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条例都市  作者: こころ
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速度違反

「俺は法定速度を守っている。悪いことなんて何もしていない。飛ばす方が悪いにきまってる。」

車を走らせ、いつもの愚痴が飛び出す。

最近は煽り運転が問題視され、世間でも煽る方が悪い風潮であることが、余計に男の正義感を増長させていた。

30代くらいまでは男も飛ばして走っていた。

それでもスピードも標識で示されているものより10キロほどではあったが、それなりの流れには乗って走っていたのだ。だんだん年齢を重ねていくうちに、若い時ほどスピードを出さなくなっていた。

「歳には勝てんよ」

周りは言う。

男もそう思う。

「定年間近でスピード違反でなんか捕まるのもバカな話だしな。」

長年勤めてきた会社ではあったが、1年後には定年を迎え、その後の生活プランを考えていた。仕事一筋ではあったが、妻子に恵まれた。頑固ではあったが家庭は円満であった。

長く寄り添ってくれた妻にも感謝しかない。

「あなたは家庭を大切にしてきてくれた。私もあなたと一緒になれ、娘も産まれ、とても幸せよ。でも、変なところで正義感を振りかざすのは、辞めろとは言わないけれど、気をつけた方がいいわ。」

ふふふ、と照れながら、それでも最後に忠告するよな口調に変わり妻から言われた事があった。あれは、結婚して何十周年かの記念日だったか。結婚記念日の前日に、些細な事で騒動に巻き込まれ、妻と娘に諭された事を思い出す。自分では間違った事をしたつもりはないにしろ、他人から見たら余計なお世話という事だろうか。理解はしていた。しかし、男は黙っていられない性格だった。理解しつつもわ口に出さずにはいられない。

「悪を成敗、正義は勝つ。」

ここ数年は大人しくなっていた男ではあったが、久しくその正義感に火がついてしまった。

「後ろの車、煽ってきているのか?」

この街に入ったあたりから後に着いている車だった。ミラーから確認すると、ドライバーは30手前くらい。黒い短髪。パッと見は好青年という印象だ。

先日見たニュースを思い出す。

危険な煽り運転。絡まれて道路真ん中で停車させられる。

「けしからんな。」

そして男は後ろの車を意識しつつも、いつものように車を運転続けた。

「抜くなら抜いていけ。私はこれ以上スピードは出さん。」

標識は60となっていたが、男は40くらいのスピードで走り続ける。

後のドライバーが苛立つのが感じ取れる。

そんな事よりも男はスピード違反を防いでいる自分にある正義感にちょっと酔っていた。

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