1.転生したら天使のような美少女(笑)でした。
私はノア。ただの―――電波少女だ。
おぎゃあ、と生まれたときから前世の記憶があった。そんでもって転生先は流行りの悪役令嬢……なんてこともなく、貴族のはしくれの安全なモブ……なんてこともなく、中世ヨーロッパ風のほんのりファンタジー入った世界のただの平民だった。前世は転生だいすき日本人。
転生したら皆が可愛い可愛いって言ってくれて、チート能力なんて無くったって可愛く生まれれば、そりゃあもう人生勝組、玉の輿だわっしょい、人生イージーモードだぜ、と思って私は浮かれまくり、早く大人になってイケメンときゃっきゃうふふしたいと毎日のように妄想していたアホの子だった。
5歳になると教会で洗礼を受け、自分のステータスを見ることができる。それで自分に魔法適性があるかどうか分かるのだ。魔法適性があるのなんて1000人に1人くらいだから全く期待していなかった。けど、運よく私は聖属性魔法に適性があった。
――え、まじで。
美少女な上に魔法適性ありとか…ぱないっすね。
皆様ごめんあそばせ!これが勝ち組というものですわ! おーっほほほほ! そしてこんにちは私のラブコメファンタジーさん!!
なーんて思ったりしたけど、そんなことはその時の私にとっては些末なことで、その日の私にとってのメインイベントは別にあった。
そう、教会には鏡があるのだ。
もう一度言う、鏡があるのだ!
私は会う人皆からホメられる自分の容姿を確認できるのが楽しみでしょうがなかった。皆から「天使」だの「絶世の美少女」だの褒めそやされていたから、鼻の穴を膨らませながら、それはもう本当に今日という日をめちゃくちゃ楽しみにしていたのだ。可愛い系?儚い系?セクシー系?どれでもどんと来い!!私が上手く調理してみせよう!
そして、ついにたどり着きました鏡の間。初めて鏡で自分を見たとき思いましたよ。「えっ…これがわたし…?」って。淡い紫色の髪に紫紺の瞳の幼女が映ってて、私と同じポーズをとっていたんです。
思わず、ひぅ、と息を飲みました。
まさかの、デブス系!!
……終わった。
はい、しゅーりょー。
ラブコメファンタジーしゅうりょー。
これはダメだ。
イケメンなんて夢のまた夢。
そもそも恋愛も無理ゲー。
誰よ期待させたやつ。
期待してたぶん、ガッカリ感半端ないんですけど。
そんな感じで、まあ、人間不信に陥りましたね。みんな超嘘つきじゃん!って。
鏡に映る私は紛れもなく子豚だった。しかも息が止まるほどのブスだった。知らなかった。ブスすぎると息が止まるなんて知らなかった。皆あんなにうっとりしながら「可愛い」って言ってくれてたのに、あれが嘘だったなんて、もう誰を信じていいか分かんない!!と、私はガチで泣いた。今思えば、両親も不細工だったのに……。
こうして私の異世界ラブコメファンタジーは5分で幕を閉じたのでした……。
―――完―――
……とはいかないので、翌日から泣きながら必死に自分のレベル上げをした。
この見た目では恋愛も結婚もできる気がしない。私は綺麗な紫色の髪をした珍しい子豚なのだから。1人で生きていけるくらい強くならなくては!と昭和のスポ根マンガ以上に狂ったようにレベル上げをした。
ラブコメは無理でも、ファンタジー枠に賭けてまじで頑張った。敗者復活戦じゃあ!
それから3年ぐらい経ったとき気がついた。
あれ、この世界、前世と人間に関してのみ美醜逆…?
!?
……ふ、成る程。つまりそういう事ですか。
皆から全然相手にされないちょろ不細工がこの世界にはわんさかいて、そんでもって私は美少女だから選びたい放題ってことですね!?
来た。ついにきた!!わたしのターン!!!!
そしてこの後はずっと私のターン!!!!!!
私は泣きながら高々と拳を天に掲げた。
ようやく、本当にようやく。
私のラブコメのファンファーレが高らかにこの世界に鳴り響いた。
待たせたな不細工共!!!!
そして再びこんにちは私のラブコメファンタジーさん!!
それから少しして分かったことだけど、この世界は不細工に対してものすごく厳しい。前世の日本なんて比じゃない。この世界の人たちは不細工を見るとゴキブリを見たような嫌悪感を抱くんだそうだ。酷い。そこまで嫌わなくても…。
待ってろ不細工ども! 私が助けに行く!