、白き神殿が立ち並ぶ神々の住まいでも大魔神王復活についての話し合いが行われていた。


「それでは始めましょう」


 円卓に座る五人の神の頂点である女神、ブランシュが言葉を紡ぐ。


 清楚や清廉という言葉が相応しい女神は豊かな金の髪が宙に浮き、慈愛が宿ったかのような青い瞳と白い肌が輝いているようだ。


 しかし慈母のような外見とは裏腹に非常に強力な神であり、実力でも頂点に位置していた。


「大魔……」


 そんなブランシュは話そうとした途端、困ったように首を僅かに傾げた。


 だがそれも仕方ないことだろう。彼女が口にしようとした大魔神王の名は、よりにもよって神の王という呼称が使われているのだ。そして神々の中でこの呼び方は最も神聖なものであり、敵に対し平然と使用している戦神ラウなどはかなり少数派だった。


 実際これは大魔神王が神々に喧嘩を売るために名乗り始めたようなもので、当時の神は不遜と騒ぎ立てたことがある。その神々は死滅したが。


 ブランシュもそれを気にして言葉を止めたのだろうが、これでは話が続かない。


「大魔でよろしいでしょう」


 そんな女神へ助け舟を出すように、戦神にしてブランシュの腹心でもあるシリルが口を開く。


 この戦神は単純な格ではラウすらも凌ぐ存在だが、容貌は真逆と言っていい。骨格が太いものの背が低く髭もじゃなラウに比べ、シリルは風采が優れた細身な男であり、ブランシュと同じように金の髪が光り輝いていた。


 更にはラウの得物は武骨なハンマーだが、シリルのものは黄金に輝く美麗な剣であり、この点でも優雅だと言えた。


「では大魔(だいま)と」


 シリルに助けられたブランシュはそのまま大魔という呼称を用いる。


 これならば単純に大きな魔となるため、神々にとっても使いやすいものだった。


「大魔が現れた場合に止められる神は、我ら以外にいそうですか?」


「いないでしょうなあ」


 ブランシュの問いに、豊かな白い髭を伸ばした老神レイモンが答える。


 この老神は経験に裏打ちされた知恵者というより、飄々とした雰囲気を醸し出しているため胡散臭く感じる者が多いものの、ブランシュに対しては真摯に対応していた。


 そして魔法に似た力を扱え、外見とは違って強い力を宿していた。


「雑多な神では対応は不可能。限られた極一部の戦神も、地上へ完全な顕現を果たすための時間が必要となれば、完全に後手となるでしょう。例え今から準備しても間に合うことはないかと」


 レイモンは客観的な事実を告げる。


 大戦で力を落とした神々は、完全な力を持ったまま行動するのに準備時間が必要で、事態が即座に発生すれば後手に回ってしまう。


 現に地上にいるラウは分霊とも呼べないような影であり、大魔神王が復活しても碌な行動が取れないだろう。


「青き龍はどうです?」


「か、可能性は僅かにありますが、街中で復活した大魔と戦った場合は他が全て砕けるでしょう。そ、それを考えるとまともに対応はできないと思います」


 続いてブランシュがリン王国の守護龍である青き龍について尋ねると、気の弱そうな青年の姿をした神アダラールが答える。


 多くの神と同じように金髪碧眼を持って生まれた彼だが、言葉に詰まるまで気が弱いのはそうそう存在しない。


 だが破壊の概念を行使できるアダラールは強力な神であることに違いなく、この場にいる者も彼を侮るようなことをしない。


 話を戻すがアダラールの言う通り、青き龍であるエリーは王都で戦闘を行うと全てを巻き込んでしまうので、何もしない方がマシだと断言できる。


「がはははは! 八方塞がりというやつだな!」


 最後の神にして、戦神シリルの兄であるコランタンが豪快に笑う。


 顔立ちこそシリルに似て同じ戦神ではあるものの、コランタンの方がより屈強で逞しく、まさしく戦神と呼ぶに相応しい体格をしていた。


 しかし、笑い方や発言から分かる通り細かいことを考えない性格のため、ブランシュからの信頼は弟の方が厚かった。


「あれだ! 大魔を倒した者達はどうなのだ!」


「兄者。定命の者にとって百歳は死ぬ手前だ」


「それもそうか!」


 普段から大きな声のコランタンは全員からもう少し抑えて欲しいと思われながら、弟の非常に常識的な答えに頷く。


 シリルの言う通り勇者パーティーは高齢であり、フェアド達も大魔神王の最終形態には付き合いきれないと判断している。


 つまりもし大魔神王が完全に復活してまた暴れた場合、通常の手段では止められないことを意味していた。


「気張るとしよう! がははははははは!」


 再び豪快に笑うコランタンに、主であるブランシュを含めた全員が頷く。


 復活した大魔神王と戦うならば、有象無象の神では役に立たず戦神も準備が必要。青き龍は王都を灰にしてしまう可能性がある。そして勇者パーティーは高齢となれば、神々の頂点に位置するこの場にいる者達が無理をしてでも頑張るしかない。


 地で蠢いている者達と同じく神も大魔神王復活に備えていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] なに笑とんねん!!
[良い点] 一切油断しない体制側。 〈彼のモノの復活の可能性は有りましたが、結局未然に万全に阻止されました〉 なんてのも有りそうな。 [気になる点] 〈フェアド達が死後に神に至り、大魔神王的存在になる…
[気になる点] 壊滅的な被害を与えた脅威に対してトラウマならともかく「我々にとって神聖な名前だから」って理由だけで呼び方を変えるのはちょっと神の傲慢が出てるのでは・・・? [一言] 勇者より長い時を生…
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