幸せ
暑い夏、扇風機の風に当たりながらタバコを吸っていた。
「また、きみはタバコ吸って!」
「もう20歳になってるからいいやん」
芸能界で仕事があったのも若いうち。
大人になると徐々に仕事が無くなっていき、
今では彼女の家にヒモのような形で彼女と暮らしている。
「きみはもうそろそろ親になるんだから…半年はやめといてよね!」
と彼女が洗濯物を畳んでいる。
親?
「え?親って?」
「言ってなかった?わたし妊娠4ヶ月なんよ」
「は?俺が親?」
今の仕事を辞めないといけないかとかグルグルと頭を周り聞いてしまった。
「仕事を変え」
「きみは仕事なんて変えなくて良い!将来売れるからそれまで頑張りなさい!」
俺の言葉をさえぎって、そう言った。
「幸せにするからな」
タバコを消して彼女を向き直した。
扇風機の首の降った風が彼女にあたり髪の毛がゆれて耳にかけた。
「私が幸せにするの」
そう言って微笑んだ彼女は美しかった。