3-4
「あれ? 呪いが……」
壺からリムに向かった呪いの気配が突然霧散する。意識を集中していたピエリスは、呪物から絶えず放たれる呪いが消え続けていくのを感じて呆然とリムを見つめた。
「安心していいわ。先に聖水を飲んで耐性は高めてあるのよ」
壺を抱えたリムが振り返り、ピエリスに空になった瓶を見せつける。
「呪物鑑定士だもの。対処法ぐらい心得てるわよ」
「そ、そうですよね。すいません、差し出がましいことを」
意図せずに侮ったような態度をとってしまったかもしれないとピエリスは慌ててリムに頭を下げる。
そんな様子を見つめたリムは気にした様子もなく小さく笑った。
「謝る必要はないわ。助けてくれようとしたんでしょう? その気持ちは嬉しいわ。いい子なのね」
「いい子、ですか。ありがとうございます。リムさんも無事でよかったです」
「そうね。聖水を飲んでいても多少呪いの余波を受けちゃったけどね」
リムは苦笑いを浮かべながら聖水の小瓶を取り出して中身を飲み干した。
「かなり強力な呪いね。殺す意志のある呪いだわ」
「もし必要なら治しましょうか? それに壺を持ってたら呪いが出続けて……あれ?」
「さっきの聖水で完全に治ったから大丈夫よ。呪いも私には反応しないようにしたわ。それよりも早く貴方を聖女様まで連れて行かないとね。着いて来て」
そう言ってリムは協会へと振り返ると、壺を抱えたまま奥へと歩みを進めた。
「あ、はい!」
少女に触れているはずの壺から呪いが発生していないことに首を傾げながらも、何か呪物鑑定士としての対処法があるのだろうと自分を納得させてピエリスはリムの後を追った。




